皆が求めた「天の王国」の真実。
リドリー・スコット監督作品、オーランド・ブルーム主演『キングダム・オブ・ヘブン』(2005年)の感想です。
この映画について
時は12世紀。フランスで鍛冶職人として暮らすバリアンは、妻と子どもを失い、悲しみにくれていた。
バリアンの妻は子どもを失った悲しみによって自殺、キリスト教の教えによって十字架の下に埋葬されることが許されず、バリアンはそのことに苦しんでいた。
そんな悲しみに沈むバリアンのもと、とある騎士がやってくる。その騎士の名はゴッドフリー、彼はバリアンに「自分こそが実の父だ」と告げる。
ゴッドフリーは十字軍に参加しており、「天の王国」を作ることが旅の目的だと言う。そんなゴッドフリーにバリアンはこう訪ねる。「エルサレムに行けば、妻と息子の罪は許されるのか?」と。
「答えは一緒に見つけよう」と言うゴッドフリー、バリアンは十字軍に参加することを決める・・・。
一つの場所に、様々な目的を持つ男たちが集う
十字軍、宗教戦争をテーマにした壮大な映画。
この映画を初めて観たのは2005年くらい、「神」や「正義」を題目に奪い争い合う十字軍とエルサレムの物語に衝撃を受けたもの。
大規模な戦闘、アクション映画的な面白さもさることながら、何より魅力的なのは『キングダム・オブ・ヘブン』の登場人物たち。
妻と子どもを失い悩み苦しみ十字軍に参加、「神が見えない」と信仰心に疑問を感じつつ、父から受け継いだ騎士道精神で、弱気を守るまっすぐな生き様を見せてくれるバリアン。
自らの若き日の過ちを悔い、それを忘れずに後悔し続け、死の間際「王と民を守れ」と息子に想いを託すゴッドフリー。
賢明な君主としてイスラム教徒との共存を目指すものの、病に侵され死を待つ若きエルサレムの王。
王を支え、エルサレムに一生を捧げつつ十字軍の現実の姿に理想を失ってしまったティベリウス卿。悪の塊如く自らの欲と権力欲のために戦争を起こすルノー。
『キングダム・オブ・ヘブン』はバリアンを始め、様々な登場人物を通じ、正義とは何なのか、人としてどのようにあるべきか、様々な問いかけを観る者に投げかけてきます。
様々な立場の男たちの人間模様が「重い」映画ですが、映画の最後のテロップにもあるように、まだ争いは解決されておらず、1000年前の問題は、形を変えて繰り返されています。