「風立ちぬ、いざ生きめやも」(風が起きた。さぁ、なんとか生きてみよう。)
朝一でジブリの新作『風立ちぬ』を観てきました。
見に行くか行かざるべきか、迷っていたのですが、9月1日のニュースで宮崎駿監督が引退宣言、この『風立ちぬ』が最後の長編映画になりそうなので、行くことにしました。
平日の朝にも関わらず、映画館はけっこう人がいて、若い人3割、50代以上が5割くらいでした。
感想など
「これはアニメなのか?」というくらい、人物描写がリアルで緻密です。絵は確かにアニメーションなのですが、動き、カットインまるで本物の世界が目の前に広がっていると感じてしまうくらい、緻密に絵が動いていきます。
最初は、「零戦中心、悲劇の恋愛が映画のなかで大きいウェイトを占めているのかな?」と勝手に思っていたのですが、実際の話というか、テーマは違いました。
堀越二郎の「美しい飛行機を作りたい」という夢と、激動する日本、そのなかで、生き抜いてく二郎、それを支える恋人で妻になる菜穂子の生き様を描いている、ヒューマンドラマのように感じました。
映画に菜穂子と二郎が出会い、縁を深めていくシーンで、「悲劇に終わる」という結末は分かるのですが、結末が予想できるにも関わらず、涙腺にガンガンきます。
二郎と菜穂子の新婚生活、零戦が完成する間際、去っていく菜穂子のシーンや、映画の終盤、美しい飛行機(零戦)の終わりと菜穂子の死がダブるシーン、「あなたは生きて」と二郎に伝える菜穂子のシーンはヤバかったです。
ほかの人たちも、ガンガン来ていたようで、すすり泣く声がちらほら聞こえました。菜穂子の死自体はハッキリとは描かれないものの、映画が終わったあとは、なんとも言えない余韻に包まれました。ジワジワくる感じです。
印象的だったのは二郎と菜穂子の結婚シーン。
運命が見えているのにも関わらず結婚を決める二郎と菜穂子。二郎の上司の家で結婚するときの菜穂子の姿は、ハッとするほど奇麗でした。アニメとは思えない、幻想的ではかなく、美しい。
菜穂子は、今までの宮崎アニメで描かれていた女性像とは、明らかに違います。散りゆく美しさ、献身、信念。全面に出る力強さではなく、今までのジブリヒロインとは違う、大和撫子という言葉がふさわしいキャラクターでした。素晴らしい。
そのほか
映画を見る前、主人公の二郎の声がいろいろ話題になっていましたが、個人的に問題ないと感じました。
ジブリのアニメでは、ポニョのフジモトの声が気になったくらいで、トトロのお父さんや、耳をすませばのお父さん、ぜんぜん問題ないと感じるタイプです(ジブリ以外、アニメは観ません)。
ヤフーのレビューなどを観ていると、「声が素人」という批判があるので、大丈夫かなと思っていたのですが、実際全然問題なくて、映画に集中できました。
二郎の妹の声と、黒川、黒川の妻の声の俳優さんがすぐに分かったくらいで、批判が大きいらしい二郎の声も、「昔のインテリ」的な雰囲気で良かったです。
まとめ
絵の技術、アニメ云々は別に、映画として観れて良かったと思いました。映画は結構観るのですが、映画館にまで行って映画を観たのは久しぶり。
ストーリーの良さ、理屈はあれこれ言えますが、観て良かったか、そうでなかったかというと、観て良かったな、と。
最近はあんまり感動することがなかったですが、『風立ちぬ』を観て、しばらくは映画館の席で座りこんでしまうくらい、余韻が凄かったです。
「ガツッ」と心を叩き付けられるような衝撃と、ジワジワくる物語の余韻。現実に戻るまで、しばらく時間がかかりました。
自分の文章力では、この感動を上手に表現することは難しいですが、生きることと死ぬこと、やるべきこと、頑張ること。時代と向き合うこと。その中でどう生きるべきか。そんなことを私たちに問う映画のように感じました。
稚拙な表現ですが、素晴らしい映画でした!