子ども時代に隠された大切な秘密。『キッド』を観る

遠くを見つめる子ども

ふとなんとなく観たいと思って、ブルース・ウィルスが主演している『キッド』のDVDを購入。観てみることにしました。

この映画の話をかいつまんで説明すると、大人になった自分のもとへ、かつて子どもだった自分がやって来て、大切なものを思い出せてくれる、という話。

子どもの頃大切に思っていたことがあった。でも大人になる過程でその大切なものを失ってしまった。

そのことを思い出すことの大切さに気づかせてくれる、とても素晴らしい映画です。

なぜ成功しても不幸なのか?

映画の主人公は世間的にも経済的にも成功しているイメージコンサルタントのラスティ(ブルース・ウィルス)。

ラスティは過去にいろいろあって、過去の一切を捨て、家族とのつながりも断ち切り、そして、「決して泣かない」ことを決め、孤高に生きています。

その結果、周りからは仕事はできる男であるものの、完全なジャーク(やな奴)。

お金もあって仕事も成功。いい車に乗ってひとり暮らしなのに大豪邸で暮らしている。しかし心は氷のように冷たくて、孤独で寂しい人生を送っている。

そんなラスティの家にある日、太った少年が突然現れ、その少年の姿にラスティは困惑します。なぜならその少年は、ラスティ自身が忌み嫌った、かつての自分の姿だったからです。

ラスティは最初、少年を幻覚だと思って精神科に駆け込みますが、薬を飲んでも少年の幻影は決めません。

結局ラスティは少年と時間を過ごすようになりますが、それによってラスティの心境に変化が。

少年の姿を通じて、かつて自分自身が捨ててしまった温かいものを取り戻していく、というのがこの映画のお話です。

とても温かい話で、多分、大人がこの映画が観ればきっと、「子ども時代の自分が今の大人になった自分を見ればどう思うだろう?」とついつい考えてしまう映画です。

子どもの頃に夢見た大人になった自分の姿は

ラスティの場合は、「恋人もいない!犬も飼っていない!自分がこんな大人になってるなんて!」という痛烈な言葉をもらってしまいますが、でも、多かれ少なかれ、こういうことって、結構多いんじゃないかなー。

自分も子どもの頃は「こんな大人になりたくない!」とか、いろいろ子どもらしい正義感を持っていましたが、成長して大人になるということは、いろんな物の見方、考え方が分かるということ。

子どもの考え方は、良く言えばまっすぐでストレートだけど、悪く言えば幅がないから、どうしても柔軟性に欠けてしまいます。

ただ、そのまっすぐさが子どもらしい魅力。まっすぐだからこそ貫ける何かがあるのも確かです。

だからこそ、自分が昔どんな子どもだったのか。どんなことを考えていたのか。そこには貴重な何かが眠っています。

個人的には、子どもの頃、自分がどんな大人になっているか、そして、子どもの自分が今の自分の姿を見たとしても、恥ずべきことをしていないのは僥倖。

夢描いた通りの人生ではないものの、「こういうもんだ」と思えるくらいは、納得してもらえると思っています。

人生で完勝はできない

まぁ、人生60%上手くいけばそれはそれで十分。

ただ、「大人になっても忘れてはいけないこと。本当に大切なものは子ども時代の自分が思い出せてくれる」というこの映画のメッセージは、本当に心に刺さります。

大人になればいろいろ変わってしまうかもしれないけれど、本当に譲れない何か、大切にしたい何か、それさえ妥協しなければそれでいい。

そんなことを考えさせられた映画でした。大人だからこそ、折に触れて鑑賞する価値がある、貴重な映画だと思います。

「最近、立ち止まっていろいろ考えることが多い・・・」という大人のあなたはぜひ、この映画で子どもだったあなた自身と邂逅してみてください。