人生は、どこでやり直せるのか?
ケビン・スペーシー主演『アメリカン・ビューティー』(1999年)の感想です。
この映画について
レスター・バーナムは42歳の冴えない中年男。妻とハイティーンの娘ジェーンにはゴミ扱いされ、「生ける屍」同然の生活。
自分を殺して、死んだも同然に暮らすレスターですが、あるとき、娘の学校のイベントで娘の親友のアンジェラに一目惚れ、彼女に好かれようと筋トレスタート。
それがきっかけで、レスターは今まで死んだように暮らしてきた生活から、自分の人生を取り戻していきます。
レスターの変化がきっかけで、バーナム一家、周囲の人々も変わり始めますが・・・。
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感想など
良い映画はいつ観ても学びがあることを実感できる映画。
この映画を初めて観たのは10代の頃。
その当時は現代家族の闇というか、ダークサイドを描いた映画なのかと勝手に解釈していましたが、30を超えてこの映画を観直してみると、単純にレスター・バーナムに共感できます。
20代、熱愛で一緒になった妻は別人のようになり、可愛かった娘は反抗期。仕事で理不尽な扱いを受け、心を殺して家族に合わせ、死人のように暮らす日々。
家族も変わってしまい、一緒に暮らしていても、まるで他人と暮らしているかのよう。
喜びも希望もない、そんな状況が、ある少女との出逢いで一変。夢や希望に満ちていた昔の自分を取り戻すべく、行動を起こしていく・・・。
年を取ると、得るものもたくさんあるものの、失っていくものもたくさんあります。
大人になるということは現実を受け入れて、現実の中で何とか折り合いをつけて生きていくということ。
そのうち、自分の現実的な可能性を目の当たりにし、自分の人生はこんなもんだと受け入れていくわけですが、心のどこかで、桃源郷、理想の暮らしを空想する。
映画に意味付けをすることもできるかもしれませんが、レスター・バーナムの生き様を見ていると、何というか、虚しく儚い気持ちになります。
しかし、人間、若い頃に持っていた感情というのは、決して消えることはなく、何かがきっかけとなって、再び湧き上がってくるものなのかも。
レスターの「20年間の昏睡のあと、目が覚めていく・・・。」という言葉通り、人生はいつでも、やり直すことができるものなのかもしれません。