なぜ0歳の子どもを親と引き離してはいけないのか?
長田安司著『「便利な」保育園が奪う本当はもっと大切なもの』(幻冬舎ルネッサンス)の読書感想です。
この本について
現在の保育の在り方に一石を投じ、本当に子どもにとって、親にとって大切な保育の在り方は何なのかを問う本。
子どもを保育園に預けることが何を意味するのか、親にとって子育てで決しておろそかにしていけないことは何なのか、真剣に考えたい内容が盛りだくさんです。
以下、本書の読書メモです。
カミツとカミツキ(P19)
保育環境において、環境が過密になればなるほど、子どもの問題行動(カミツキ)が頻発する。
0歳~2歳の子どもの保育は1対1が原則。
子どもたちが狭い部屋に一緒になって育てられる保育環境では、子どもたちの安全性が脅かされ、攻撃的な行動が起こりやすい。
根本の原因は乳幼児期(P35)
子どもの問題行動は、子育て期における基本プロセスの欠如から起こる。
そのため、小学校の学級崩壊など、子どもたちの「異変」の根本的な原因は乳幼児期の養育環境(母親や周囲の大人の対応)に原因がある。
現在の日本では、子どもにとって最も大切な時期である0歳~2歳児期に子どもと親を引き離し、集団で保育を受ける施策が進められている。
これは人が育っていく上で大切なプロセスを軽視する問題で、とても深刻な問題。影響はただちには出ないが、将来確実に出てくる。
0~2歳児期の大切さ(P48)
子どもは生まれてから、食べることから排泄、何から何まで母親の世話にならなければ生きていくことができない。
母親に世話をされて、少しづつ自分でできることが増えていくにつれ、自分の欲求を表現するようになっていく。そして、その欲求を母親にぶつけることで成長していく。
これが子どもが成長していく基本的なプロセスであり、そこには必ず1対1、しっかり子どもの成長を支える存在が必要。
0~2歳児期、母親に自らの成長を支えてもらい、自分の気持ちを思いやってもらえるからこそ、人は他人への思いやりを育み、社会性を育んでいくことができる。
しかし、0~2歳児期に思いやりをもらうことができなかった子どもは、人を思いやることができず、人を信じたり、頼ることができず、社会性に傷を抱えることになる。
集団保育で社会性は育つのか(P51)
子どもを早期に保育園に預けることについて、「他の子どもと交流するので早く社会性が身につく」と主張する人がいるが、実際は逆。
0~2歳児期の子どもに必要なのは自分を受け止め、気持ちを思いやってくれる母親との1対1の関係。
母親に自分を支えてもらい、気持ちを思いやってもらえるからこそ、人の気持ちを思いやることができるようになり、社会性が育まれていく。
母親との信頼関係が築かれないまま保育園に預けられた子どもは、安心できる心の拠り所を失い、表面上はどうであれ、不安を抱えることになる。
自分のことが不安で一杯なのに、人のことを思いやる社会性を持てるはずがない。
日本人が失ったもの(P120)
第二次世界大戦の敗戦によって日本は生まれ変わり、様々なものを手にしてきた。
その過程において、必要以上に戦前の日本の価値を否定し、それによって日本人の素晴らしい美徳すら捨て去ってしまった。
戦前まで日本人を導いてきた考え方のなかには否定されるべきものもあるが、素晴らしいものもたくさんあった。
しかし「戦前のものは全て悪」と考え、全てを否定し捨てることによって、日本人は物質的には成功し豊かな暮らしを実現したが、決して壊してはいけないものまで壊してしまった。
今の日本社会のあちらこちらで、その影響が噴出している。
親にとって子育てとは(P169)
子育てにおいて最も成長するのは、子どもだけでなく親。親は子どもを育てることによって、はじめて親として成長できる。
0歳の子を持つ親は親として0歳。子どもが大人になり、一人前になるまで、親は親の役割を果たす必要がある。
それによって、親は一人の人間として、大きく成長していくことができる。
保育園とは(P195)
保育園は、子どもの成長と発達を保障する役割を持つ場所。子どもの成長を通して、親が喜びや幸せを感じ、親業の役割の大切さを学んでいく場所。
感想など
「親を育てるのは子ども。保育というシステムに頼りすぎてはいけません」
という警告を与えてくれる本。
生まれたばかりの子どもすぐに保育園に預けるのがいかに子どもの成長にとってリスクがあるか、そして今の保育システムにどのような問題があるのか、読んでいて「ハッ」と驚く内容がたくさんありました。
世の中では、「待機児童0」で子育て支援、女性の社会進出を後押しする施策が続々と登場していますが、子育てを考えたとき、問題は複雑になってきます。
子どもが生まれたら少なくとも3歳になるまでは身近に母親が必要。しかし、夫婦共働きで子どもが生まれてすぐに働かなくてはいけない家計も増えている。
そう考えると、今の世の中、子どもを産み育てていくことは本当に大変なことなのではないかと思います。
保育園のシステムが便利になればなるほど、親業からは遠ざかっていく。そして子どもは・・・。
「社会(システム)で子育てなんてできるわけがない。」
この言葉が強く印象に残る本でした。