『家裁調査官は見た』の読書感想 – 人生最大の問題は家族関係?

家裁調査官は見た ―家族のしがらみ― (新潮新書)

家族がいて人は育つ、となると。

村尾泰弘著『家裁調査官は見た』(新潮新書)の読書感想です。

この本について

非行少年や非行少女たちを見つめてきた元家庭裁判所調査官による、家族関係の考察書。

家族とはどういう関係なのか、なぜ問題が起こるのか。この本を読むことで、子どもの問題が、実は子どもだけでなく、親や家族全体の問題であることが分かります。

以下、本書の読書メモです。

家族のダークサイド(P12)

家族というと、一家だんらん、微笑ましいイメージを持つが、現実問題、家族が病巣になり、苦しみの原因となる人が少なくない。

家庭は安らぎの場ではなく、人をしばり苦しめる、しがらみの場となってしまう現実がある。

家族間の不平等感が将来の争いの種になる(P52)

遺産相続問題など、家族が争いあう問題の原因は、お金だけではない。

「弟(もしくは兄)の方が親から愛されていた、可愛がられていた」といったような、感情的な不公平感や嫉妬が、争いの原因になっていることが少なくない。

兄弟や姉妹、それぞれに子ども時代に不公平感があると、それが恨みとなり、将来の遺恨となる。

完璧な母を目指す罠(P80)

子どもを産んで、母親として立派になる。育児書や育児雑誌を読んで完璧な育児を目指す、そして我が子をしっかり育てる。

しっかりした親になろうとする意志を持つ女性が、我が子を虐待してしまう、そんな悲劇が起こっている。

子どもは、決してマニュアル通りには育たない

育児書通りに育つ、そんな子どもはいない。子育てで、「~すべき」は通じないし、頑張りではどうにもならないこともある。

良い母親になろうとする気持ちはよいことかもしれないが、完璧な育児を目指してはダメ。不完全でもOK、失敗してもOK。柔軟にやっていくべし。

家族システムについて(P85)

人が家族という枠組みにいるとき、そこでは自分以外の家族から様々な影響を受け合う。それを家族システムと呼ぶ。

具体的には、夫婦間の不和が子どもの不登校問題につながっていたり、親が悩んでいることが、子どもが悩む問題として表出したりする。

そのため、家族誰かの問題を解決しようとするときは、本人だけでなく、家族全体の問題として、考えていく必要がある。

思春期の娘が父親を嫌う理由(P99)

思春期を迎える娘は、一般的に超がつくほど父親を嫌うようになる。父親をゴミのように感じ、側にいるだけでキツイ態度を取るようになる。

父親としては辛いところだが、このことは、娘が成長していく上でとても大切なこと。

もともと、父と娘の結びつきはとても強い。娘にとって父親は「初めての異性」であり、父を嫌うことは、娘が父離れをして成長していく上で避けられない課題。

娘の父離れはとても苦しいものだが、何とか耐えきりたい。

手のかからない子どもに注意する(P118)

子どもに手がかからない、それはいいことに思えてとても注意したいこと。

手がかからない子ども=1)親が子どもに手をかけていない、2)親が子どもをがんじがらめにして自主性を奪っている、この2つの可能性あり。

また、親が面倒を見ないので子どもが親を諦めたという場合もある。

いずれにせよ、親が子どもに手をかえていない場合、子どもが成長していくにつれ、問題を起こすようになり、結果的に(強制的に)手がかかるようになる。

親の影を子どもが背負う(P180)

親がエリート、高学歴高収入、周囲からの評判もすこぶる良い。「よい」家庭の子どもほど、案外問題行動を起こす。

子どもは問題を起こすことによって、親が見ることを避けている親の中の影を見ることを促す。それによって親は、普段自分が意識していない親自身の影を見出す。

その影を統合することで、親、子ども、成長することができる。

感想など

家族関係について、「こんな影響力があるのか」と発見が見つかる本。

家族というと、生まれてから成人するまで、生きていく上で大きなウェイトをしめる環境。

それゆえに、「三つ子の魂百まで、小さいときの家庭環境が人の運命を決める」ということが、心理学、教育、いろんなところで言われています。

これは本当にそうだなぁと思いますが、よくよく考えてみれば、結構怖いことだと思います。

どんな家庭で育つかというのは自分で選ぶことができない、不可避的な問題。子どもに家庭を選ぶ選択肢はありません。

人は生まれてくる家庭を選べない。

それはすなわち、人の運命というか未来というか、将来どんなふうになってどんなことで悩むのか、それは生まれた段階である程度決まってしまうことを示唆しています

そうなると、人生は無限の可能性はなく、生まれつき、ある程度の可能性(運命)は決まっているのではないか。そんなことを感じてしまいます。

それは、あまり良くない家庭で育って触法少年少女になってしまったたくさんの事例や、貧困のために教育を受けるチャンスを失った人の話を聞けば、理解することができます。

この本のテーマは家族関係ですが、個人的には、家族関係というより、そうした人の家庭という育ち、環境がもたらす未来への影響力について、あれこれ考えてしまう本でした。

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