子育てで大切なのは「すること」より「しない」こと。
諸富祥彦著『あなたのお子さん、このままでは大変なことになりますよ – カリスマカウンセラーが語る究極の子育て術』(アスペクト)の読書感想です。
この本について
明治大学教授で有名カウンセラーである諸富先生による子育て指南本。
子育てに失敗しないために、親として何を本心にすれば良いのか、どんな風に子どもと接していけばよいか。
子育てで知っておきたい知識を学ぶことができる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
子育てで失敗する理由(P10)
子どもを一流大学に入れたのに、40過ぎても引きこもりニート。このような子育ての失敗は、近視眼的な子育てが原因。
目の前のことに振り回されるあまり、本質的なことをないがしろにしてしまったから失敗してしまう。
子育てには、目の前の放っておいても問題ない些細なことと、じっくり考えて取り組むべき本質的なことがある。
子どもの成績や行動を気にし過ぎるあまり、過度に過保護や過干渉になってしまうと、それは子育ての失敗という結果として、親自身に返ってくる。
子どもはある日突然反逆しない。日々の子育てのちょっとした失敗の積み重ねが子どもの人生に悪い影響を与えていることを知る。
今の子どもの特徴(P29)
現代っ子の特徴は、緊張感がなく、コミュニケーション力が低いことに加え、欲がないこと。
こうしたい、あれが欲しい、といった欲が昔の世代の人に比べ薄いのが今の子どもの強い特徴で、
・緊張感がない
→責任感の放棄や、いざというとき踏ん張る力が足りない。
・コミュニケーション力が低い
→他人と関わりを持とうとしない。
・欲がない
→チャレンジ精神が持てない。
というように、生きる意欲が低い子どもが多い。
やさしすぎる大人が子どもをダメにする(P43)
子育てでは、子どもにある種のプレッシャー、負担をあえてかけることが必要。
そうすることで、子どもがストレスに耐える力がついていき、ちょっとやそっとでは折れない心の耐性ができる。
しかし、大人が子どもに負担をかけようとあれこれ手を焼くことで、子どもは心を鍛える訓練をする機会が減り、ストレスや負担に耐える力が身につかなくなってしまう。
大人がすべきことは、子どもにしてよいこと、悪いことを教え、ダメなことにはピシっと起こり、子どもに必要な緊張感を与えること。
それが子育てに絶対必要。
子育ては完全に親の思うとおりにはならないが(P59)
子育てはなるようにしかならないが、(間違ったことをしなければ)なるようにはなる。
親が子育てに対してどっしり構えており、覚悟を決めており、些細なことで騒ぎ立てなければ、自然な着地点を見つけることができる。
子育ては、基本親が影響力を発揮できない場面が多々ある。ある程度は親の努力で何とかなることもあるが、親の努力ではどうにもならないこともある。
親の力では及ばないところがあることが子育ての大前提。
母親の心の安定が子育てのカギ(P63)
母親の心理的な安定性は、子育てにとってとても重要。
母親が子どもにどっしり構えることができれば、子どもも安心して毎日を過ごすことができる。
母親が不安だったり、イライラしていると、それが子どもに伝わり、子どもも感情的な安定性を失う。
母親は、子どもが何をやらかしても、笑ってからかって、どっしり構えていること。オタオタしたり、動揺した姿を見せないことが大切。
子育ての3つのステージ(P64)
子育てには3つのステージがある。
ステージごと、やるべきこと、意識することが違う。子どもの成長に応じたステージごと、適切に接し方を変えていく。
1・溺愛期(6歳くらいまで)
→子どもの自己愛を育てる重要な期間。子どもが生まれて就学するまでの期間。
この時期は、子どもに無条件の愛を注ぐ。この時期の親の愛情が、子どもが生きていく上で必要な自己重要感の獲得につながる。
子どもが将来自力で踏ん張れる人間になるかどうかは、この時期の親の愛情次第。しつけは厳しすぎないよう注意すること。
この時期にしつけを厳しすぎると、子どもが自分に自信を持てなくなり、人に対して信頼感を持てなくなる。
2・しつけ期(10歳~12歳まで)
→小学校中学年から高学年、社会のルールをしっかり教える時期。この時期、マナーやルールはきちんと子どもに教え、守らせる。
3・見守り期(12歳以降~18歳くらいまで)
→いわゆる子どもが思春期、反抗期の時期。この時期は、一番子どもと衝突しやすい時期で、基本的に親はどっしり構えているのが一番。
この時期の子どもとは分かり合えないのが大前提。一歩引いたところから子どもを見守り、子どもが何をしても、何を言っても、じっと我慢して静観すること。
この時期、子どもは不安でイライラしている。親は子どもに不要な干渉をせず、少し離れて見守る。
気まぐれな子育てはNG(P96)
子育ては何をするかより、何をしないか。子育てのなかでも特にNGなのが、気分で子どもへの対応をコロコロ変えること。
自分の不安やイライラを子どもに向けるのは特にダメ。親の不安定な精神状態が、子どもに伝播し、子どもも、精神的に不安定になってしまう。
(※1日10分程度子どもを放置するのはOK。)
子育てをする母親は、精神的な安定を保つため、子育てをする母親と交流を持ったりして、心が安定するよう意識する。
父親も、母親が安定するよう、心理的にサポートする。
子どもを意識的に自立させよ(P139)
子どもを自立させる方法は、子どもを大人扱いすること。
子どもが10代になり、高校を卒業するくらいの年齢(遅くとも25歳くらいまで)になったら、一人暮らしをさせること。
一人暮らし経験のない子どもは精神的な成長度が遅い。
親がなんでもしてあげると、子どもは親に依存し、ニート化してしまう。いつまでも子どもに親になんでもやってもらうような環境にいさせてはいけない。
感想など
子どもを育てるのは実に難しい、それが実感できる一冊。
同じ家庭、同じ親のもとで生まれた子どもでも、長男長女、次男次女、末子は性格や行動が違って、人間模様もガラリと変わります。
子どもの成長、運命を分けるのは一体何なのか、親の接し方によって子どもはどう変わるのか、興味深く思って読んでみましたが。
うーん、この本に書かれているとおり、「子育てはなるようにしかならない」のかもしれません。
親が名門大卒で裕福な家の子どもが人殺しになるような家(ニュースでありましたね)があれば、親が貧乏ながらも子どもは親を思って早くに独立、立派に働いている家もあります。
最善を尽くしてもダメなこともあれば、手をかけなくても案外上手くいくこともある。責任重し、しかし結果はコントロールできない。
まぁ、だからこそ、親業は大きな学びの体験なのかもしれません。