長州閥を作った男の生涯と実像。『山県有朋』の読書感想

山県有朋―愚直な権力者の生涯 (文春新書)

好きなものは金と権力。

伊藤之雄著『山県有朋 愚直な権力者の生涯』(文藝春秋)の読書感想です。

この本について

幕末時、長州藩の奇兵隊から名前を挙げ、明治政府の権力構造に進出、やがては長州閥を作り影響力を発揮し続けた権力の男、山県有朋。

その世間で広がっている山県=長州閥=権力を握り続けたイメージを持つ男を、様々な歴史的な資料をもとに、その実像を探っていくのが本書。

どちらかというと良いイメージではなく悪いイメージを持たれるのはなぜなのか。そして、実際の山県有朋はどんな男で、どんな人格だったのか。

本書を読めば、イメージが必ずしも真実を示しているとは限らないという、当たり前のことに気づくことができます。

感想など

私が教えられてきた山県有朋といえばまさに、藩閥政治の権化であり、軍隊の権力を握って人事を動かしたまさに権力者そのもののイメージ。

そのため、「腹黒さ」「老害」といった、あまり意味がよろしくない言葉が山県有朋のイメージに付随していたのが正直なところ。

ところが、本書を読んでみると、なにも山県有朋が必ずしも私利私欲のためだけに権力構造を作り、影響力を発揮した悪い男ではないことを想像してしまいます。

結果論として、長州閥の親分として、明治政府において政治的に大きな影響力を行使しているわけですが、でも政治とは元来、こういうものなのかもしれません。

この意味で、どんな政治家にも必ずプラスの面とマイナスの面があって、だからこそ、本書の副題である「愚直な権力者」という言葉に読後、「なるほどなぁ」と納得できるのです。

それにしても、軍人かつ狡猾な政治家としてある意味「タフガイ」的なイメージがある山県が病弱だったというのは意外。

奇兵隊のときも、政治家になっても、そして元老になっても、病気になって休養したりと後退しているのですが、これは非常に意外でした。

このような具合、歴史のイメージは必ずしも真実にならず。

ただ言えるのは、山県有朋がどのような男であり、そして、どのような功績、足跡を日本に残したか。そのことについて、本書はイメージではなく、実際的な視点を提示してくれます。

21世紀の現在ですら、明治以降以来の薩長が作った権力構造が、日本においてその影響力を発揮しています。

では、その権力構造を作った男はどんな男だったのか。

安倍首相にまで連なる長州閥を作った男に興味を持った方は、本書がその好奇心を満たしてくれることでしょう。

本の購入はこちら