天才の発想から実用的な思考法を身につける。
羽生善治著『羽生善治 闘う頭脳』(文春文庫)の読書感想です。
この本について
将棋の世界において誰も成すことがなかった永世七冠という、前人未到の大記録を打ち立てた天才棋士の羽生善治さんの特集本。
各メディアのインタビュー記事などをもとに羽生さんの思考法、考え方を一冊に凝縮。人生やビジネス、あらゆる場面で役立つ発想の秘訣が満載の内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
長続きがカギ(P15)
ローマは一日にして成らず。何事も続けてこそ、偉大な成果を生み出すことができる。
物事を長続きさせるために大切なのは、ともかく無理をしないこと。無理をしていてもその反動が必ずやってくる。
人である以上、調子の上下の波は仕方ないので、それはそれで諦め、無理をしないことが大切。
勝つための考え方(P17)
物事はまず大局をイメージし、それから具体的にどうするのか、大まかな見通しを立てておくことが大切。
それは別に間違えてもかまわない。大切なのは、まず大まかに見通して、その上で、現実に応じて調整していくこと。
つまり、考える→修正する→考える→修正する、この繰り返しで、勝つための思考の精度がアップしていく。
情報の取捨選択(P18)
現代は情報が多すぎる。どの情報も捨てずに取っておけば、何が自分にとって役立つかが分からなくなってしまう。
そこで、自分にとって必要な情報と知識を見極め、それ以外は思い切って捨ててしまう。そんな割り切りが必要。
自分にとっていらないものと必要なものを見分けること。そこに、現代の情報化社会を生き抜くカギがある。
年をとるメリット(P31)
年齢を重ねれば、頭が固くなるとか体力が落ちるとか、いろんなデメリットがある一方、着実に生きてきた経験が蓄積されていく。
そこから、読みと大局観が磨かれて、物事を見る眼が研ぎ澄まされていく。
今前へ進むべきか。それともここにとどまるべきか。長期的な視野で物事を見れるようになるため、進路をあやまるリスクが低くなる。
ここが年をとるプラスの部分。
脳について(P51)
脳は使わなければダメになる。感覚が鈍り、判断を間違うようになる。
だからこそ、脳は常に使うことが大切。そうすれば生涯現役で、脳を役立てることができる。
日本の特徴(P86)
日本人の文化的な特徴を一言で言うと、コンパクト化。
より小さく、より精密に。一つの物事を深く、そして小さく掘り下げていく。そこに日本人の美点と価値が示されている。
なぜ師匠が必要なのか(P214)
人間が真に一人前になるためには、ただ技術を磨けばいいというわけではない。
技術と同時に人間性が磨かれなければ、いざというときに肝心の技術を生かすことができない。
だからこそ昔の人は徒弟制度に代表されるように、師匠から弟子へと技術の伝承させる仕組みを大切にしていた。
モチベーションとは(P275)
モチベーションとは天気のようなもの。晴れて良いときもあるし、雨でダメダメになるときもある。
ある意味どうにもならない部分があるので、そのときはそのときで、無理に自分でなんとかしようとする必要はない。
感想など
頭がいい人ほど、難しいことを分かりやすく伝えることができる。本質的な物事を、シンプルに説明することができる。
まさに、そのことが分かる本。
日本の将棋の世界でとんでもない実績を出し、まさに天才として生ける伝説となっているのが羽生棋士ですが、本書を読むと、言わんとしている話も分かりやすく知的です。
頭のなかで言いたいことがスッキリ整理されているだけでなく、自分の言葉を人に分かりやすく伝える気遣いがあるのか、文章を読めば、その意図は明確。
ほんとうに、頭がいい人は、文章もスマートで知的。本書を読んで一番印象に残ったのがまさにそこ。
それ以外、人生やビジネス、様々な場面で役立つ羽生棋士の発想が満載。
ということで、
「将棋の世界に興味がなくても、人生に役立つ実用的な発想を身につけたい!」
そんなときはまさに、本書が刺激的な一冊となることでしょう。