私達現代人が進歩の代償として失ったものとは。『近代の呪い』を読む

近代の呪い (平凡社新書)

人類の進歩とともに失った代償を問う。

渡辺京二著『近代の呪い』(平凡社新書)の読書感想です。

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内容について

西欧を土台とした近代社会のダークサイドについて考察されている本。

我々の暮らす現代社会をたどれば、そこには近代社会があって、現代の問題点、影の原因が、近代社会にあることを教えてくれる本です。

以下、本書の気になった内容の要約です。

はじめに、近代とは(P9)

西洋における近代は、奴隷制度と結びついたプランテーション等の農業資本主義が成立した16世紀から。

日本においては、徳川時代を前近代に分類する。

国民の意識と国家(P15)

明治以前の日本人は、私達現代人が持つような国家意識、日本人としての意識はなく、国へのロイヤリティーは持っていない人々が多かった。

それを嘆いた福沢諭吉は、人々が国家や地域への帰属意識を持っていない原因は、人々の無知が原因であり、教育によって、人々に国民意識を植え付けることの重要性を説いた。

主権者としての自覚を持つ国民(P28)

国政に関与できる権利と自覚を持つ国民が、本当の意味で国民になり得る。だからこそ、自国の国民を育てるためには教育が必要

権力と階級が生まれる過程(P34)

有史上、権力が生まれる背景は、「余剰」というキーワードで理解できる。

農耕時代は食料生産において、たくさんの食料を持つ物が権力を握り、高い地位を得た。権力者が生まれるなか、その地位に従属する様々な仕事が生まれた。

そしてそれと同時に、階級も生まれた。

現代という管理社会(P41)

現代において、私達が快適に過ごすためには、膨大の数の専門家が必要。

安全、治安の面では警察、トラブルは弁護士、生活全般は公務員、お金は銀行員という具合に、私達現代人は様々な専門家によって管理されている。

近代は人々の連帯感が失われた時代(P52)

私達人間は、本質的に個人として生きている存在ではなく、人との関係性の中で生きている存在。

本来は、他者との関係が一番の大事な部分で、仲間とともに人生を作り上げていく存在であった。

しかし、近代は、このような人と人の関係、連帯を失わせ、生活にしても何にしても、個人が分断され、国や専門家のケアによって「管理」される存在になった。

現代社会は近代化された西洋社会(P56)

ファッションを始め政治や暮らし、教育、言語、あらゆる面で、現代社会は西洋社会をモデルに作られている。

私達現代人の暮らしが、西洋の文化を土台にしたものになっている、ということを知っておく必要がある。

経済至上主義や環境破壊の根本にあるのは西洋の狩猟民族的な価値観が根本にあり、現代社会の問題は西洋社会の問題が根本にある

感想など

人権や権利、私達が当たり前のように感じている概念が生まれたとされるのが近代。モノを大量に生産し、それを消費していく、私達が生きている社会の土台が生まれたのが近代。

世の中が便利になって、たくさんのもの、たくさんのサービスに溢れた現代社会。

その反面、生活や労働にあくせくし、息苦しい思いを感じるのも珍しくはありませんが、なぜそうなのか、深く考えることはあまりありません。

専門的な内容で、一度読んだだけでは内容を咀嚼できませんが、現代を生きる私達のとって、今の社会がどのようなものを土台にしているのか。

それを知ることで、私達現代人が抱えている閉塞感というか、息苦しさの原因を想像することができます。

そんなことをあれこれ考えてしまう本でした。

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