分断の根本原因は学歴。『日本の分断』を読む

日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち (光文社新書)

やり直しができない社会、それが本当に良い社会なのか?

吉川徹著『日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち』(光文社新書)の読書感想です。

この本について

「分断」というキーワードをもとに、日本の社会の現状の分析を試みる本。

「階層社会」という言葉が使われて長くなりますが、実際は今の日本はどうなっているのか。社会で進んでいる分断化とは具体的に何なのか。

この本を読めば、その現実的な状況を理解することができます。

以下、本書の読書メモです。

個人と社会の接点(P5)

個人が社会とつながるにあたっては、いつでも変わる可能性があるものと、変わらないものがある。

前者は仕事や年収であり、これらは、どんな職業についていても、変化していく可能性がある。

つまり、仕事や年収はあくまで一時的な状態(ステイト)であり、つねに移ろう可能性がある。

一方後者は、最終学歴や性別など、何があっても絶対に変わらないものを指す。これらが個人のアイデンティティーとなり、社会で生きていく上で、避けられない条件となる。

正社員と非正規社員の分断化(P28)

日本における正社員と非正規社員の分断の根本は、学歴社会にある。

日本の場合、海外と違い、一度最終学歴が決定されれば、それは一生固定されるものになる。

仕事をして再び学校に戻っても、日本は学歴に基づく新卒採用主義が根強いので、学歴を「更新」しても、大したメリットにはならない。

つまり、若い頃に進学、卒業した学歴が一生、社会との接点としてついてまわる。ここに、根本的な断絶の原因がある。

再チャレンジができない社会(P105)

日本で生きていく上での選択肢は思った以上に少ない。

「まっとうな道」に進もうと思えば、学校へ進み、学歴を入手し、新卒で心配しないよう、レールに乗っかかって生きていくのが無難。

この意味で、日本人において一番重要なのは18歳という年齢。大学に入って学歴を入手する。これが、一生ついてまわることになる。

この意味で、日本は再チャレンジができない社会。

学歴を更新するとか、そういうことは意味がなく、実質、20歳になる前に、社会との重要な接点が決まってしまう。

20世紀の勝ちパターン(P155)

現在の日本社会で美味しい地位を手にしている人々は、昭和30年~40年生まれの大卒男性。

彼らは学歴をゲットしてホワイトカラーとして労働市場に参入し、日本の成長に乗っかかり、会社で相応の地位についている。

離職経験がないのが彼らの特徴で、かつての日本の、終身雇用制の美味しい汁を吸い、有利な状況で会社人生を送り、経済的に豊かな恩恵を享受してきた。

つまり彼らは男性有利社会、年功序列、大卒学歴至上主義、日本の右肩上がり時代など、構造的な理由によって、勝ち組になることができた最後の人々。

最も不安定な人々(P161)

現在の日本において特に不利な状況にいるのは、若年の非大卒女性。

彼女らの平均年収は140万で、労働時間も少なく、ちょっとした原因によって、貧困化に進みやすい。

彼女らのなかには既婚者が7割を占めるが、そのパートナーもまた、非正規の非大卒男性であることが多く、貧困化が連鎖する状況になりやすい。

感想など

詳しい調査をもとに社会がどうなっているのか。何がどう分断しているのか。具体的に理解できた本。

個人的に印象に残ったのは、なぜ社会で分断化が進んでいるのかという理由と、正規社員と非正規社員。その分断化が進む日本の状況。

本書ではやりなおしを許されない日本社会の構造がその原因であることを指摘していますが、実質18歳で人生が決まってしまう。

それは本当にそうだなと思います。

少なくとも、「正規ルート」で生きていくのは非常に難しいのは確かな話なのは納得できます。

つまり、一度「正規ルート」から外れてしまったら、そのことを自覚して、具不利益を挽回するために、別の方法を模索しなければいけません。

「正規ルート」に進めたからといって、それでめでたしめでたしになるわけでもないですが、やはり、学び直し、リカレント教育。

そこらへん、もっと多様な選択肢ができれば、社会はもっと、柔軟性が育まれると思いつつ、本書を読了します。

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