日本は豊かで、世界に名だたる産業があり、日本人はもっともっと豊かになれるはず。日本は安心に暮らしていける国のはず。
「あなたは何を勘違いしているのですか?そんなのはすべて幻想ですよ?日本は実際、こんなにもお先真っ暗な国ですよ?」
と、厳しいながらも愛情のこもった喝を与えてくれる本、『現実を視よ』(PHP研究所)を読みました。
この本について
本書はユニクロの柳井正社長が、日本の将来を憂いて書いたという、愛国の書。
いかに今の日本が危険状態であるのか。日本国民にとって安心できない状況が続いているのか。
「現実」を次々とやり玉にあげ、「みなさん、このままでは日本はヤバいですよ、もっと成長しなければいけませんよ」と叱咤激励する内容になっています。
なぜ日本人に気概が失われてしまったのか。バブル崩壊後、衰退の一途をたどっているのか。
そもそも、なぜ日本から、グーグルやアップルなど、核心的な企業が登場しないのか。
政治経済、そして教育に歴史。
日本の今を知り現実を知る。それによって、私たち日本国民がこれからどう生き残っていくのか。
日本国を成長させていくため。国民が豊かな暮らしを取り戻すため。一体何ができるのか。
読者一人一人に、その問いを問いかける、熱い本になっています。
感想など
自分の国の将来を真剣に考える。そのためにはまず現実を視ることから。厳しい叱咤激励のなかに、ここにこそ復活するための光が見える
正直なところ、柳井社長といえば典型的なグローバリストで、国がどうとかという話よりも、ビジネスのことだけを考えている人のイメージがありました。
しかし本書を読んでそのイメージが一点。
内容的には
「もっと成長しよう。国民一人一人が自助意識を持たなければダメだ」
という、ある意味マッチョイズムの思想なので、人によってはその上昇志向を理解することは難しいかもしれません。
ただ個人的には、
「ほんとうにそのとおりだ」
と納得できる話が多数。
私も会社員ではなく、収入100%を自分で稼げなければならない立場なので、国になんとかしてもらう。会社に面倒を見てもらう。
そんなことは不可能です。だからこそ、本書の内容は極めて熱く、そして納得感が強い話になっています。
すべては成長の過程である
企業が成長していき、大きな組織となっていく。
そこでは当然、きれいなことばかりではすみません。それはユニクロの潜入レポートを読めば一目瞭然。
→ワンマン経営の光と影を明らかにする傑作ルポ。『ユニクロ潜入一年』の読書感想
だからといって、
「従業員に負担を強いる会社に価値がない、会社が悪い」
と、脳筋的に物事を判断することはNGです。
実際、ユニクロが極めてリーズナブルな価格で、価格以上の品質の商品を世の中に提供しているのは紛れもない事実です。
例えば、ヒートテックをはじめ、エクストラファインメリノのニットなど。
デパートで販売されている数万円の「ブランド」品と同等レベル、もしくはそれ以上のものを、その10分1の価格で購入できる。
この姿勢は羊頭狗肉、価格と品質が合っていないインチキ品を高値で売っている企業よりも、ずっと素晴らしいことだと思います。
最後に
本書を読み終えたあとは、自分の意識がグッと広くなったというか、良い意味で、
「今のままではいけないな」
と身が引き締まる思いを感じました。
我ながら単純だとは思いますが、本書で強く強調されているように、一番ヤバいのが、
「自分はこのままでいいんだ」
と勘違いして、茹でガエル状態になること。
現実問題として、経済格差は広がり、日本人の平均年収もどんどん下がっています。
この現実のなか、どうすれば生き残ることができるか。自分に何ができるのか。
それを真剣に考えることはまさに独立独歩。自分の足で立ち、自分の人生を生きる第一歩です。
ユニクロ云々は関係なく、一つの考え方として、非常に刺激を受けた本でした。
「自分の人生は自分でなんとかする」
人生で熱い心意気を取り戻したいあなたにおすすめしたい本です。