誰もが結婚できたのはもう昔の話。
橘木俊詔著『男性という孤独な存在 なぜ独身が増加し、父親は無力化したのか 』(PHP研究所)の読書感想です。
この本について
社会学的な視点から現代の男性が置かれている状況を考察、今後男たちはどのような運命をたどるのか、男性と社会のあり方について分析されている本。
この本を読めば、フツーの男たちの生きづらさの理由が分かります。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P3)
今、独身男性が増え、結婚しない男性が増えているが、これは歴史的に見て自然なこと。
そもそも、誰もが結婚して一夫一婦制となった時代は歴史的に見てごくわずかな期間(100年程度)でしなかない。
つまり、男性なら誰もが結婚して家庭を持てる時代こそが異常であり、現代とは、ある意味、自然のバランスが取り戻されつつある時代と言える。
なぜ若者は結婚したがらないのか(P16)
現代日本においては、意識的に結婚を回避する若者が増加の一途をたどっている。そして生涯独身者は今後増える一方で、結婚という価値観そのものが変化している。
一昔前は、見合いという強制的な制度によって、本来結婚することはなかった(できなかった)人たちでも結婚することができたが、現代では恋愛結婚が主流になっている。
恋愛が向いていない人、恋愛が上手くいかない人は、恋愛すること自体うんざりし、結婚から遠ざかっていく時代がやって来る。
注目は女性の格差(P23)
現代における格差のなかでも、特に注目したいのが女性の間の格差。
今や、女性の社会進出が叫ばれ、環境的には女性は男性のように働き、社会で活躍するための環境が作られている。
その結果、女性の間では職業や収入の格差が増大。キャリア志向の女性は男並、もしくは男以上に稼ぐので、結婚しないか、結婚しても男性と対等に夫婦関係を結んでいる。
一方、非正規で働く女性は将来への展望が見えず、安い賃金で働かざるを得ないため、期待するのは生活を安定させてくれる男性の存在。専業主婦への願望も強い。
稼げる女性はより自立的になり、そして、稼げない女性はより依存的になっていく。ここにハッキリと、女性の間の格差が存在する。
男性の生涯未婚率が高い理由(P33)
女性より男性の方が生涯未婚者が多い理由。
1・出生のバランス。単純に男の方が女より数が多い。→パートナー選びにあぶれる男が出る。
2・男性の初婚年齢が高いので、統計上の差異が出る。
3・女性の非婚傾向。夫に経済的に「従属」するのを嫌う女性が増えており、結婚の意義そのものが見直されている時代になっている。
草食系のデメリット(P43)
草食系の男は、性欲がまったりしていてガツガツしていない反面、勤労意欲、上昇意欲にかける。
基本的に草食系の男は人生そのものに対して意欲が低いので、草食系の男が増えれば社会が活性化せず、停滞していくことが懸念される。
もちろん例外はあるが、英雄色を好む。
性欲が強いガツガツ系の方が、人生に対して積極的で、恋愛だけでなく仕事など、あらゆる面で向上心を発揮できる。
今後の予測(P58)
これからの時代は、結婚する男=女性に興味がある+甲斐性がある男がする行為になっていく。
ということは、草食化していく現代の主流派の男たちにとっては、結婚が難しい時代になっていく。
つまり、今後は結婚が誰もがする行為ではなく、一部の人のみがする行為になっていく。平凡な男にとっては、生きにくい時代がやって来る。
離婚は特別なことか(P92)
現代の離婚率は増加の一途をたどっているが、明治時代等の記録を見ると、1900年くらいまでは、当時でも人々はフツーに離婚をしていた。
別れる男女が増えている今はただ、先祖返りしているだけで、それだけ恋愛が自由になっている証拠でもある。
感想など
男性としては読んでいて複雑な気分になる本。
「交際経験あり」のデータとか、「童○率」とか、「さすがにそれはウソだろう!」というような驚きのデータが出てきますが、男性の草食化というよりは二極化。
「ガンガン女性に積極的になる男性とそうでない男性がハッキリ別れているが、その比率が、肉食3割草食7割とか、偏って、草食系が今後は主流派になっていく」
という話が印象深いです。
※本書には肉食と草食の割合は書かれていません。あくまで個人の感想です
何よせ、ますます男のあり方について問われる社会がやって来ているのは確か。
もはやジョン・ウェインのようなタフガイは、もはや時代錯誤の存在と成り果て、男性としても社会で活路を見出す上で、新しい自らのあり方を模索していく時代になっています。
ということで、これからの男たちは今までの男たちと同じように生きることはできない。そのことを実感できた本でした。