心の強さ、それがあれば。
齋藤孝著『折れない心の作り方』(文藝春秋)の読書感想です。
この本について
山あり谷ありの人生を生きていくために大切さな心の強さ。
この本では、若い人たちの心の弱さを指摘しつつ、著者の体験等をもとに、どうしたら心の折れないメンタルタフネスを身につけることができるのか、そのヒントが満載の内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
「人から認めて欲しい病」の時代(P16)
現代は自己承認欲求時代。大人も子どもも皆、社会、他者からの承認を渇望している。
メールやLINE、SNSなどが流行しているのも、本質的には人を通じて自分を認めて欲しい人たちのニーズが流行となっているから。
どうやったら相手に自分の存在を認めてもらえるのか、そればかり求め合う承認欲求過剰社会が現代。
自分を保つ3つの方法(P20)
心が折れないこと、その秘訣は自分の中に確固たる自信や固定感を持つこと。
一つだけの経験に基づく自信でなく、あれもこれも、いろんな経験を自信にして、「俺は俺だ!」という、コアな確信を持つこと。
そのための方法として、
1・縁を大事にする。
2・人と深く関わる。
3・アイデンティティの根を張る。
この3つを大切にして、日々を生きていくことが大事。
他者性を広げる(P25)
人生は他者を受け入れることによって広がっていく。自分にとって心地良いもの、快適なものだけ受け入れていては、成長も発展もない。
自分が受け入れたくないものを一切排除する在り方は、自分の人生の可能性を自分で閉じ、無駄にしてしまう。
外に出ると、そこにはいろんな人々がいる。自分の好き嫌い関係なく、関わる事になる人、快適でない他者を受け入れることが大切。
出会いを大切にする(P29)
人には様々な、不思議なご縁がある。
出会いのときを祝祭に、人と人が出会うとき、そこには様々な偶然が重なっている。何か一つでも条件が違えば、出会うことはなかった出会いがたくさんある。
だからこそ、人との出会いを軽く考えず、「これもご縁」と、大事にする。一回の偶然に中に永遠性を見る、今目の前の状況、出会いを無駄にせず、他者と積極的に関わっていく。
縁を大事に人と関わっていけば、「あのときああだった、こうだった」と後悔することはない。
出会いを大切な縁として肯定することは、それまでの人生や自分がしてきたことを肯定すること。人生を長い目で一つ一つの経験をつなげてみれば、そこに必ず意味があることが分かる。
腐れ縁ほど意味がある理由(P39)
人の縁は不思議なもので、ただ偶然、そのときそこに居合わせただけで続く縁が人生では多い。
その出会いでどんなプラスがあったか、マイナスがあったか、計算を度外視したところで続いている関係は、人生にとって意味のある大切な縁。
なぜか縁が途切れない、そんな関係を腐れ縁というが、それはちょっとやそっとでは切れない縁。そんな縁のある人との関係が、人生を豊かに、意義のあるものにしてくれる。
オレオレオレの人は運をつかめない(P59)
「なぜ俺のことを理解してくれないんだ?」「俺は絶対、こうしたいんだ!」など、我を張り過ぎる人、自己主張をしすぎる人は運をつかめない。
「縁など関係ない、俺は自力で成功するんだ」と鼻息を荒くせず、「自分は絶対こうなんだ!」とこだわり過ぎず、もう少し気を抜く。
「それ、ちょっと違うんじゃないの?」と思うこともやってみる。不思議なきっかけで成功できるかもしれない。
ダメなものは「縁がない」という考えで(P71)
オープンマインドで接していてもどうもダメな人、努力しても上手くいかないことがある。
人との縁は大切だが、皆と皆、上手くやれるわけではない。関わる人のなかには、縁がある人とない人がいる。やるべきことをやってつながらない人とはそれでいい。
世の中には「縁がない」人もいるのだから。
「仕事を辞めたい」と悩んだら(P147)
仕事をしていて他の仕事のことを考えてしまうとき、今の仕事に疑問を感じるとき、それは仕事への集中、覚悟が足りない証拠。
「自分に相応しい仕事がある」と青い鳥を探し続ける時期も意味があることは確かだが、ある段階でケジメをつける。そのときこそ、その仕事に集中し、腰を据えて、仕事に取り組む。
仕事への覚悟を決めることは、自分のなかに軸を持つこと。
「これだ!」という確固たる自信は心の安定にもつながる。難しくても大変でも、決めた仕事は必死で頑張る。そこで、価値のある宝物を見つけられるかもしれない。
労働者が仕事を辞めたくなる社会側の原因(P150)
「これだ」と思う仕事を頑張ることは大切。ただ、今の社会は、構造上、仕事を辞める原因が働き手だけでないところが難しい。
今の社会は「代替可能社会」。労働者はいつでも首を切られ、他の労働者と「代替可能」な存在となっている。
働き手からしてみれば、いつ首を切られるか分からず、いつ自分が「不要」とされるか分からない。このような状況で、雇用主と働き手が、信頼関係を持つのは難しい。
だからこそ、働く側は、「これだ!」という仕事を見つけるまでは、組織に忠誠を誓わず、柔軟な考え方を持った方がいいのかもしれない。
アイデンティティとは(P156)
アイデンティティ=他者関係のなか、自分を自分と確信すること。
感想など
心の強さを鍛えることの大切さが分かる本。
個人的に印象に残ったのは斎藤先生の挫折体験の話(P194~)。
現在、大学教授として様々な著作を発表、メディアにも出演して活躍している斎藤先生ですが、
・大学受験の失敗して浪人生活
・大学院卒業後の長い無職時代
と、大きな挫折を経験。この2つの挫折経験が、斎藤先生の現在の活躍のための養分となっているそうです。
「逆境時代、自分と同じように逆境を経験した人の本を読み漁り、その境遇、アイデンティティを共有。それによって、人生を考える有意義な時期になった」そうです。
人生の辛い時期、上手くいかない時期、そのときの過ごし方、在り方が実はのちのちの飛躍へのチャンスへ。
であるならば、落ちている時期にこそ、将来のこと、人生のことを、考え直す大切な時期。人生には良いとき悪いとき、それぞれの過ごし方があって、どんなときにも無駄がないのかもしれませんね。
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