兄弟間に潜む心のダークサイドとは。『きょうだいコンプレックス』の読書感想

きょうだいコンプレックス (幻冬舎新書)

兄弟だからこそ、その関係は難しい。

岡田尊司著『きょうだいコンプレックス』(幻冬舎新書)の読書感想です。

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この本について

兄と弟、姉や妹、兄弟同士に潜む人間関係のダークな問題について、心理学的に考察した本。

兄弟は血がつながった存在。だからこそ、他の人間関係よりも、濃く安心できる存在になると考えたいところですが、実際問題、「兄弟だからこそ」関係がこじれる問題が起こることも。

この本では、兄弟コンプレックスという視点で、兄弟という人間関係の難しさを実感できる内容になっています。

以下、本書の読書感想です。

人類最初の殺人は兄弟殺し(P13)

聖書で有名なカインとアベル、2人の兄弟の話。

神は弟のアベルを可愛がり、兄のカインを嫌った。何かにつけ神は弟のアベルをえこひいきし、カインは不満をつのらせていく。

そして、やがてカインは弟のアベルを憎み、そして抹殺する。これが人類発の殺人であり、兄弟殺しが殺人の第一号。

この話はあくまで聖書の話だが、歴史上、兄が弟を殺す話は枚挙にいとまがない。

日本でもこの手の話はたくさんあり、戦国時代、織田信長が弟の信行を抹殺した話や、伊達政宗が弟の小次郎を殺した話などが有名。

弟殺しの理由はいろいろあるが、その背景の一つにあるのが、親の弟びいきであり、「自分より弟が愛されるのは許せない」という嫉妬心

嫉妬が行き着くところまでたどりつくと、殺人にまで発展する。

兄弟は運命のライバル(P55)

兄弟はもともと、生涯を通じてライバルになることが運命づけられている間柄。

兄弟で親の愛情を奪い合いし、成長するにつれ、どちらが上になるか下になるか、無意識で競い合いをする。それが兄弟の前提条件。

親の未熟さが子どもを歪ませる(P63)

親の未成熟で偏った子どもへの愛情分配が、兄弟間のライバル意識をますます加速させる。

未成熟で自己愛の強い親の場合、特定の子だけを可愛がり、特定の子をとことん嫌ってしまう、そんな偏りが見られる。

また、子どもよりも自分が中心にいなければ気がすまず、「白雪姫」の継母のように、子どもにライバル心を抱き、虐待するような親もいる。

自己愛的な親の特徴(P74)

自己愛が強く、子どもに問題が起きやすい親は、お世辞やおべっかに弱い。

自分が一番で、偉いと思いたい。そのため、子どもを自分の思う通りコントロールしようとしたり、自分の「こうありたかった」姿を子どもに理想転化する。

お受験に熱中する親や、子どもを芸能人にしたがる親の心理的な背景にはこの自己愛があって、子どもに自分の人生をリベンジさせようとしている。

人間関係と役割(P99)

人は人間関係のなか、ある決まった役割を演じる(役割理論)。そして、人間関係が固定化されてしまうと、なかなかその役から降りるのが難しくなる。

親の愛情は不平等(P104)

親子の絆はどの兄弟も同じではない。

親は自分が子育てに労力を注いだ子ほど可愛くなる。親の子どもの愛情のかけ方によって、絆が強い子、そうでない子、分かれてくる。

愛情を注がれなかった子どもは、親との絆を弱く感じ、親の方も、心のどこかで、その子への愛着を薄く感じてしまう。

心理学からみた長子(P124)

若い母親から生まれた長子は、万能感に溢れた自信を持ちやすい。

長子は親にとって初めての子どもなので、懸命に子育てする傾向が強く、親と子の愛着が育まれやすい。そのため、長子は親との愛着を築きやすい。

また、長子は次の兄弟が生まれるまで親の愛情を独占するので、積極的な自己PRをしなくても、親の目が自分に向く。

その育ちが、鷹揚さ、ガツガツしない大らかさを育む。

ひとりっ子はこんな特徴を身につける(P160)

他に兄弟がいない単独子は親の愛情を独占できるという特別な地位をずっと保ち続ける。そのため、兄弟通しの争いや競争なくして、親の注目を独り占めできる。

ひとりっ子であるがゆえ、ニーズはすぐに満たされる。それが、大らかでマイペース、のんびりした性格につながっていく。

大らかで鷹揚なのがひとりっ子の良いところだが、親が注意しないと誇大な万能感を強めてわがままで自分本位な傾向を強めやすいのがひとりっ子の欠点。

集団内の人間関係で挫折しやすくなるので、公的な場面で自分を律したり、周りに配慮することを学ばさせることが大切。

基本的に、自分の世界を守ることに意識を向けるのがひとりっ子で、人間関係の体験が不足しがち。

兄弟がおらず、人間関係の中でまれる経験をしないので、人との付き合いが苦手で表面的、回避的な人間関係になりやすい傾向がある。

兄弟コンプレックスの根っこにあるもの(P198)

兄が憎い弟が嫌い、そんな兄弟コンプレックスの背景には、

1・「自分が他の兄弟よりも親に愛されなかった、認めてもらえなかった」という不公平感

2・理想化された家族像へのとらわれ

3・愛着していた存在に裏切られたこと、見捨てられたことへの怒り

この3つの要素がある。

これら3つの要素が複雑にからみあい、兄弟コンプレックスとして心の奥に巣食っている。

老年になっても兄弟間で争う人々(P247)

近年、家裁で相続をめぐる兄弟間の争いが激増している。それは都市部のみならず、地方でも増える結構にあるという。

この背景には、お金のことはもちろん、兄弟間のなかで沈殿していた兄弟コンプレックスが背景にあるのも間違いない。

ずっと表に出てこなかった無意識のコンプレックスが、親の介護や死によって表に噴出、顕在化している。

兄弟コンプレックスは、早くそのことに気がついて、乗り越えるための行動を起こせば、兄弟同士、豊かで前向きな人間関係を送れる可能性もある。

血のつながった兄弟だからこそ、問題を整理し、乗り越えるための行動を起こしたい。

感想など

兄弟でも、いや、「兄弟だからこそ関係が難しいんだな」と思った本。

私はひとりっ子なので小さい頃は「兄弟がいたらなぁ」と思っていましたが、大人になってその気持ちはなくなりました。

本書で書かれているとおり、物事には両面あり。兄弟がいたら良い面がある一方で悪い面もあります。親の遺産相続の争いや、「血の繋がった兄弟だからこそ許せない」という争いもあることでしょう。

そういえば、この本では、2015年マスコミを騒がせた某家具会社のお家騒動の話も出てくる(P65)のですが、「兄弟」という視点でこのお家騒動を読み解くと「こんな見方もあるのか」と納得。

ビジネスの争いでも何でも、そこには人間関係、兄弟間の複雑な葛藤があり、人はつくづく、血がつながっていても難しいものなんだなと想像してしまう話でした。

でも、せっかく血がつながった兄弟として生まれて育つのに、争ってしまう、憎みあってしまうというのは、何だか悲しい話です。

本書の最後、近年増加している兄弟間の争い(親の介護や遺産相続の争い)を読むと、複雑な気分になります。

子どもを2人以上持つなら、家族が団結して子ども同士で将来争わない、そんな子育て意識が必要なのかもしれませんね。

(自分に子どもが何人もいたとして、自分が死んだ後に子ども同士が争っているようなら、死んでも死に切れないと思います。)

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