人間関係が上手くいかな本当の原因とは。
岡田尊司著『人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか』(新潮社)の読書感想です。
この本について
なぜ人を嫌いになるのかを、「人間アレルギー」というキーワードで読み解く本。
本書によると、人間関係で起こるトラブル、問題の背景には、他者を異物とみなし過剰な防衛反応をしてしまう「人間アレルギー」が背景に。
なぜ人に対して過剰反応が出てしまうのか、「人間アレルギー」を和らげるにはどうすればいい、原因と解決策を学べる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
はじめに、人間アレルギーとは(P3)
人間の人間に対する過剰な異物認識と心理的拒絶反応を人間アレルギーと呼ぶ。
人間アレルギーを持つことで、人と和合したり、社会生活を営んだり、良い伴侶を見つけるなど、対人関係全般において、様々な問題が伴う。
人間アレルギーへの対策は、周囲の環境を変えるのではなく、アレルギーを持つ本人が自ら変わる必要がある。
人間アレルギーの影響(P20)
人間アレルギーの人は他者に不寛容で、厳格で、潔癖になりすぎる。良い点よりも悪い点に目がいき、攻撃的な言動が目立つ。
そのため人間関係でバランスを欠き、結果的に周囲に無用な波風を立ててしまい、ますます孤立していく。
なぜそんなふうになってしまうのかは、人間アレルギーを持つ人がそんな風に育てられたから。
ほめるよりけなされる、人格肯定よりも否定される厳しい環境に適応した結果、人間アレルギーの人になっている。
精神障害、人格障害の背後に人間アレルギーあり(P28)
社会不安障害、適応障害、人格障害、気分変調症など、現在の精神医学で診断される様々な障害は、人間アレルギーで説明できる。
これらの障害の背景には、傷つきやすさ、共感性の低下、自己への執着、極端な認知など、人間アレルギーによって引き起こされる症状がある。
人間アレルギーこそ、生きづらさの原因であり、克服すべき問題。
投影と被害妄想(P35)
邪悪な欲望や悪に対して過剰に反応し断罪する、その背後には、自分自身の投影がある。
自分の中に邪悪なものがあることを認めたくないがゆえ、人のなかに自分の中の悪を見つけ、断罪する。これが投影。
「人から何かされるのではないか?」という被害妄想の正体も、その本質には、自分の不安、恐怖、恐れを周囲に投影したもの。
愛着障害と人間アレルギー(P46)
人間が成長し、生きていくための根本的な力となるが養育者との愛着関係。養育者という安全基地をもとに、人は健全に成長することができる。
しかし、不幸にも養育者との間で愛着を育めなかった場合、人間関係や精神の安定など、様々な面でダメージを受けてしまう。
孤独なライフスタイルを求める人、人間関係でトラブルが絶えない人、恋愛が上手くいかない人、ストレスに弱くうつなどの症状に悩む人は、根本に愛着障害を抱えているケースが多い。
心の免疫機能について(P55)
免疫機能とは、生体が異物の侵入や感染から身を守るために備えている防御機能。
免疫機能があるからこそ、人の体は健康でいられるが、時に免疫機能が過剰に反応してしまうことがある。これがアレルギー。
攻撃、排除する必要のないものまで反応してしまうため、それが有益なものであっても、徹底的に攻撃し、排除しようとしてしまう。
このアレルギー反応が形成されてしまうと、それを取り除くのが難しくなる。
生体のアレルギー反応と同様、人の心にも、免疫機能がある。
人間には、ストレスや不快なことに悩み過ぎないよう、抑圧や同一化など、心のバランスを保つ機能が備わっている。
心の免疫機能と愛着(P63)
社会で生きていく上で、人を異物とみなし排除していくことは、社会生活を送る上で、非常に困難を伴う。
害のある人間は近づかないようにして、自分を守ってくれる人間には近づく、人間にはそんな心の免疫機能がある。その仕組みが愛着。
人は愛着を土台に、他者に親しみを感じたり、一緒にいることを楽しむなど、人間関係を形成していく。
ところが、愛着の形成が上手くいっていない人は、他者に対して過剰な防衛心理が働き、人間アレルギー反応が起きやすい。
結果、職場で孤立してしまうなどの社会生活の困難や、人と上手くやれない、親密な関係が築けないなど、人間関係でのトラブルが起こりやすくなってしまう。
愛着障害と作家(P134)
夏目漱石や芥川龍之介など、人と上手くやれない、対人関係で困難を伴う愛着障害で苦しんだ作家は多い。
親密な関係を持つのが難しく、人に対して過剰に防衛的、傷つくことへの恐れ、人間アレルギーが、作家を創作活動へ駆り立てる背景になっている。
潔癖すぎる環境がアレルギーを作る(P159)
近年、アレルギーが起きやすい子どもが増えているが、この原因は清潔すぎる環境が増えたから。
人間の成長において、清潔すぎる環境で育つと、不要な免疫を抑える体の機能が発達せず、アレルギーが起きやすくなってしまう。
これと同じように、ストレスが全くない過保護な環境はダメ。心理的に無菌な環境では、人の心は育たないし、ストレスや困難への耐性が育たない。
人が育つ上では適度に雑菌やストレスがある環境の方が良い。
人間アレルギーの背後にあるもの(P170)
他者への過剰な異物反応が人間アレルギーを引き起こす。他者への必要以上の異物反応を抑えるためには、衰えた愛着機能を取戻すことが大切。
愛着機能を取り戻すことで、他者への過剰な異物反応を抑制する。愛着を安定化させることによって、人間アレルギーを和らげることができる。
愛着機能を取り戻す方法(P194)
愛着機能を取り戻す方法は、安全基地を取戻すこと。
「この人なら安全だ、信頼できる」という安全を脅かさない、求めたら優しい手を差し伸べてくれる存在を見つけること。
世の中のギスギスした背景に人間アレルギーあり(P220)
世の中がギスギスし、だんだん人間関係が難しくなっている。
もはや「雨降って地固まる」のようなケンカをしつつも絆を深める人間関係は減っていき、一度の行き違いで人間関係がギクシャクしてしまう、人と人の絆が失われている時代へ向かっている。
世の中に優しさ、寛容さが失われ、潔癖で頑な、頑固で自分の考えだけを主張し他者を認めない人が増えているが、背後には、自分以外の人を異物とみなす人間アレルギーの問題が潜んでいる。
感想など
「人への過剰な心理的防衛反応(人間アレルギー)が人間関係のトラブル、生きづらさの原因になっている」
本書の内容を簡単に要約するとこうなりますが、アレルギー反応を例に、人間関係の問題を説明している本書は、非常に説得力があります。
人を拒絶する心の仕組みと原因はどこにあるのか、その解決策は何なのか、この本を読めば、その答えが見つかるかも。