無神経過ぎるのは論外だけど、敏感過ぎはそれはそれで困る。
岡田尊司著『過敏で傷つきやすい人たち』(幻冬舎新書)の読書感想です。
この本について
HSP、いわゆる過敏すぎる気質を持つ人の特質と世の中への適応戦略について書かれている本。
世の中、無神経過ぎても困りますが、敏感すぎるのも辛いところ。適度なバランスを取って生きていくための、ヒントが満載の内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P7)
HSP=Highly Sensitive Person(敏感すぎる人、過敏性が高い人)の略語。ユング派の心理学者であるエレイン・N・アーロンが提唱した概念。
過敏性の構成要素(P55)
HSPの人は、
1・感覚過敏
→音や匂いなどに過敏に反応する。
2・馴化抵抗(じゅんかていこう)
→刺激や環境に慣れにくい。
3・愛着不安
→養育環境の影響から、ほかの人より不安を感じやすい。
4・トラウマ
→過去の心の傷を抱えており、神経が傷つきやすい。
5・身体化
→体に心の不調の症状が出やすい。
6・妄想傾向
→現実の出来事を悪く考えてしまう妄想傾向がある。
7・回避傾向
→痛みを避けるため、身体的、物理的に人と距離を置く傾向がある。
8・低登録
→弱い刺激では反応しにくい傾向がある。
などの特徴があり、これらの要素を計算していくと、過敏の傾向や程度が分かる。
過敏傾向の人の適応戦略(P86)
過敏傾向の人はとかく刺激を受けると疲れやすい。そのため、刺激が強い環境を避けたり、一人静かに暮らしたり、刺激が強い環境を避け、自分の部屋など、落ち着ける場所を好む。
これは、過敏傾向の人にとって理にかなった適応戦略であり、刺激によって疲れてしまったときは、刺激を避けてぼんやりのんびり過ごすのが良い。
回避という戦略(P176)
過敏傾向の人にとって大切なのは、不快な刺激やストレスを上手に避けること。人よりも刺激やストレスの反応度が高いため、人よりも数倍疲れやすい。
そのため、敏感度の高い人のなかには、人と距離を取ることで、自分を守ろうとする人もいる。
過敏な人にとっては、不快なことに耐えるより、回避した方が良い場合もあるため、一概に回避傾向が悪いとは言えない。
人が健康に生きていくために(P247)
愛着の本質は、依存と世話。誰かに依存を許し、世話を与えることで成り立つ。
小さい頃に自分のことを自分でやらせるのは自立心を育む上で大切だが、度が過ぎると人に頼れない、甘えられない、クールな人になりやすい。
自分で何でもできる反面、人と心を許し合う関係を持ちにくく、人間関係で様々な困難が伴う。
人が健康に生きていくためには、自立することも大切だが、誰かに依存することも大切。自立と依存、ほどよいバランスを大切にする。
感想など
HSP、敏感体質という概念が興味深かった本。
世の中には、他人の気持ちなど全くお構いなしに自分の好き勝手行動する無神経な方々が存在しますが、いっぽうで、周囲の環境を気にし過ぎる、刺激に敏感すぎる人々がいます。
彼らがHSPであり、悪く言えば神経質や気にしすぎ、良く言えば繊細な人ということができます。
自分もどちらかというと神経質というか、気になるところはすごく気になるので、この本を読んで少し納得できるところがありましたが、結局大切なのはバランスの問題。
無神経すぎるのはハッキリ言って論外ですが、やはり敏感過ぎるのは、それはそれで、生きるう上での障害になってきます。
適度に鷹揚、そして適度に気にするべきことを気にする。自分のなかで敏感な部分のバランスを取っていくことが、大切なのかもしれませんね。