『父という病』の読書感想 – 「親子関係」という影響を紐解くと

父という病 (一般書)

母親は産む、では父親は?

岡田尊司著『父という病』(ポプラ社)の読書感想です。

この本について

家庭における父親の役割、存在意義、子どもへの影響を、心理学的な視点から考察する本。

この本を読むことで、父親の役割や存在意義、父親不在が子どもの発達過程でどのような影響があるのか、父親の影響力の大きさを認識できる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

はじめに、父親という存在について(P3)

子どもにとって、母親という存在はとても大きい。妊娠し、産み、育て、子どもにとっては生きていくために欠かすことができないのが母親。

母親の保護がなければ、子どもは育つことができず、成長さえとまり、挙句にはその命さえ危険にさらされてしまう。

しかし、父親の場合は事情が違う。

父親の役割は母親に種を提供し、妊娠させること。それ以外に生物学的な結びつきは乏しく、子どもにとって必要不可欠な役割は、種を提供した時点で終わっている。

子どもが誕生する以前に、その役割は終わっている。この点の事情が、母親とは違う。

父親不在のこんな影響(P9)

生物学的な役割として、父親は種を母親に提供する以外、大きな役割はない。

子どもの養育において、母親の不在ほど父親不在の影響は少なく、子どもが育っていくために何より大切なのは、母親と子どもの愛着関係。

しかし、子どもが育つという点において、父親には果たす役割があり、その影響が少なくない。

一般的な傾向として、父親不在の家庭では、子どもが問題を抱えやすく、非行を犯すリスクが高くなる傾向にある(父親がいない母子家庭では、子どもの非行リスクが5倍ほど増加する)。

また、子どもの頃に父親と離別した子どもは、自己重要感が低く、自分に対して自信が持てない傾向が強く、対人関係で問題を抱えやすい。

人に頼ることができなかったり、逆に求めすぎたり、バランスの良い人間関係が持ちにくい。それによって、うつや自殺、十代の妊娠など、成長過程で様々な問題が起こりやすくなってしまう。

このことから、子育ては、母親だけでもできないことはないが、父親の存在も無視できない影響がある。

父親の二つの顔(P45)

父親の本来の役割は、育児を直接担当するというよりも、攻撃性や行動力によって、母子の安全を守ること。

これによって父親、強く頼もしい家庭の庇護者となり、子どもにとって畏怖の対象となる。

父親が存在することによって、子どもは「守られている」という感覚を持つことができるが、父親不在の場合、子どもは安心感を脅かされやすい。

そのため、父親と離別した子どもは、不安感が強く、消極的になりやすい。

幼児的な万能感を持つ子どもいるが、同時に傷つきやすく、安心感の乏しさを抱えやすいという問題も併せ持つ。

誇大な自尊心と傷つきやすさ、このアンバランスさが、父親不在の子どもの一つの特徴。

父親は、子どもを外の世界へガイドしていく案内者の側面があり、父親のガイドによって、子どもは母親に飲み込まれることなく、外の世界を探求していくことができる。

父親の存在が不在の場合、子どもは安心して外へ出て行くことができない。そのため、母親だけでなく、父親の役割が大切になってくる。

子どもに関心を持つこと(P62)

家庭に関心が高い父親は、家庭に関心が低い父親よりも社会的に成功していない傾向がある一方、子どもの成績や社会的成功には、父親の子どもへの関心の強さが影響を与えている

子どもは父親の関心を欲しがり、それによって、子どもは勉強を頑張ったり、社会に飛び出して頑張っていくことができる。

優しいだけの父親はダメ?(P84)

子育てにおいては、優しさだけで良い子どもが育つわけではない。子どもに対して受容的に接しすぎた結果、子どもがダメになってしまうことも。

父親は、子どもを受容するだけでなく、ダメなものダメ、と子どもにブレーキをかける存在である必要がある。

子どもが4、5歳になるくらいまでには、父親の厳しい側面を子どもに味合わせる必要がある。

そのことが、子どもがスムーズに社会に出て行くための必要な力となり、悪いことにストップをかける抑止機能になる。

子どもにやりたい放題させるのではなく、子どもに一定の制限をかけてコントロールすることが、子どもの規範意識や自己抑制力を育て、社会で適応していくための力となる。

母親の父親への愛情が子どもに影響する(P173)

日本では、子どもがいる世帯の10分の1が父親がいない世帯となっている。

父親不在の影響は、父親がいるいないだけでなく、母親が父親に抱く感情によって変わってくる。

母親が父親に対して愛情を持っている場合、子どもは父親の身代わりとして、母親にとっても特別な存在となる。それによって、母子関係は安定したものになりやすい。

たとえ、父親が不在になったとしても、子どもの存在が、父親の存在とつながって、母親を守る。

しかし、母親が父親に対して否定的な感情を持っている場合、父親がいようがいまいが、子どもの父親像に影響を与えて、子どもが健全な父親像を持つことを阻み、その成長を歪ませる可能性がある。

父親不在がもたらす影響(P175)

父親不在がもたらす、子どもの発達や自立への影響について。父親が不在になることで、子どもには次のような影響が出る。

1・母親への依存と母子融合

→子どもの自立に影響あり。

2・誇大な願望と自己コントロールの弱さ

→父親というストップ機能がないため、誇大な万能感を抱きやすい。

3・不安感の強さ、ストレスに敏感

→人よりも不安感が強く、ストレスを感じやすい。それによって、社会への適応が難しくなる。

4・三者関係が苦手

→複数の関係より、一対一の関係しか安心して自分を出せない。それによって、恋人への独占欲の強さ、苛烈な嫉妬心へつながり、恋愛関係等の問題へつながっていく。

5・学業、社会的成功への影響

→父親との関係は集団生活への適応や問題行動に影響する。特に思春期以降、父親不在の影響が顕在化しやすい。

6・性的アイデンティティの混乱

→男、女、性的なアイデンティティの確立に影響。

7・夫婦関係、子育てへの問題

→将来家庭を持ったとき、子育てに影響が出る。

父親像の影響力(P291)

適切な父親像を持てないことによって、理想の父親像に現実を振り回され、それが人生に影を落とし、人間関係の様々な場面で影響が出る。

身近な人間との関係、「この人とはうまくいかない」という人との関係が、実は父親との関係を投影している場合もある

父親の存在は、人間関係、社会で活動していく上で、表には出ないが、影の部分で、様々な影響力を発揮している。

感想など

父親の存在、役割は大きいことを実感できる本。

昔、何の本だか忘れましたが、「学校の先生、会社で上司、年上の人と関係が上手くいかない人は、父親との関係が上手くいっていない人」という内容を読みました。

「私たちの人間関係の基本は家族で、父親との関係、母親との関係を外の人間関係に投影している」という話でしたが、『父という病』を読んで、その理由が少し分かった気がします。

この本では、心理学、精神医学、生物学、様々な視点&実例をもとに父親がもたらす子どもへの影響を考察。説明がとても腑に落ちて、「そうなんだ!」と頷くこと多数でした。

この本を読むことで、父親というのは、種を提供するだけではなく、子どもが生まれたあとにも、目に見える形、見えない形、いろんな影響を与える存在であることを実感できると思います。

「母は産み育てる。では父親は?」

そんな疑問が頭に浮かんだとき、この本の一読をオススメします。

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