人生という戦場で敗北しないために知っておきたいこと。
大橋武夫著『戦いの原則 人間関係学から組織運営の妙まで』(PHP研究所)の読書感想です。
この本について
『孫子の兵法』や『戦争論』などのいわゆる兵法書から、マキャベリの『君主論』や『論語』など、古今東西の名著を手がかりに、人生や人間関係、ビジネスに役立つ教えを学ぶ本。
「不易」という言葉がぴったりで、生き抜くための教訓はいつの時代も普遍的であることが分かる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
戦わないで勝つ(P14)
争いごとの最上の解決策は、相手と直接やり合わずに勝利を得ること。
直接バトルは勝ったとしてもこちらも消耗する。できれば、こちらの労力を消耗せず、かつ勝利をおさめる方法が望ましい。すぐに拳を振り上げるのは愚かなこと。
人を団結させるために(P19)
人は欲望の生き物。人間誰もが欲をもち、自分可愛さのために行動する。
そんな人を団結させるために知っておきたいのは、人が欲に支配される生き物であるということ。組織全員、一つの欲に方向を向けさせる。
構成員が同じ利益、共通の目的を持つ。これこそが、組織が強くなる秘訣。
自分を知り敵を知る(P22)
勝利を得るためには、まず自分自身を知ること。
自分にどんな強みがあるか、弱みは何か。それを押さえた上で、次は敵について知る。自分を知り敵を知る。これが戦いに望むための原則。
売れるものを作る(P26)
ビジネスでは、まず顧客ありき、売れるものを作ることが商売の大前提。
必要とされないもの、それを欲しがる人がいない商品は売れない。商品は売ってから作る。
守るより攻めること(P31)
籠城などの守勢を取ることは、戦で負けないための安全策の一つ。
しかし、守ってばかりでは勝つことができない。最後には、攻める人間が勝利をおさめる。守勢は大切だが、守りの一手は滅亡への道へ近づく。
武器を持たない権力者は滅亡する(P47)
権力者が犯す間違い、それは自らの権力となっている武器を自ら手放してしまうこと。
権力者が権力者たる所以は、権力を持っていること。その権力を部下に人道主義に冒され部下に譲渡してしまうと、その行動がやがて自分の喉元を突き刺す刃に変わる。
権力がある地位に立ったのであれば、何が自分の権力を維持させているのかを知り、それを決して人に渡さないこと。それが権力を維持する秘訣。
ナンバー1に警戒されるナンバー2は滅亡する(P58)
トップは部下の活躍に警戒する。
過去においては源頼朝と源義経の例のごとく、トップ以上に活躍する部下は、やがてトップからうとまれ、その地位を奪われる。
部下という立場にいるときは、常にトップの嫉妬心を刺激しないように注意する。
一番大切なのは目標の達成(P121)
名将が名将たる所以なのは、優れた作戦を実行するのではなく、目的の達成にある。
作戦が良くても、目標を達成できなければ意味がない。何のための作戦か、どういう結果を期待するのか、それを達成できるのか。そこが重要。
お金や兵力は使うときには一気に使う(P187)
物事にはラッシュをかけるとき、勢力を結集し、一気呵成に行動すべきときがある。
そういうときは、お金、兵力、あらゆるものを総動員して、一気に勝負をかける必要がある。
ダメなのは、どんなときもお金や兵力をケチってちびちびと小出しにすること。小さな行動で状況を一変させることはできない。
状況を変えるべきとき、勝負をかけるときは、持つものを全て結集させ、一気に勝負をかけること。出し惜しみはダメ。
気持ちによって行動を変えよ(P193)
人の精神状態は、思いのほか行動に影響を与える。
そこで、気持ちに余裕があるときは敵の弱点を狙い、気が弱くなっているときはあえて、自分より強い相手へ向かっていく。
追い詰められ、万策尽きたときは、心を決め、度胸を据えて、強敵に突撃すべし。かえって、活路が見えるかもしれない。
トップの役割(P230)
トップは命令するものであり、部下に命令することが、トップの何よりの役割。
トップが方針を自分で決められない組織は舵を失った船のようなもの。トップに立ったのであれば、部下に指示を出し、組織の進路を決定すべし。
感想など
「いつの時代も勝利の方程式は変わらない、人間社会の本質は変わらないもの」ということが分かる本。
「人生は戦いの連続」という言葉があるとおり、生きていくことは、綺麗事だけでは上手くいかず、優しいことではありません。
人道主義的なポジションに立ち過ぎていると、後ろから刺されてしまうような、綺麗事ではすまない現実があります。
世の中は競争社会であり、日々様々な競争が繰り広げられています。
そのなか、自分の領土(暮らし)を確保するためには、ときに「正義」とは言えない方法を採用せざるを得ないこともあるかもしれません。
毒には毒、蛇は蛇。物事は正道は必ずしも正道では上手くいかず、日々生きていくため、現実に折り合いをつけて、「灰色」の見方を身につける必要があります。
人生という戦場で、無駄に討ち死にせず、勝利をつかむため、幅広く柔軟に考え、そして断固として行動したいものです。