朝9時に会社に出社し夜は8時9時10時とガンガン働く。
疲れてるから休みをとりたくてもNG。有給を消化することもできず、結局仕事をするためだけに生きてる。
こんな今の働き方はどこかおかしいのではないか。
そんな疑問を感じたときに読みたいのがこちら。熊谷徹著『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人』(SB新書)です。
この本について
本書は労働先進国、ドイツに27年住んだ著者がドイツの働き方を紹介。
いかにそれが人間的で合理的なのかを説明しつつ、日本人がもっと安心して働く環境を作るにはどうすればいいのか。
「働き方改革」を考える上で、意識しておきたい話が満載の内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P12)
ドイツは法律で、働きすぎを厳しく禁止している。
具体的には1日10時間以上の労働を禁止。日曜祝日も労働禁止。人々が働きすぎ、社会が不健全になることを抑制している。
監督官庁による監視も厳しく、人々が安心して休める環境が整っている。
このように、労働時間はしっかり規制されているにも関わらず、ドイツのGDPは先進国の中でも高い。
だからこそ我々は、ドイツから働き方を学ぶ価値がある。
ドイツの動労時間が短い理由(P34)
ドイツの労働時間が短いのは、
1・法律による制限
2・効率を重視し無駄を嫌うドイツ人のメンタリティーそのもの
この2つがその理由。
もちろん、ドイツの労働時間制限にも抜け穴があり、ドイツ人全員が短い労働時間内で働いているわけではないが、基本的にドイツ人は合理主義者。
長時間労働など、無駄な努力を嫌う民族。短い時間でもきちんと結果が出せればいい。やるべきことができればいい。
そう考えるのがドイツ流。根性論はドイツで流行らない。
ブラック企業は生き残れない(P55)
ドイツで日本のいわゆるブラック企業は登場してもすぐに潰れる。それは、従業員を違法に働かせれば、すぐに経営者が逮捕されてしまうから。
まともな経営者は安い賃金で社員を長時間働かせて会社を儲からせることより、「前科者」になるリスクを怖がる。
だから、ドイツはブラック企業が登場しにくい土壌が作られている。
長時間労働は無駄(P68)
人間の体力には限界がある。10時間をこえると、まともに能力を発揮できなくなり、仕事の効率が著しく落ちるのが普通。
この意味で、長時間労働は全くの無駄。短時間でも、きちんと社員が集中して働ける環境を作るほうが良い。
長期休暇を取る権利(P100)
ドイツでは社員が数週間、じっくり長期休暇を取る権利が保証され、それが広く社会で受け入れられている。
だから、ドイツ人は仕事だけでなく、家族とゆっくり時間を過ごすことができるし、バカンスもできる。人生そのものを、豊かに味わうことができる。
日本との違い(P117)
ドイツではいわゆるカスタマーサービスについて、日本と大きく考え方が違う。
ドイツでは「お客様は神様」なんてことはなく、あくまで買い手と売りては対等の関係。そのため、ドイツでは信じられないくらい失礼な接客を受けることも少なくない。
ただ、それによって、働き人が理不尽な思いをしないですむ面もあるので、そこは難しいところ。
感想など
ドイツの働き方を理想と考え、日本の働き方と対比させることで、日本の労働環境の問題点が明らかになる本。
本書で書かれている話は、実際そのとおりで、私も長年ドイツ人の友人がおり、何度もドイツに行ったことがあるので、彼らの人生がいかに余裕があるか。
それについては、素直に憧れを持っています。
プロフィールでご紹介しているとおり、私の「豊かさ」という概念は、ドイツで見た一つの光景にあります。
小学6年の夏休み、親に連れられドイツへ旅行。ハイデルベルグという大学街の夕暮れ時、5時6時から人々はレストランのテラスに出て、楽しそうに食事やお酒を楽しんでいます。
それは日本では決して見られない風景で、仕事はするけれど、夕方には仕事を終えて仲間や家族とゆっくり過ごす。
あの楽しそうな風景は、今でも決して忘れることができない一コマです。
当時は日曜だけでなく土曜もお店はしまっていて、昔と比べると今のドイツは多少労働時間は長くなっているという話も聞いたことがあります。
しかしまだまだ、日本と比べれば、やはりドイツの環境はうらやましいと言わざるを得ません。1日10時間も働くことはないし、長期休暇はきちんと取れる。
ドイツ人の友人が言うには、いろいろ問題もあるそうですが、やはり日本で就職する。それはほぼ、月から金、仕事漬けになるのが当然の暮らしを送るということ。
同世代の友人とかは、朝8時から夜9時10時まで当たり前に仕事をしていますし、それが普通らしいですが、やっぱり働きすぎだろうと。
まぁ、私もかつて勤めていたときは、朝4時30分に起床して6時には通勤電車のなかにいた男なので、そうしなければいけない現実があるのも事実。
しかし果たしてそれが本当にいいことなのか。やはり、変えられるなら変わってほしい。仕事+個人の時間の自由が持てる。
そんな余裕がある日本になって欲しい。本書を読んだあとは、改めてそのことを強く思います。