テレビもあるしネットもある。本を読まなくても生きていくことはできる。そんな時代だからこそ本を読む意味がこちら。
見城徹著『読書という荒野』(幻冬舎)の読書感想です。
『読書という荒野』について
なぜ本を読むのか。そもそも本を読む意味とは何なのか。
出版業界の第一線で活躍し続ける幻冬舎の社長である著者が、読書の意味と価値を自身の経験と信念に基づき、熱く語っている本。
この本を読めば、本という媒体が無限の可能性を秘めていること。そして、人生を変える力を持っているかを、実感することができます。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P3)
読書とは他者の人生を追体験するための手段。
人は自分だけの人生から学べることは少ないが、他者の人生から学ぶことによって、縦に横、幅広い視野を獲得することができる。
読書をすることで、人間がいかに多様な存在なのか。そして、価値観や考え方、人生、いろんな可能性があることに気づく。
何を読むべきか(P11)
読書は基本的に自分が読みたいと思う本を読めばいい。
ただ、それだけでは物足りないなら、人間や社会についての本質的な事柄が書かれている本を読むのがおすすめ。
具体的には血みどろの歴史を土壌にして誕生したヨーロッパの文学。
人間の暗部や権力、宗教。人間のダークサイドがこれ以上ないくらいのカタチで描かれている。
ヨーロッパの文学を通じ、歴史や宗教、人間について、深く考えることができる。
読書の意義(P15)
読書をすれば仕事に必要な知識やノウハウを学べる実用的な側面があるが、それだけが読書の意味ではない。
読書をすることで、実生活では経験できない他者の別の世界を仮経験できる。それによって他者への想像力を磨くことができる。
読書の意義はまさにここにある。つまり私達は本を読むことで、より自分以外の他者について、理解を深めることができる。
死ぬ気になれば状況は変わる(P36)
人生この状況をなんとかしたい。今の苦しみから抜け出したい。
そう思ったら心から覚悟すること。この状況を変えるためになんでもする。そんな強い覚悟をすること。
人は死ぬ気になればなんだってできる。逆に、気持ちがグラグラで固まらなければ、何一つ変えることができない。
売れるコンテンツの条件(P85)
売れるコンテンツとは、
1・オリジナリティーがあること
2・オリジナリティーがあるからこそ極端であり明確であること
3・人を引きつけ続ける癒着があること
この3つの条件が備わっている。
例)公文
公文独自のノウハウを持っている(オリジナリティー)+公文式の独自の教え方を貫いている(極端であり明確)+会員制になっている(癒着)
感情を動かす(P102)
人は感情の生き物。
感情が動かなければ人間関係は生まれない。誰かとつながりを作りたいなら、その人の感情を動かさなくてはいけない。
旅の本質(P172)
人生を変えたければ旅に出る。ではなぜ旅は人生を変えるのか?それは、旅の本質が、自分の貨幣と言語が通用しない場所に行くことだから。
つまり、今までの自分の価値観や常識が通じない場所に行くことによって、人は必然的に今までの自分を見直し、新しい自分に適応させなければいけない。
すると、今までの自己愛は崩壊し、裸の自分がさらけ出される。だから、旅をすることで人は、新しい自分に出会うことができる。
感想など
なぜ本を読むのか。読むことで何がどう変わるのか。著者の読書体験が印象的だった本。
多分、本の魅力にとりつかれた人というのは、多かれ早かれ似たような経験をしていて、本を読むことによって、ある意味救われているところがある、ということを実感します。
著者の場合は家庭環境や学校でのいじめ。
誰も自分を理解してくれない。孤独で安心できる人が周りにいない。だからひとりぼっちの自分を支え、助けるために本を読む。
すると、今見えているものが世界のすべてではないと気づく。人生まだまだ、捨てたものではないことに気づく。
そんな力があります。
ということで、少しでも心に引っかかった本は読んで損なし。ほんとうに偶然手にとった本が、まさに人生そのものを変える可能性があります。
この意味で読む後悔より読まない後悔。読書が欠かせない方に、一読をおすすめしたい本です。