いわゆる「正義マン」が有害な決定的理由とは。『「正義」がゆがめられる時代』の読書感想

「正義」がゆがめられる時代 (NHK出版新書 516)

人にはそれぞれ正義があるけれど、正義を人に押しつけてはいけない。

片田珠美著『「正義」がゆがめられる時代』(NHK出版新書 516)の読書感想です。

この本について

障害者虐殺事件など信じられないような事件が起こる現代日本で一体何が起こっているのか、その深層を解き明かそうとする本。

キーワードは「怒り」「コスパ」、そして「普通からの脱落」。今日本社会で何が起こっているのか、この本で考察することができます。

以下、本書の読書メモです。

はじめに(P4)

現代の日本では、自らの本音をむき出しにし、「正義」を主張することによって他者を攻撃することが行われている。

その背景にあるのは怒りであり、はけ口のない怒りを溜め込んでいる人々が、些細なきっかけで自分よりも弱い立場にある人達に怒りを向けるという、負の連鎖が続いている。

その原因は、効率主義、コスパ重視主義の世の中の風潮であり、普通に生きるのが難しくなっている社会状況にその要因がある。

男性は喪失体験に弱い(P21)

男性は、自分にとって大切なものを失ってしまうと、それを破滅的な喪失と捉え、暴走しやすい傾向がある。

つまり男性には打たれ弱いところがあり、失敗や喪失体験と適切に向かい合うことができないと、衝動的な行動を起こしてしまう可能性がある。

正義を振りかざす人々が増える社会的要因(P46)

自分は「正しい」と信じて他者を断罪する。そんな人々が増える社会的な要因。

1・怒りとルサンチマンが社会にうずまいでいる。(=怒り)

2・コスパ重視、効率重視の社会であること。(=コスパ)

3・普通から脱落すると、敗者復活が難しい社会であること。(=普通からの脱落)

「悪」に敏感な人々(84)

他人のウソや言動が気になって仕方ない、そんな人ほど、実は同じ要素を持っている。そして、それを持っている人に対して攻撃的になる。

人は自分が持っている「悪」を否定したい。だから自分にも「悪」があることに気づく変わりに、「悪」を持っている他人に矛先を向けることで、それに気づかないようにしている。

非常識なクレームの本質(P101)

土下座強要などの非常識で理不尽なクレームの背景にあるのは怒り。

おかしなクレームをつける人というのは、普段の暮らしで誰かから虐げられ、怒りを貯めている。それを、自分よりも弱い立場の人たちにぶつけている。

つまり怒りの連鎖こそが非常識なクレームの背景にあるもので、弱者叩きが本質にある。

コスパ至上主義の問題点(P130)

コスパ=効率→役立たないものはムダ→いらないものは捨ててしまおう→役立たない人は価値がない。

このようなコスパ至上主義の考え方が世の中に広がっており、何でもお金換算、損得で物事を考えようとする人が増えている。

そうなるとますます役に立つ、役に立たないで人が見られることになり、ますます人間の価値がコスパでジャッジされるようになってしまう。

普通が普通でない時代(P189)

今の時代は、今まで普通だった結婚が難しくなり、将来安心して働いていくことができるかどうかすら、不確かな時代になってしまった。

そんな状況のなか、「結婚は離婚や子育てなどリスクがあってコスパが悪い」ということで、結婚を選ばない人も増えてきた。

一つの会社で働き結婚して子どもを育てる。昔では当たり前だったことが、ますます当たり前ではなくなっている。

感想など

「障害者施設大量虐殺事件」や「店員土下座要求」など、様々な事件から日本社会のダークサイドを考察する本。

はっきり言って読んでいて気分が良い話ではありませんが、なぜ世の中理解できない事件が起ってしまうのか、生きている上で何となく感じる「違和感」について、考えることができます。

本書で取り上げられている問題点はコスパ社会。

何でも効率、損得で物事を考えるようになって、人ですらコスパで考える。そうなると役に立たない人間はダメ、価値がないと考えてしまう。

でも実際、「無用の用」という言葉があるように、役に立たないように思えることだって、どこかで必ず役に立ちます。

しかし今の社会が余裕がないのか、競争が激しすぎるせいなのか、まぁいろいろ疲れてしまう時代なのは確か。

このコスパ主義だけでなく、普通から脱落してしまうことへの恐怖もあると思います。

実際は、普通から脱落しても生きていくことはできるのですが、その術を知らない限りにおいては、「もう、俺の人生終わった・・・」と絶望してしまうのも仕方ないかもしれません。

就職試験で落ちるとか、就職先が決まらないまま大学を卒業するハメになるとか、それは相当な絶望ですよ、マジで。

格差社会と言われて久しいですが、そんな不安を抱えている人たちの怒りやルサンチマンがうずまいている、それが今の日本社会なのかもしれません。

これから日本はどうなってしまうのか、読後に多少の不安を感じた一冊でした。

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