『孤独病』の読書感想 – 寂しさを感じる日本人が増えている本当の原因

孤独病 寂しい日本人の正体 (集英社新書)

「寂しい」という気持ちは時に人を成長させる、ただし。

片田珠美著『孤独病 寂しい日本人の正体』(集英社新書)の読書感想です。

この本について

孤独をテーマに、個人、社会を考察している本。

孤独感を感じる日本人が増えているのか、結婚したがらない若者が増えているのかなど、世の中の変化と原因を考察、孤独感を解消するためのヒントが満載の内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

現代は孤独になりやすい時代?(P18)

現代人が孤独感にさいなまれる要因となっているものの一つが資本主義社会。

資本主義というシステムは、モノだけでなく、家事や育児など本来は人が無償で行なう全ての行為をサービスや商品に変えてしまう。

人は助け合いながら生きてきたが、資本主義が発達するにつれ、相互扶助の活動が商品として提供されるようになってきた。

それによって、どれだけサービスや商品とお金を交換できる力を持っているのか、それが人を測る物差しとなり、人それ自体が交換可能なパーツの一つとしてなってしまった

結果的に、人は自分自身をかけがえのない存在であることを感じにくくなり、それが孤独感を深める原因となっている。

人が自由を得た代償(P20)

かつて人は、地縁や地域に縛られ、コミュニティの一員として生きていくことを余儀なくされていた。

しかし、資本主義の発展とともに、人は地域を離れてお金を稼ぎ、生きていくことが可能になった。

結果的に、人はコミュニティの一員から個人単位の存在に分断され、自由を得る反面、孤独と向き合うことになった。

コミュニティに所属することは、束縛感や不自由さがつきまとうが、そのコミュニティにいる限り、周囲の人とつながることができ、守られることができる。

一方で、コミュニティから抜けだして生きていくということは、自由を得る反面、自己責任の生き方を背負い、孤独と向き合うことになる。

「人と一緒に暮らす」ということ(P23)

人と一緒に暮らす=自分だけのペースで生きていけないということ。食べること寝ること、いろんなところで自分の思い通りにはいかなくなる。

ともに暮らす人を受け入れられないということは、他者を異物認識して、自分の外へ出そうとしてしまうこと。自己愛の強い、潔癖な人が増えている証なのかも。

家が汚いと要注意?(P34)

家が片付いているかいないか、それは孤独を測るバロメーターの一つになる。

人の精神状態は住む家の状態に反映される。やたらとモノを集めたがる人は、孤独感を埋め合わせようとして、モノを集めてしまうのかもしれない。

汚い場所は心の荒みの反映で、部屋が汚い場合、心も荒んでいるサインなのかもしれない。

匿名社会と孤独(P41)

現代社会は匿名社会。

人は自分の存在を表に出さなくても、ネット等で、自分の思いや考えを主張することができる。

匿名の存在であることは、名前も顔も明かさず、ひたすら存在感を主張できるポジション。どこの誰なのか、特定されない点で孤独ではあるものの、言いたい放題できる自由さがある。

自分探しの危険性(P52)

人格というものは一つだけのものではなく、幾重にも重なりあっているもの。

仕事、プライベート、場所によっていろんな人格を出すのが普通のことで、「これだけが本当の自分」というものはない。

このことを理解しておかないと、「本当の自分」という青い鳥を探し求め続けて、底なしの泥沼にはまりこんでしまう。

傲慢な人は満たされていない人(P73)

人に対してやたらと傲慢に振る舞う人は、自己承認欲求が強いのに、それが満たされていない人。

「俺を認めてくれ」という気持ちが満たされていないからこそ、怒りやコンプレックスから、傲慢に振る舞ってしまう。

「人は理解し合えない」を前提に考える(P78)

「私は人から理解されない」と考えだしたら要注意。

もとから人と人が理解し合うことは難しい。人は自分のことさえ分かっていない。ましてや、他人を理解できるなど、考えない方がいい。

人付き合いは分かり合えないが前提。だからこそ、寛容になれて、人間関係で大らかにいられる。「人は理解し合える」とか、そのような期待は捨てた方が良い。

他人と自分は違う。意見も違う。意見が違うことを前提に、話し合うことが大切。

話す人より聞く人に(P85)

本心では、人は人の話を聞くよりも自分が話していたい。「自分が話たい」人が多いからこそ、「話を聞く人」になることはとても価値がある。

「いい人」に見られたい願望(P87)

いい人に見られたい=他人から嫌われて孤立したくないから

自分のなかにある基準でいい人を目指しているのではなく、他人の視点を気にしすぎているからいい人を演じてしまう。

しかし、どんなにいい人を演じても、必ずどこかでイヤな奴が登場、悪口を言われることもある。

大切なのは、自分の気持ちを抑さえて、良いキャラを演じるのも程々にする。結局、自分らしく自然に振る舞うことが、心の健康にも良い。

お金に執着する人(P133)

孤独でお金に執着する人は、子どものとき親から愛情を受けていなかったり、他人から強烈に裏切られた経験をしている場合が多い。

人に対しては厳しい目を向け、オールオアナッシング、ちょっとでも悪い部分が見えると、その人全体を悪く見てしまう偏った考え方をしがち。

人は結局、良い面も悪い面もある。人に完璧性を求めてしまうと、結局そんな人はいなくて、ますます孤独に陥ってしまう。

マイルドヤンキー的な生き方(P157)

地元で生まれ育ち、地元の仲間を大切にして、生活圏外のことに興味を持たない。そんな暮らし方をするマイルドヤンキー。

このような生き方は、かつての日本人がしてきた生き方であり、地域重視、周りの人間関係を大切にして、その中で生きていくのが、自然な生き方なのかもしれない。

感想など

ネットあり携帯あり、いろんな人と関わるチャンスが増えているにも関わらず、なぜ人は孤独を感じてしまうのか。

人々と現代社会を孤独というキーワードで読み解く本。

本書では、人が孤独になる原因に、地域社会の崩壊と資本主義社会という要因が挙げられていますが、それはすなわち、自由と束縛の問題です。

地元や地縁、縛られるものの安心した人間関係から抜けだそうとすれば、制約から自由になれる反面、一人になり、孤独になってしまう。

かといって、土地にしばられ、地域のコミュニティにしばられることは、地に足の着いた暮らしができる反面、そこでの縁に縛られてしまう。

どこかに属するということは、そこに縛られること。一方で、自由であることは、同時に孤独を引き受けること。

やっぱり、自由と安定は両立しないもので、結局は、必要に応じて、どこかでトレードオフしていかないといけないものなのかもしれません。

でも、もし比較的自由でありつつ、確かな縁を保てる関係があるのであれば、それが一番。放浪の末、いつかどこかの土地で、「根を生やす」のが自然なのかもしれませんね。

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