『他人の不幸を願う人』の読書感想 – 「人の幸せが許せない」というダークサイド

他人の不幸を願う人 (中公新書ラクレ)

「あいつが気に食わない・・・」という気持ちの背後にあるもの。

片田珠美著『他人の不幸を願う人』(中央新書ラクレ)の読書感想です。

この本について

「羨望」という人間のダークな部分に焦点を当てた本。

「あいつが気に入らない!攻撃して引きずり下ろしてやれ」という心理、「あの人が羨ましい、あの人が幸せなのは許せない!」など、人間のダークサイドを分析。

「人の不幸は蜜の味」となる理由を考察できる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

人の不幸を願う気持ちと嫉妬心(P4)

「あの人が羨ましい、それに比べて私は・・・」という嫉妬心がダークサイドを呼び起こす。

他人の幸福への羨望の背後には嫉妬心があり、だからこそ「幸福なあの人が気に食わない、不幸になればいい」という気持ちを呼び起こす。

他人の不幸を願う人は、満たされぬ思いを抱えており、欲求不満が強い人。満たされ、人生に満足している人は、わざわざ人の不幸を願ったりはしない。

羨望という気持ち(P19)

羨望という嫉妬の気持ちは、自分より幸福な誰かを目の当たりにして引き起こされる自己愛の傷つきへの怒り。

「私はこんなにも上手くいってない、でもあの人は上手くいっている、許せない!」という気持ちがあって、だからこそ、「上手くいっている人」に怒りを感じてしまう。

正論を振りかざす人々(P25)

「空気を読むこと」「正しいこと」を錦の御旗に掲げ自己正当化する人の背景には羨望の気持ちがある。

他人の幸福が我慢できず、受け入れることができない。妬ましい気持ちを消すには、他人の幸福を貶めて無価値化するしかない

だから、空気や正論を持ち出して、攻撃すべき理由を捏造する。

モンスターな人々が増えた原因(P44)

学校や病院、モンスターな人々が跋扈している原因は

1・「先生」と呼ばれる人々の権威の低下した。

2・ネットの普及により匿名でも学校や病院の不備や問題点をあげつらいやすくなった。

3・「弱者の立場なら何をしても許される」というような自己愛が誇大化した人々が増えたこと。

など、問題がある。

結果、日頃の鬱憤、惨めな気持ちを持っている人々が、学校や病院という権威にいちゃもんをつけ引きずり下ろし、打ちのめす「学歴や権威を殺したい症候群」が蔓延している。

「正義」を語る人は信用できない?(P47)

正義を振りかざす人の背景には怒りが隠れている。

「正しいこと」は人々の共感を得やすい。正義を口実に、自分の不満や怒りを偽装し、「悪い人」や「間違った人」を攻撃を開始する。

不祥事を起こした企業への「電凸」など、間違いを糾弾する行為が増えているらしいが、そのことは、今の日本の社会がそれだけ怒りに満ちていることを示している

羨望の正体(P52)

自分が頑張っても手に入れられない、でも他人がそれを持っている、そんなときに引き起こされるのが羨望という感情。

自分が価値を感じていてそれを欲しているが、どうしても手に入らない。欲しいという気持ちが強ければ強いほど、羨望の度合いは増し、嫉妬心も燃え上がる。

急に態度が変わる人(P64)

「貧乏で苦労していたとき、いろいろ手助けしてくれた人がいた。でも、人生が上手く行きだしたら、急に冷たくなって、疎遠になってしまった。」

「非正規で苦労していたとき、正社員の友人が食事をおごってくれたり、親切にしてくれた。でも、私が正社員になったとたん、私のことを敵視するようになった。」

このような具合、こちらが苦労しているときに親切で、順境になった途端に態度が変わる人というのは、実はこちらのことを見下して優越感を感じていた可能性がある

親切にしてくれた人は、こちらに「あわれなあいつを助けてやろう、あいつは自分より下だ」という優越感を感じていた。

ところが、「下」だった人の人生が上手くいくようになって、自分と「同等」になったのが許せない。だから、態度が変わる。

うっかりミスほど本心が出る(P73)

「ある人と会う約束をしていた、でも当日すっかり忘れていてドタキャンしてしまった。」

このようなうっかりミス、しくじり行為にこそ人の本心が出る。

本音では会いたくない、行きたくないと思っているからこそ、「会う約束を忘れる」という防衛機制が働き、約束を忘れてしまう。

人には、このような心理的なメカニズムがあり、無意識の行動を見てみると、そこに本音が出ていることに気がつく

羨望の3ステップ(P76)

羨望が表に出てくるまでの3つのステップ。

1・「羨ましい」と感じていても、それを表に出さない。嫉妬心を隠す段階。

2・嫉妬心が表に出てくる。隠そうとしても隠せない段階。自分からは嫉妬している相手に攻撃をしかけないが、誰か別の人が変わりに攻撃すると、それを嬉しく感じる。

3・嫉妬心が完全に出てくる。嘘話をでっち上げて嫉妬する相手を中傷したり、罠にハメたりする。

格差社会が人々の嫉妬心を刺激する(P121)

今の時代、正社員非正社員という待遇の違いによって、格差がどんどん広がっている。

同じような能力、学歴を持っていても、成功の格差が広がっている今、そのことが人々の自己愛を傷つけ、羨望を刺激している。

格差が固定、社会が右肩上がりに成長できない閉塞感、敗者復活ができない日本社会の問題が、人々の不公平感が募っている原因になっている。

幸せに見える人も幸せではない?(P152)

自分の心の中に嫉妬心が湧き起こってきたら知っておきたい「隣の芝生は青い」という真実。

どんなに幸福そうで、何もかも持っているように見える人でも、持っているものに応じて、マイナス面を持っている

物事にプラスを持っている人は、マイナスを抱えている人。金持ちには金持ちの苦しみがあり、成功した人には成功した人の苦しみがある。

世の中は「○○を得ればハッピーエンド」ということはなく、「○○」を得たからこそ苦しむことがある。

多面的に物事を見て、嫉妬心というパワーを、健全な自己成長・自己啓発に向ける。

感想など

タイトル買いした本。

嫉妬心という、表では語りにくい、しかし人間関係の中で存在するドロドロしたもの。このことを理解せずには、人の世の中を生きていくことはできません。

この意味で、本書は「嫉妬学」を勉強できる格好の本だと思います。

昔、成功した人の本を読んでいたら、「成功したら謙虚になれ、上手くいったことは皆様のおかげです、失敗したら私の努力不足でしたと頭を下げろ」というようなことが書かれていました。

そのときは、「?」と思って、その理由について考えていたのですが、谷沢永一さんの『嫉妬する人、される人』などの嫉妬学の本を読んで納得。

『他人の不幸を願う人』を読むと、嫉妬のメカニズムが理解でき、良くも悪くも、この世の中は妬み嫉みでできていて、「上手くいく人」がいれば、「上手くいく人を引きずり下ろしたい人」もいることが分かります。

この意味で、『他人の不幸を願う人』は人間社会を理解する実学的な本だと思います。

個人的には、「いつも笑顔でいましょう、ポジティブでいましょう、感謝しましょう」というライトサイド(悪く言えば綺麗事)を全面に出した本より、この本のような、人間のダークサイドを読み解く本の方が、役に立つと思いました。

人の「嫉妬」という感情に無策でいると、それによって思わぬときに足を引っ張られることも。だからこそ、無用な嫉妬心を刺激しないための技術が必要なのかもしれません。

人生で無用なトラブルやいさかいを避けるため、人間のダークサイドとその防衛法、理解しておきたいものです。

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