これがエコノミストとしての豊臣秀吉。『経済で読み解く豊臣秀吉』を読む

経済で読み解く豊臣秀吉 東アジアの貿易メカニズムを「貨幣制度」から検証する

織田信長亡き後、戦国の世を統一した太閤豊臣秀吉。

彼が政治家としてだけでなく、エコノミストとしてどのような考え方を持っていたのか。

それが分かるのが本書、上念司著『経済で読み解く豊臣秀吉』(KKベストセラーズ)です。

この本について

本書は、豊臣秀吉が実施した経済政策をもとに、秀吉が一体どのような世の中を考えていたのか。それが分かる内容になっています。

秀吉が優れていたのは政治力だけにあらず。一人のエコノミストとして現実的な視点を持ち世の中を改革していったこと。

本書を読めば、そのことを分かりやすく理解することができます。

以下、本書の読書メモです。

日本の統治作法(P25)

日本は天道思想の国。

天の道を進み、決してその道を踏み外すような下道をしてはいけない。それに逆らうものは統治者たり得ず。失脚する運命にある。

信長と預治思想(P39)

信長は天下統一事業を進めていく過程で、家臣にはそれぞれの土地の領地を与える一方、安土に家臣を住ませるという、預治思想を実践した。

これはいわば、今までは常識であった家臣団に本領を安堵するのではなく、大名が家臣の能力を査定、評価し、その能力によって領地領民を「預ける」という思想であった。

預治思想を実践することで領国の石高を正確に把握し、兵農分離を進めることができ、より強大な領国統治を目指した。

しかし信長はその途中、本能寺の変で倒れた。

プロダクトアウトとマーケットイン(P194)

商品販売戦略においては、プロダクトアウトとマーケットイン、2つの考え方がある。

プロダクトアウトとは商品ありきの考え方。良い商品を作ればそれが市場に受け入れられ儲かるという考え方。

一方マーケットインとは、消費者が欲しているものを作れば儲かるという、ニーズありきの考え方。

現在は完璧に後者の考えが重要になっており、商品ありきの販売戦略は難しい現状がある。

勝者の呪い(P197)

秀吉が天下統一後、明国の平定といったおかしな方向に走ってしまったのは、秀吉の成功体験が原因。

秀吉は領土拡張し、「こうすれば勝てる」という方程式を身につけた。

それがいつでもどこでもうまくいくと勘違いした結果が、明国への出兵と国内の疲弊という失敗につながった。

過去にうまくいった成功体験が自分の身を滅ぼす呪いとなることは少なくない。これを勝者の呪いという。

秀吉はこの勝者の呪いによって、家を滅ぼす原因を作った。

独裁は滅亡の始まり(P227)

豊臣政権がうまくいっていたのは、秀吉に秀長、そして千利休。それぞれ人間関係がバランスが取れていたとき。

3者の関係のバランスが取れていたから、全国の大名たちとの派閥関係も安定していたが、秀長の死によってバランスが崩れ秀吉が独走するようになる。

それが豊臣家の滅亡へと向かっていく。

勝ちパターンにこだわらない(P245)

人は過去の成功体験によって成功できるが、それにこだわりすぎることによって、未来で失敗する。

秀吉はまさにその典型で、一つの勝ちパターンにこだわりすぎてしまった。

時代、状況は常に変わり、今までうまくいっていたやり方が、まったくうまくいかなくなってしまうことが起こりうる。

この意味で、過去の成功体験にこだわるのは非常に危険。昔がうまくいったからといって、これからうまくいく保証はない。

常に、新しい方法を模索することが大切。

感想など

個人的には羽柴秀吉は好きですが、豊臣秀吉はあまり好きではありません。

なぜ上昇志向が強いにもかかわらず人に好かれ、応援してきた羽柴秀吉が最終的に暴君の豊臣秀吉になってしまったのか。

それを考えると、権力者ならではの難しさがあるのかもしれません。

本書では秀吉の経済政策をもとに、秀吉のスゴさ、そして失敗を明らかにしていきます。

そして秀吉のどのような行為が結局は子孫に災いをもたらすことになったのか。それを知ることで私たちは、現在に生きる教訓を得ることができます。

この意味で歴史はまさに未来に役立てるための知識。秀吉が好きでもそうでない方でも、歴史は今を知るのに役に立つ。

そのことが実感できる一冊です。

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