こんな人生を送り人は、きっと豊かで幸せに違いない。
考えること、学ぶ喜びを説く古典的名著、P・G・ハマトン著『知的生活』(講談社学術文庫)の読書感想です。
この本について
自分の人生を、実りある豊かな生活にしていくにはどうしたらよいか?
精神を開拓し、学びのある知的な生活を送ることで、人生をよくしていこうと説くのが本書『知的生活』です。
研究や勉強、人生を豊かにする精神的生活を送る上で大切な心構え、メンタルの訓練や実生活のアドバイス、教育論など、「知的生活についての考え方がまとめられている本です。
以下、本書の気になった内容の要約です。
世間一般の習慣よりも大切なこと(P32)
生活をする上で参考にすべきなのは、世間一般に「良い、した方がいい」というスタンダードではなく、自分自身の体が要求することを第一に考える。
人それぞれ、体の作りが違うのだから、健康法にしろ何にしろ、自分の体基準で取り入れた方がいい。
自分の活動の妨げになるようなことは、例え世間から良いと思われていても、やる必要はない。
学ぶことについて(P110)
幅広い知識を持つことが美徳とされる世の中だが、幅広い知識ではなく、狭いが深い知識の井戸を掘ること、一つのことを極めることも大切。
知識量を云々するだけでなく、学ぶことによって起こる変化が大切であり、結局は精神性の向上が大切。
研究することがあれば、他のテーマに浮気しない(P119)
あれもこれも、器用貧乏になれば、どの知識も錆びついてしまい、結局役に立たない。
何かを探求するのであれば、愛着を持つ一つのことを、百姓が畑を耕すように、入念に探求するのが理想。
教養を身につけるなら時間の管理を(P151)
社会人になることは、社会上の常識や、職業上における様々な義務がつきまとう。
そこで、教養を身につけるためには、時間を作りだす必要がある。時間を節約して時間のムダ使いをしてはいけない。
結婚について(P318)
結婚とは、今まで進んでいた人生の進路をガラリと方向転換するようなもの。
結婚後、独身時代と同じような生活を送る人はおらず、知的生活を送る上で、結婚生活が重大な危機になる可能性もあり得る。
結婚すれば、第一にお金や家族のことを優先する必要があるため、そのための代償として、精神的な活動が犠牲になるリスクがある。
朝から晩までお金のために働いて、それにがんじがらめにされてしまうと、お金に人生をとらわれてしまう。
感想など
上智大学名誉教授の渡部昇一先生関連の本ということで、興味を持った本。
500ページ以上ある分厚い文庫本で、毎日コツコツ読み続け、二週間ほどで読了。100年以上前に書かれた本ですが、その内容の普遍性に驚かされます。
大学などで研究者を目指す人のための本だと思いますが、内容は極めて普遍的。
勉強するための精神的態度を始め、金銭の問題、恋愛の問題、具体的で実際的なアドバイスが次々と出てきます。
個人的に面白いなと思うのは、『知的生活』はイギリスの貴族社会の時代に書かれた本なのに、現代人にも共通する問題やテーマが扱われているところです。
勉強に対する考え方もそうですし、お金や労働、そして結婚など、我々現代人にも役立つアドバイスや考え方が満載です。
結局、社会構造や時代がどうであれ、人間というのは太古から同じような課題や悩みを持っているものなのかもしれません。
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