カリスマ教師の教育論『いま、子どもたちに伝えたいこと』を読む

いま、子どもたちに伝えたいこと

荒れた学校を立て直したカリスマ教師の教育論、原田隆史著『いま、子どもたちに伝えたいこと』(ウェッジ)の読書感想です。

内容について

本書は、教師の世界では知らぬものがいないほどのカリスマ、原田隆史先生の著書。

原田先生は大阪市内の公立中学校に20年間勤務し、荒れた学校を立ち直らせたり、日本一の陸上部を作り上げるなど、様々な実績を持つカリスマ教師。

大阪の松虫中学校での実績(日本一を12回、中学校日本新記録、中学校日本最高記録を誕生)はまさに伝説的。

そんなカリスマ教師の教育論が本書。原田先生が教師を目指した理由、理想の人間像、親と子どもの関係、いじめの問題など、教育に関する原田先生の考え方が述べられています。

以下、本書の気になった内容の要約です。

クラスの運営に必要なこと(P2)

クラス内のルールを守らせる厳しさと、コミュニケーションを円滑にして明るく楽しいクラスにする優しさ。この原則は会社組織でも同じ。

学級を運営していくための子どもたちの関わりと、理想の会社を作るための大人たちとの関わりはほぼ変わらない。

備考

日本の学校制度は組織人育成を第一の目的としたシステムになっています。

そのため、特定の能力を育てる教育ではなく、平均的な能力を伸ばし、集団のなかで適切に行動できる人材育成が根本的な背景にあります。

例)

・先生の話を聞いてそのとおりに行動する→会社で上司の言うことを聞き、そのとおりに動く(組織は上意下達が基本)

このため、学校教育に馴染めない人は、もしかしたら、会社員や公務員といった、組織に属して働く生き方が向いていないかもしれません。

子どもを信頼してあげること(P22)

子どもがいろんなことでつまずいていても、「この子はできるようになる、大丈夫だ」と全面的に信頼してあげることが大切。

物事には時期があって、子どもを信じ、時期が来るの待ってあげることが、教育の原点。

在るべき姿を描く(P24)

荒れた子どもを変えていくのに、特効薬なし。できるのは、「こう在って欲しい」と思う像を描いて、忍耐強く関わっていくこと。

リーダーに相応しい人間とは(P33)

リーダーに向いているのは、意外にも自分のうちに弱さや劣等感を抱えている人

劣等感があるからこそ、弱さがあるからこそ、人の気持ちに敏感になれる。何でもでき、失敗のない完璧な人間は、案外リーダーに向いていない。

人を動かすなら口ではなく行動で(P86)

あれこれと口で教えても、人は変わらない。それより、まず自分が動く姿を見せることが大切。言葉ではなく行動で示す。

家族経営という考え方(P101)

家族は一つのシステム。

父親、母親、子ども。それぞれが1つのシステムのごとく、絶妙なバランスで関わりあっている。

そのため、子どもの不登校などの問題の背景には、子どもの問題だけでなく、親が原因になっていることも。

そこで、家族を1つの集団としてとらえ、父親や母親、家族が幸せに暮らせるよう、それぞれ役割を果たすことが大切。

親は子どもに妥協するな(138)

子どもの教育において、基本的な態度やしつけは絶対に妥協してはいけない。

大人への口の聞き方、近所の人へのあいさつ、ほんの小さなことでも、「ここだけはしっかりしろ!」というけじめをつけることが大切。

管理人注

一時期、「子どもの個性を大切にしよう、子どもを一人前の人間のように扱い、子どもの考えを尊重しよう」という美辞麗句的教育論が注目を集めました。

それで、そのように育てられた子どもはどうなったか?

調べてみると、結局教育は理想論ではダメで現実論が大切なのだということを、まざまざと思い知らされます。

いじめについて(P198)

学校には、いじめが起きやすいクラスとそうでないクラスがある。

いじめが起きやすいクラスは、教師と生徒がなぁなぁで、ルールやけじめが守られていない父性のないクラス。

教師が生徒に対して白黒つけられないので、クラスの環境が混然としてくる。

結果、そのクラスは居心地の悪い不安を感じやすい環境になってしまい、他の生徒を攻撃することで自分を守ろうとする生徒が出てくる。

管理人注

この本では、いじめ問題の基本的な考え方が書かれていますが、この本に書かれていない(もしくは意図的に書いていない、書けない)問題もあります。

クラスの環境は、そこに入学してくる生徒(+保護者)の要因がほとんどです。

公立の学校においては、教師が毅然とした対応ができる状況にない地域もあって、クラス人数30人のうち、1人でもやっかいな生徒がいるだけで、クラス全体がダメになってしまうことがあります。

なぜかというと、問題生徒の親のなかには、注意しようにも注意しようもない背景を持つ保護者(数字3つの関係の人とか、宗教関連、特定の思想を信奉している人など)がいると、それだけでハードルが上がります。

教師が問題生徒を何とかしようと対応すると、とてつもない嫌がらせを受けたりします。

しかも、根本的な解決手段が教師にはないので、「悪貨は良貨を駆逐する」という状況になりやすいのが公立学校の環境です。

特に、昔からの事情を抱えている複雑な地域、特定の思想を持つ人が多い地域などでは、ソーシャルワーカーさんも警察もなかなか動かず、更に問題解決が難しくなります。

教師が毅然とした対応ができない→中間層の生徒がワルに流される→環境がますます悪くなる

という悪循環で、教師一人の力量ではどうしようもない状況になってしまうことがあります。

いじめられっ子がいじめっ子(親がやっかいな部類の人々)に反撃した途端、地域ぐるみで嫌がらせを受けたニュースがありましたが、「相手と関わったら負け」というケースもあります。

なので、万が一我が子がいじめの被害にあってしまい、解決が難しいのであれば、転校が一番現実的かもしれません。

ちなみに、教師の中にも、特定の思想に狂信されている方々がいて、その偏りが大きい学校は、確実に荒れてます。

そして、一般的な家庭の生徒には、居心地の悪い学校になること間違いありません。

感想など

大阪の中学校に20年勤務、様々な実績を残されているカリスマ教師がどのような考え方で現場に立っていたのか、原点の教育論は何なのか、分かりやすく理解できる一冊。

私も昔は教師を目指していて、講師として荒れた学校に勤務した経験があり、その壮絶さを知っているので、20年も勤務され、しかも実績を残した先生のスゴさに畏敬の念を感じます。

荒れた学校の異常さは、本当に声を大にして問題的したいくらい異常。「こんな学校で働いていたらすぐ早死できる」と言っていいほど、私が経験した学校は犯罪の巣窟でした。

授業崩壊や器物損壊、対教師暴力、校内喫煙は当たり前。

毎日火災報知機がなり、常識では考えられないような異常事件も多発。職員室が占拠されることもあり、まさに無法地帯。

今でも、その学校と関わったことを後悔するぐらい衝撃的な環境でしたが、そのおかげで、どんな学校が荒れるのか。自分の子どもを公立学校に通わせるならどうするか。

良い勉強になりました。

教師は地域と密着する仕事なので、学校に勤務すると、自然にその地域の実情が理解できます。

「家を買うなら学区で選べ!」

「子育てには最悪!治安の悪い町 ○つの特徴」

というようなネタなら、どんどん書けます。

それにしても、現役教師の話はいろいろ耳に入ってきますが、今では小学2年で学級崩壊など、「これは私立人気が加速するのもうなずけるな」という話は日常茶飯事。

昔ながらの、落ち着いてのんびりできる学校というのは、もはや存在しないのかもしれません。

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