世の中には三流のオッサンが溢れ、彼らによって世の中をより良くしていく一流の人材が潰されて、社会がダメになっていく。
そんな衝撃な主張がこちら。山口周著『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』(光文社新書)です。
この本について
本書は、「多数派」である悪いオッサンが良い大人を引きずり下ろし、世の中で様々な悪い行動をした結果、今の閉塞した日本社会を作った元凶である現状を主張。
その上で、どうすれば悪いオッサンたちが牛耳る世の中で生きていくことができるのか。生き抜くための処方箋を提供している本です。
話はいろいろ過激ですが、ここにオッサンたちに抹殺されず、世の中を生きるヒントを見つけることができます。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P10)
本書でのオッサンとは、いわゆる中高年の男性ではなく、
1・古い価値観に固執し、新しい価値観を拒否する
2・過去の成功体験に執着し、既得権をガッチリ守っている
3・序列、階級意識が強く、目上のものにはしっぽを振り、目下のものを足蹴にする
4・他者に不寛容で排他的
この4つの特徴を備えた人々を指す。
日本最後の幻想世代(P19)
1950年代~1960年代に生まれたオッサンは、日本の成長幻想を信じている最後の世代。
彼らはいい学校を出ればいい人生を送れるという幻想を教え込まれ、そしてその生き方ができたギリギリセーフの時代の人。
彼らはその幻想を信じて現役から退場できた幸運な世代であるがゆえ、自分たちの成功体験こそ絶対に正しいと信じている。
そのため、今やって来ている日本の現実を正面から見ることを拒否している。彼らが現役世代の足を引っ張る「老害」となっているのが世の中の現状。
現代の物語(P26)
いい学校を出ればいい会社に入れていい人生を送れる。そんなかつての物語の次に登場した幻想がグローバル資本主義。
これはごく一部の勝者と残りの敗者で構成される残酷な物語。
それはいわば実力主義の下剋上社会の物語であり、人々は実利。実用、そして個人の成功を追い求める社会へと導いた。
三流が一流を排除する理由(P39)
世の中は圧倒的に一流の人間よりも三流の人間が多い。
三流の人間が会社で増えれば、数の力で三流が抜擢され出世する。すると三流は、自分の地位を脅かす一流を保身のために排除する。
その後自分と同じ三流の人間を上に引き立てる。結果、会社のトップは保身に長けた三流に牛耳られることになり、そして会社は崩壊していく。
これは二流も同じで、権力を持った二流の人は、自分の地位を脅かす一流を排除、抹殺する。これは、過去の歴史から繰り返されてきた世の中のお約束。
二流と三流によって固められた組織に、一流の居場所はない。
オピニオンとイグジット(P56)
これからの時代のカギを握るのは、80年代以降に生まれた若い世代。
いつの時代も、既得権益者を倒して新しい時代を作ったのは若い人たちだった。
オッサン化した権力者を倒す方法としては、
1・オピニオン→おかしいことはおかしいと声をあげる
2・イグジット→権力者の影響から脱する
この2つの方法がある。
上に劣化したオッサンがいて、理不尽で非合理な命令を押し付けてくる。そういう相手には従属せず、おかしいことはおかしいと主張。
受け入れられないことはイグジットして、オッサンたちの影響から抜け出す。これが重要な反抗手段。
日本組織が劣化していく理由(P76)
日本の組織は本質的にどこも、官僚組織。上へ行けば行くほどポストは限られ、脱落者が出る仕組みになっている。
そのため、上にいけなくなった人間はやる気をなくしダメになり、飼い殺しをされてしまう。これが組織の空気に影響を及ぼし、組織に停滞感をもたらす。
一方アメリカの場合、クビになるときはあっさりクビになるが、転職して人生逆転が狙えるので、日本ほど実は、働きがいがある。
出世と人格の関係性(P101)
社会では一般的に、成功した人。高い地位を手に入れた人を人格者と考えるが、出世と人格に関係は認められない。
むしろ、自分勝手な人や性格が悪い権謀術数に優れた悪いヤツの方が出世しやすい。この意味で、出世した人=良い人とみなすのは、非常に危険。
「年長者ほど優れている」という幻想(P115)
人生長く生き、年長者となっている人は、社会で様々な経験を積み、人格的に優れている。
そんなイメージがあるが、これからの社会では年長者だからといって、無条件に尊敬されることはない。
年長者、若者関係なく、今後はその能力。本当の人間性によって人物本位で評価される時代がやってくる。
若者にチャンスを(P150)
停滞している組織の決定的特徴は、重要なポストが無能なオッサンに独占されていること。
日本は人材育成という面で完全に失敗しており、若者にチャンスが与えられにくい組織風土が出来ている。
今後、組織が生き残れるかどうかは、本当に才能がある若者を活用できるかどうか。そこにかかっている。
20代と30代への提言(P163)
今、若者世代に属する人でも、自分の可能性を発揮するための努力をせず、世俗に従属する気概のない生き方を続けるようであれば、やがてはゾンビオッサンに成り果てる。
未来に大志を持ち、オッサンになりたくない人は知識や教養を磨き、自らの人間性を高める努力が必要。
これからの時代、本当に生き抜くことができるのは、常に学び続けて、自分を高めることができる人だけだから。
安定と不安定(P187)
これからの時代は、本当に安定した人生を生きるためには定期的に自分から新しい行動、変化を起していく必要がある。
新しいことに挑戦することは不安定になるが、不安定になるからこそ安定することができる。
逆に、安定ばかり求め、自分から変化しようとしない人は、ますます不安定になっていく。
感想など
オッサンとはいわゆるおっさんにあらず。変化を拒み、自分たちだけで美味しい汁を吸い、自己保身のために周囲に悪影響を与える人たち。
彼らの餌食にならないためにどう生きるべきなのか。どうやって激動の時代に適応できる自分を目指すか。
社会分析+自己啓発的な内容が印象的な本でした。
まぁ言い方はあれですが、三流のオッサンたちの保身論については納得できる話が多いのが正直なところ。
既得権という言葉は強烈ですが、結局世の中、誰が得をするためには誰かが損をする。そういう仕組が往々にしてあるものです。
それに気づかず、誰かのために利用され続ける人生を歩むのか。それとも自分の頭で考えて自分で最高の環境を求めるのか。
本書はその気づきとなる話が満載です。
全ての世代の方におすすめできる本ではないですが、20代30代。若い世代の方は本書から得られる刺激が、人生をよりよくしていくための力となるかもしれません。