歴史から学ぶ国家の興亡。日本の未来は歴史から予想できる!?
渡部昇一、本村凌二著『国家の盛衰 3000年の歴史に学ぶ』(祥伝社新書)の読書感想です。
この本について
上智大学名誉教授の渡部昇一先生と、古代ローマ史を専門とする早稲田大学特任教授の本村凌二先生の対談本。
「国家の繁栄と滅亡」をテーマに、古代ローマ、中世のスペインやオランダ、近代のイギリス、そして現代のアメリカと中国、歴史を振り返り、覇権国家がどのように生まれて衰退していくのかを考察。
歴史を振り返りつつ、今後の日本はどうなっていくのかを考えていく、刺激的な内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
覇権国家の定義(P24)
覇権国家=同じ文明圏における最強の国家。武力を背景に、近隣国家から富を収奪、それによって繁栄する国。
覇権国家の基本は軍事力と経済力(P28)
覇権国家は、強い軍隊を背景に領土を拡大。得た領土を持続発展させるためには、軍事力と経済力が必要。戦争と経済に強い国が覇権国家となる。
海戦で敗れた国は没落する(P74)
国家の勢力を維持するためには、海上覇権が必要不可欠。
歴史を振り返ってみると、大航海時代にイギリスに敗北したスペイン、日露戦争で日本に敗れたロシア、太平洋戦争でアメリカにミッドウェー海戦で負けた日本。
海上覇権を失った国は、ことごとく衰退している。
諦めない国民性が強い国を作る(P87)
ローマの軍人の話。
ローマは度重なる戦争で、何度も敗北を経験した。しかし、敗北しても諦めることなく、粘り強く立ち上がり続けた。
勝てない相手にも何度も戦いを挑み続け、最後には勝った。諦めない、粘り強い精神が、ローマの強さの秘訣であり、ローマが世界最大の帝国になった理由だった。
国は中心部からダメになる(P114)
国家の消滅は中心部の力が失われることから始まる。中心部が力を失い、求心力が失われ、最後には滅亡する。
絶頂期に衰退の芽が現れる(P168)
歴史上、どの覇権国家も、一番繁栄している時期に衰退の芽が生まれている。繁栄を極めた国は、繁栄のおごりから規範やセルフコントールを失い、徐々に坂道を転がり落ちていく。
アメリカについて(P186)
アメリカは、ヨーロッパの白人が作った国家。
ローマの影響を受けた国家だが、ローマやヨーロッパなど、伝統国が持っていたヨーロッパの伝統的な精神や価値観は引き継がれていない。
アメリカは寛容性や騎士道精神などの精神的な価値観を持っておらず、相手を敵か味方かの2つに分け、敵と判断した相手は、容赦なく虐殺していく傾向にある。
「善悪の二元論」的な価値観がアメリカの特徴。
アメリカは戦争で繁栄した国家の典型(P191)
現代の覇権国家であるアメリカは、軍事力と戦争を背景に台頭。1776年の建国以来、アメリカは戦争に負け知らずで、戦争が起こる度、勢力を拡大してきた。
アメリカが勢力を拡大する背景には強い軍事力があり、軍事的な力が、アメリカを覇権国家たらしめている要因になっている。
産業の空洞化で利益を得る人と損をする人(P232)
世界のグローバル化が進み、国内で製品を製造するより、国外で製品を製造する方が儲かるようになった。
結果、アメリカでは産業の空洞化が進み、メイド・イン・USAのブランド力は失われた。この流れは日本も同じで、メイド・イン・ジャパンのブランドも、急速に失われつつある。
儲けているのは国内を見捨てて海外の安い工場で製品を製造する企業。その影響を受けて、国内で働く人々は儲からず、置いてきぼりを食らっている。
感想など
ワクワクしつつページを読み進め、一気に読了。
「国家の繁栄と衰退」という壮大なテーマで、過去の覇権国がどのように繁栄して衰退してきたのか、なぜそうなるのか、分かりやすく理解することができました。
古代ローマやオランダ、スペイン、イギリス、アメリカ、様々な国が登場しますが、一番重要なのところは、これからの日本の話。
「過去、繁栄してきた国はこうやって避けて衰退したが、日本はどうなるのか、どうすべきなのか」を考えるのが、この本の一番のテーマだと思います。
歴史という視点で日本という国家を考えると、敗戦後から繁栄を経験、衰退している日本がこれからどうなっていくのか、この本を読むことで、方向性が見えてきます。
とても有意義、将来のことを考えるための勉強をさせてもらった素晴らしい本でした。