お金とは権力。
島崎晋著『「お金」で読み解く日本史』(SBクリエイティブ)の読書感想です。
この本について
「お金」という視点で日本史を振り返る本。
結局いつの時代も重要なのはお金であり、お金とは常に権力と結びついている。本書を読めば、その当たり前のことを、改めて確認することができます。
以下、本書の読書メモです。
古墳について(P20)
古墳=富と権力を顕示するための象徴。1つの古墳を作るだけでも、現代で言えば100億単位のものすごいお金がかかる。
重税の平安時代(P38)
「国風文化」など優雅なイメージがある平安時代だが、実際は貴族だけが豊かに暮らす庶民には暗黒の時代だった。
農民は一生重税で苦しみ、吸い取られた富は、貴族たちの生活のために使われた。
特に藤原氏の摂関政治時代はまさに暗黒で、貴族たちは彼らの権力の旨味をもらおうと赴任地の農民たちに徴税を強化。
賄賂のための資金作りに励んだ。
賽銭の始まり(P56)
賽銭の習慣は室町時代から。貨幣経済の発展により、権力者が自社に寄進をすることができなくなったため、寺社のスポンサーは激減。
新しい収益の柱を作るために考え出された仕組みが賽銭。「うちにお金をチャリーンとやればご利益が出ます」的な話を流布し、賽銭を庶民に流行させた。
なぜ江戸幕府は滅亡したか(P124)
明治維新で江戸幕府と薩長の戦いにおいて明暗を分けたのは結局のところ経済力。
薩長は密貿易や藩政改革によって経済力を強化。それによって新しい武器を入手し、軍事力を強化することができた。
しかし江戸幕府は改革が後手に周りすべての改革が中途半端。結局滅亡するまで、抜本的な改革をすることはできなかった。
「石の上にも三年」が死語になったとき(P194)
日本人の労働感が破壊されたのはバブルのとき。
サラリーマンの金銭感覚が狂い、転職が奨励され、日本人は嫌なことがあれば我慢せず、すぐに転職した。
それができるほど、労働者的には優遇された、美味しい時代だった。
現代の格差(P208)
現代日本において、富裕層と貧困層における顕著な格差は教育。
富裕層は努力こそが大切だと信じて自分の子どもの教育にお金を使う。その結果、子どもは名門大に入り社会的に成功。経済的に豊かになる。
一方、努力に否定的で何事もあきらめがちな貧困層は子どもにお金をかけず、教育に興味を持たない。だから貧困層の子どももまた、貧困層になる。
両者を分ける根本は、結局のところ教育への意識。
感想など
「お金」をキーワードに淡々と歴史を振り返ることで、改めてお金とは何なのか。その力とは何なのか。読後に考えてしまう本でした。
結局、いかなる崇高な思想を持っていたとしても、現実において地に足がついていなければ、それはただの空想で終わってしまいます。
だからこそ、現実を変えていく力を持つためにはお金の力が必要不可欠。
夢を語る。人生で理想を語る。それならばまずお金の話。つまりは歴史も人も、結局必要なのは、いつの時代も同じこと、という話です。