10代の頃、今いち「ピン!」と来なかった本を大人になって読み返してみると分かること。
武者小路実篤著『人生論・愛について』(新潮文庫)の読書感想です。
はじめに
本屋で新刊をチェックしていると、文庫コーナーで学生時代に読んだ武者小路実篤の『人生論・愛について』を発見。
この本を初めて読んだのは16歳、高校生の頃で、正直「なんかよくわからないけど、いろいろ堅苦しいな」と当時は「ピン!」とは来ませんでした。
それで一度は素通りしたものの、何となく気になったので思い切って購入し、再読してみることに。
それで一通り読んでみたのですが、堅苦しい印象は当時と同じながら、そうか、「ようやく意味が分かったぞ!」というような発見がいろいろあって、新鮮でした。
大人だからこそ味わい深い名言が満載!
例えば、P43で書かれているお金のこと。
この本では、お金について次のように書かれています。
金は正しいからもうかるとはきまらない。不正をしたからもうかるという場合もあるのだ。
~略~
人間にとって大事なのは金もうけではないのだ。
金がありすぎることはむしろ人間を堕落させやすい。金をもうけることがうまいということはその人の自慢にならない。
その金をよく生かすということは自慢になる。そして金をもうけられないことは恥にはならないのだ。
いい生活をしない、いい仕事をしないということは恥になる。
P43ー44
実学的な話はもちろんのこと、愛についての名言も満載。
恋愛なぞは、一人の人が恋人を得れば、その同じ人を恋している人は失望しなければならないが、それは当然のことである。
お互いに愛しあい、子を生み、共同して子を育てることを意味しているのだから、自分を愛してくれない異性を求めるものは、求め方がまちがっている。
いくら未練があるとしても、自分に資格のないことはあきらめねばならない。
P51
多分、人生には、自分が人生でいろいろ実体験を積むことによって、より理解できることがあると思います。
自分が経験したことがないこと、人から聞いたことはただの観念であって、そこにリアルな何かはありません。
しかし、年を取り、社会でいろいろ経験することによって、昔は分からなかった人の話や経験が、より深く理解できる。
この本を読んで、そんなことを実感します。
最後に
ということで温故知新。昔読んだ本で、今いちピンと来なかった本でも新しく読み返せば、そこから驚くべき学びがある。
そのことに気づけた本でした。
武者小路実篤の人生論は、若者時代に多くの人が手に取る本ですが、大人になって読み返してみるとまた、味わい深いです。
10代の頃この本を読んで今いちピンと来なかった方も、ぜひ機会があれば、読み直してみると、いろいろ発見があるかも。