男は女で、いともかんたんに人生が狂う。
『悪女入門 ファム・ファタル恋愛論』(講談社現代新書)の読書感想です。
この本について
フランスの恋愛文学をもとに、男を破滅させる女、ファム・ファタル(運命の女、魔性の女)について考察する本。
女によって人生が狂う男はどうやって転落していくのか、背筋が凍りつくような鋭い考察が満載です。
以下、本書の読書メモです。
はじめに、ファム・ファタルとは(P10)
ファム・ファタル=恋心を感じた男を破滅させるために、運命が送りとどけてきたかのような魅力を持つ女。
早い話、男を破滅に導く女がファム・ファタル。関われば我が身がボロボロになる、破滅してしまうことが分かっていながら、どうしようもなく惹かれてしまう、そんな魅力を持った女。
ファム・ファタルに魅入られる男の特徴(P12)
ファム・ファタルは貧乏、何も持っていない男には寄ってこない。
ファム・ファタルが男の運命を依代とする条件は、
1・破滅するだけの価値を持っている(=男に容姿、金や才能、将来性、名誉などがあること)
2・2人が運命のいたずらで偶然に出会うこと
この2つ。
何らかの魅力を持っている男が、ファム・ファタルに出会うことによって人生が暗転。最後、男は破滅を迎えるのがファム・ファタルに魅入られた男のお約束。
例)
30代後半、高収入既婚者の男がファム・ファタルと出会う。
男は自分でも信じられないくらい女にのめり込み、金や愛情、様々なものを貢ぐ。最後男は捨てれられ、家族も金も女も仕事も、全て失う。
男のサガ(P29)
男は、常に自分をほかの男とは比べずにはいられない生き物。
賢いファム・ファタルはその性質を本能的に知っており、「あなたが一番」と男に甘言し、男を巧みにコントロールする。
「楽して暮らしたい、でも金は欲しい」という女は危険(P34)
ファム・ファタルが怖いのは、快楽が何より好きでありながら、お金に執着しないこと。
男がお金を自分に持ってこさえすれば、お金の出処などどうでもいい。そのため男は、お金を手に入れようと、どんどん悪へ落ちていく。
成功した男が恋をするとき(P92)
功成り名遂げた、一廉の男は、プライドや虚栄心に突き動かされて恋をする。
だから、一流の成功者、経営者は、目に見えブランドがある女(女優や一流ホステスなど)に熱を入れる。
そんな男にとって、女は見栄を張る商品であり、だからこそ、そこに付け込まれ、自滅に追いやられる。
才能食いのファム・ファタル(P137)
一般的に、ファム・ファタルがターゲティングするのは、ブ男よりイケメンが多い。
ただし、ファム・ファタルのなかには変種もいて、容姿がダメでも才能に特化した男を狙うタイプがいる。
音楽や学問、政治、何らかの分野で突出した才能を持つ男をターゲティング、男に食らいついていく。
お金の器(P162)
人にはそれぞれ想像力があって、自分の想像力を超えたお金は扱うことができない。
限界を超えたお金はただの負担になってしまう。だから、自分の想像力を超えたお金を稼いでもそれはさっとなくなってしまう。
例)
水商売で大金を稼ぐ女が、ホストに熱を入れて散財してしまう(=無意識のうちに不相応なお金を捨ててしまう行為)
感想など
めちゃくちゃ面白かった本。
男を破滅させる女=ファム・ファタルをフランスの小説からあれこれ考察している本なのですが、登場人物の時代背景は現代と違うものの、実際こういう例は現実であるな、と。
品行方正、真面目な青年がファム・ファタルに出会ってしまったばかり、お金、家族、全てを失い、人生転落でタイーホとか、まぁいつの時代も、変わらないものは変わらないのかも。
まぁ、でも人生、ときどきこういうことが結構あると思います。
なぜだか分からないけどめちゃくちゃ惹かれてしまって、「これはやっかいだ」とうすうす気づいていても、飛んで火に入る夏の虫で、身も心も懐具合もズタボロにされてしまう。
それは目に見えている地雷かもしれないけど、なぜかそのときは、つい男気を発揮してしまって先に進んでしまう。結果、大ダメージを受けて長期療養を余儀なくされる。
まぁ再起できるくらいならマシかもしれませんが、再起不能、ひどい場合は人生\(^o^)/オワタになることも。
堕ちるならとことん堕ちてみるのも一興かもしれませんが、人生終了になりたくないなら、危険は避けたいもの。
悪女に興味をお持ちの方、誰かの金づるになっているあなた、女性で人生狂いそうなあなたは、一読をオススメします。