失敗は成功に、不幸は幸福に。
遠藤周作著『あまのじゃく人間へ いつも考え込み自分を見せないあなた』(青春文庫)の読書感想です。
この本について
遠藤周作さんのエッセイ集。
人生や運命、才能、人間関係など、様々な示唆に富んだエッセイが満載。物事を多面的・重層的に考えることの大切さが身に沁みる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
お金について(P10)
お金は人生で大切。お金があれば、ある程度人生の喜びを買うことができる。人としての暮らしができる。自由も買うことができる。
世の中にはお金がないばかりに自分の自由を差し出し、お金のために自分の信念を歪めざるを得ない人がたくさんいる。お金がないことによって精神が貧しくなり、イヤな奴になる人がたくさんいる。
でも逆に、お金を持つことによって、人として鷹揚になり、イヤな性格から脱却できる人もいる。お金があってこそ自由でいられる。精神的独立心を保つことができる。
このようなことを考えると、現代社会を生きる上で、お金の価値を軽視してはいけない。
女について(P17)
賢い女はお金を遣わず自分を気遣ってくれる男にほれる。バカな女は自分の心を気遣わないで金を遣う男にほれる。
良い女をつかもうとするなら、女のためにお金を遣う関係を作ってはいけない。本当に良い女は金で手に入らない。
人生は長期で考える(P57)
人生はいろいろある。短期間でツイてないことが連続することもあるし、目先目先で物事を見ると、人生の本質を見失う。
大切なことは、人生をロングレンス、長期的な視野で見ること。長い目で人生を見れば、今のマイナスの出来事がやがて来るプラスの出来事に変わる、そんなことが起こる。
人生何一つ無駄なし。どんなときも、長い目で人生を考えること。
アイディアが浮かぶとき(P73)
人生、偶然のひらめき、アイディアをつかめるかどうか、それが運命の岐路となる。
偶然のひらめきは、普段ぼーっとしているときに浮かぶ事が多い。頭を全力で働かし、考えつくし、そしてぼーっとする。そういうときに「ぱっ」とひらめきが浮かぶ。
このぼーっとしている状態は幸運な偶然を引き寄せる力がある。浮かんだことは忘れずに、覚えておき、行動すべし。
老人と人格(P123)
よく「年を取るとその人の生き様通りの性格になる」と言われるが、実際人が老人になると、その人本来の性格が表に出てくる。
ケチで欲が深い人が老人になると吝嗇家の老人となり、攻撃的な人が老人となると、キレる老人になる。
大体、人は50歳を超えたあたりから、その人本来の本性が表に出てくる。そこで出てきた性格がその人のもともとの性格だと考えた方がいい。
人を見た目で判断しない(P126)
人は見た目だけで判断できない。
表ではニコニコ、明るく爽やかな人が、裏側ではドロドロギスギスの本性を隠していることもある。見た目の印象をその人の性格だと判断して接していると、やがて痛い目に遭う。
社会において、人は誰もが二面性を持っている。「地」だけで生きている人は少ない。外で人と接するとき、相手のことをカメレオンだと考える。
彼or彼女は、明るさ、礼儀正しさなどの姿をまとって「擬態している」と考える。目の前のその人の姿が本当のものではないと考えて接する。
このように考えて人と接することで、社会における対人関係で、距離感を見誤ったり、接し方で失敗を避けることができる。
運命を感じる(P193)
人生、若いうちは、自分の未来、可能性、運命を想像し、上を目指し頑張ることができる。
しかし、ある程度の年齢に達したならば、己の器、運命を冷静に見極め、晩節を汚さないようにしたい。
人には持って生まれた器というものがあって、その器にあった生き方が一番自然な生き方。自分の器を無理に広げ、運命に逆らおうとしても、それは天に唾するようなもの。
自分の器を理解したら、それに合う生き方をするのが一番。
感想など
柔らかい口調ながら何度も味わうように読み返したくなる、そんなエッセイ集。
いやぁ、なんか考え方がすごい心に響いてくるんですよね。「人生にムダなし、トータルで見れば今のマイナスも決してマイナスではなくプラスになる」的な考え方とか男女論の話とか。
いろんな考え方、物の捉え方を知って、自分の考え方や思考の枠を広げていく。
そうすることで物事の捉え方が変わっていって、納得できなかったことや分からなかったことが「そうなんだ!」と分かる。
まさに読書の楽しさが実感できるエッセイですが、本当に遠藤周作さんのエッセイはいい。説教臭くないのに「ストン」と自然、言葉が胸に響いてきます。
こういうとき、読書は最高に面白いですが、こういう本に出会えるのは本当に貴重。これからもちょくちょく再読して、物事を重層的に捉えられるようになればなぁと思います。