恋愛して結婚する、それが当たり前の時代は終わりつつある。
村上龍著『恋愛の格差』(幻冬舎文庫)の読書感想です。
この本について
恋愛と社会をテーマにしたエッセイ。
格差が進行している日本においてそれが恋愛にどんな影響を与えているのか、自分なりの幸せをみつけるためにどんな結婚をすればいいのかなど、将来を考えたくなる話が満載です。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P14)
こうすれば幸せになる、そんなモデルは存在しない。「こうすれば不幸になる確率が低い」というモデルはあるが、幸せに共通モデルはない。
結婚も同じ。結婚したら幸せなのか、それはケースバイケース。結婚で幸せになる人もいるし、結婚で不幸になる人もいる。
格差社会の問題点(P19)
格差社会の問題点は、
1・格差が世代間で連鎖する
2・均一的なロールモデルが消えてしまう(=「こうなれば不幸にならない」というモデル)
この2つ。
格差社会が人々の間に断層を作り、人々の共通観を分断する。
結果、男も年収が少ないけど充実した人生を楽しむ男と、金も生き甲斐もない男、階層が別れていく。
人を好きになるとき(P26)
誰かを好きになるときというのは、おおむね無意識的な感情が影響している。
それは普通の生活で使っている意識よりさらに深いところにある部分が働き、人を好きになる。だから、なぜ好きになったのか、理由が分からない。
希望とは(P66)
希望という言葉にはネガティブなものが含まれている。希望が発生するにはそもそも、ネガティブな要素が必要。ネガティブなものがあるから、希望を持つ。
普通がない時代(P94)
現代は「普通」という共通理解がなくなりつつある時代。
日本人としての人生スタンダードがなくなりつつあるため、「普通」の定義が揺らいでいる。だから使う人によって「普通」の意味が大きく違う。
失恋の乗り越え方(P117)
男が大失恋で痛手を被ったときの乗り越え方。
1・回復には時間がかかると覚悟すること。苦しみは今すぐなんとかできない。
2・酒に溺れて現実から逃れようとしないこと。酒に逃げるのは逆効果になる。
3・失恋をほかのことと結びつけて考えないこと。「フラれた俺はダメな男だ」などと考えないこと。
4・仕事に打ち込むこと。仕事を充実させれば、失ったプライドを癒やすことができる。
結婚が難しい理由(P136)
今、女性の結婚観が変化している。一昔前は女性は結婚するのが当然で、それほど好きでなくても結婚をする女性が多かった。
しかし今は、結婚すれば幸せになれると考える女性が減っており(条件を提示する女性が増えた)、それがゆえに、男性は結婚相手を見つけるのが難しくなっている。
外に出る(P147)
バイタリティを失うと、外へ出る気がなくなり、家のなかにこもってしまう。
家のなかで悶々としていても、ロクなことがない。一人で考え込んでいるときというのはたいていまともなことは考えない。考えが悪い方へ進む。
そんなことをしていても仕方ない。恋愛もできない。バイタリティを取戻し、外へ出て、人に会いに行く。それが男として健康的な在り方。
感想など
タイトルが気になって読んでみた本。
内容的には恋愛だけでなく、社会や哲学的なものなど、幅広いエッセイが楽しめます。
特に印象的だったのは村上さんの母親の話(P227)。
教師だった母親は自立的な女性で、「母親のおかげで自立的な人間になれた」的なということが書かれているのですが、こういう話を読むと、母親の影響力ってすごいなと思います。
あるテレビ番組で「男は皆マザコンである」という名言(迷言)がありましたが、恋愛にしろ何にしろ、母親の無意識的な影響力はバカにならないもの。
普段は意識していないけれど、母親の存在というのは、心のどこかで、恋愛観に影響してるのかもしれません。