人生で努力が報われるための考え方。
幸田露伴著、渡部昇一編『人生、報われる生き方―幸田露伴『努力論』を読む』(三笠書房)の読書感想です。
この本について
上智大学名誉教授、渡部昇一先生による幸田露伴の『努力論』現代語訳本。
本書が出たのは明治の昔ですが、本書の内容はいつの時代でも色褪せない、普遍的なもの。
この本で、努力すること頑張ること、生きていくための普遍的な原理が学べる内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
努力の種類(P19)
努力には、1.直接の努力、2.間接の努力、2種類ある。
目の前の課題、今やるべきことを精一杯頑張るのが直接の努力であり、物事の準備や頑張るための基礎的な力が間接の努力。
人間、時に努力の結果を云々しがちだけど、努力は自発的に頑張ることであり、自然な行為。結果は気にせず、努力すべし。
もし、努力が思う通りの結果にならないのであればそれは努力の方向を間違えている。もしくは、間接の努力が足りないから。
準備し、やる気を高め、意志を持ち、努力を継続する。
惜福の工夫(P40)
誰にも幸運は訪れる。問題なのはその後。
幸運がやってきたとき、調子に乗って幸運を使い果たしてはいけない。幸運なときも、控え目に福を抑制し、惜しむこと。
福を取り尽くさないで、使い果たさないこと。これが惜福の考え方であり、幸運を長続きさせる秘訣。
ケチは結局損をする(P47)
名将は福を部下に分け与えるが、愚将は福を独り占めしようとする。名将は部下やほかの人に慕われ支えられるが、愚将はそれがないため、やがて没落していく。
人の上に立つものは、福を分ける、分福の工夫を徹底すべし。
好事が伴う努力が一番(P63)
努力と向かい合わせている行為に好事、「好んで為す」という行為がある。
好きなことを自然と夢中になっている。その間の苦労は苦労と感じない。悪いことが起こっても、目的に向かって進んでいる。
好事+努力が最強の組み合わせ。
四季と心理的な影響(P94)
私たちは、環境や季節に影響を受けている。春や夏、秋、冬、それぞれの季節が与える心理的な影響を認識しつつ、順応する。
気を素直にする方法(P147)
やるべきことを片付けずにダラダラしていると気が停滞する。
やるべきこと、思うことがあれば直ちに取り掛かる。こうすることで、気が素直になる。
大局を見失わない(P166)
努力するにも努力の先の大局を見失わない。
目先のことに惑わされ、小事にとらわれてはいけない。進むべき本質的な道、努力の目指す先を見据えること。
人間のリズム(P188)
朝起きて昼に活動、夜に眠る。人間には自然なサイクルがある。
精神状態、意欲、体力もサイクルに応じた浮き沈みがあり、限度がある。頑張れるときは頑張り、休むときは休む。
無理な計画が失敗のもと(P245)
努力が途中で放棄されてしまうのは無理な計画を無理に頑張ってしまうから。
計画は実行可能な計画を立て、日々やるべきことをやり遂げる習慣を作ること。
感想など
惜福、分福という考え方が印象に残った本。
なぜある人は上に立ちながら没落してしまうのか、なぜある人はどん底から頂点に立つことができたのか、人の立身出世の背景には惜福と分福の工夫あり。
独占しようとする者は滅び、共有しようとする者は栄える。
人に与えるからこそ、さらにツキがまわってくる。「人に幸運をおすそ分けする」という分福の考え方は、案外実利的な考えなのかもしれません。
幸運、努力について、実用的処世訓を学べる濃い本でした。
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