ジブリ映画や北野武監督の映画音楽で有名な作曲家、久石譲監督作品『Quartet カルテット』を観ました。
カルテットとは四重奏の音楽形式で、構成は第一バイオリン、第二バイオリン、ヴィオラ、チェロ、4つの楽器の合奏音楽です。
映画の登場人物たちは明夫、智子、大介、愛の4人。彼らは、同じ音大の学生(国立音大)で、学生時代にカルテットを組みますが、大失敗。
それから数年後。彼らは大学を出、それぞれの道に進みますが・・・。
明夫(袴田吉彦)・・・第一バイオリン担当。天性の才能はあるが典型的なイヤな奴。ある楽団でコンサートマスターをしているが、その楽団のリストラで楽団を退団することに。
智子(桜井幸子)・・・第二バイオリン担当。セクハラ歌手のバックでバイオリンを弾いている。
大介(大森南朋)・・・ヴィオラ担当。音楽教室で講師をしており、妊娠中の恋人がいるが、リストラ宣告される。
愛(久木田薫)・・・チェロ担当。音楽院に進み、レッスンを受けているも、成果は今ひとつ。
という具合で、4人それぞれ、割り切れない生活を送っています。あることがきっかけで、四人は再びカルテットを組むことに。
上手くいかない現状に悩みながらも、自分の進む道(音楽)を捨てきれない、若者たちの生き様を描いた感動映画です。
信じるからこそ悩む
この映画の主人公、袴田吉彦演じる明夫がともかくイヤなやつで、才能がある人間にありがちな天我独尊的な態度が鼻につくのですが、映画を見ているうちに、彼の葛藤の理由が手に取るように理解できます。
本気で上を目指すからこそ、妥協しない。本気だからこそ、こだわって神経質になり、周りに辛くあたってしまう。自分の現在が、望んでいる場所から遠く、そこへ近づかない。
自分がいるべき場所へ行けるとは信じている。しかし、今の自分は何だ。良い音楽ができるはずだ。このような表現者の苦悩が表現されています。
映画では、あるメインのメロディが形を変えて表現されていくのですが、その音楽は、まさしく映画の主人公たちの迷い揺れ動きながらも「求めていく生き方を貫こう」という意思のように感じられます。
一般的な映画というより、クリエイティブな仕事を夢見て、それが実現できずにいる、しかし夢を捨てきれないでいる、在野の音楽家の卵に向けた作品のように思います。
音楽に夢を持つ人、興味がある人は、心に響きものがあると思います。
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