『脚本を書くために知っておきたい心理学』の読書感想 – 名作の背後に心理学あり!?

脚本を書くために知っておきたい心理学

私たちが映画のキャラクターに共感できる理由。

ウィリアム・インディック著、廣木明子訳『脚本を書くために知っておきたい心理学』(フィルムアート社)の読書感想です。

この本について

フロイトやユング、エリクソンなど、有名心理学の知識を脚本に活かした、脚本家のための心理学知識集。

魅力的な脚本、キャラクターを書くために知っておきたい、「人間」の描き方が学べる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

映画の登場人物と観客(P8)

人が映画を観に行く理由、それはファンタジーを体験するため。

観客は目の前に映し出される映画というファンタジーを見つめ、一方で、自分自身を、映画の登場人物に投影している。

映画は、物語を通じて、人の無意識を刺激している。映画は、人の想像力を投影として、ファンタジーを作り出す、最高のメディア。

フロイトのエディプス・コンプレックスと禁じられた恋愛(P25)

フロイトが提唱したエディプス・コンプレックス。

息子が母親のへの愛をめぐり、父親と無意識の葛藤・競争を繰り返すように、映画のキャラクターの恋愛関係においても、必ず敵対するライバル(強力な敵対者=父親の投影)が登場する。

一方、もっと直接的な焼き直しが行われている映画もあって、そこには少年と年上の女性の関係を、「禁じられた果実」という要素を折り込み、エディプス・コンプレックスを表現している。

悪役としてのイド(P37)

フロイトが提唱した精神構造の考え方に、イド、自我、超自我がある。

・イド

→理性がコントロールできない、本能的なもの。快楽に基づき、行動を起こす。

・自我

→理性的にイドをコントロールしようとする、現実的な意識。

・超自我

→規範的、道徳的であろうとする意識。

映画においては、しばしば悪役が人のイドを表現したキャラクターとして登場、憎しみや復讐心といった、人のダークサイドを表現する。

観客は、その悪役の邪悪性に目を背けたくなるが、悪役が演じるイドの本能的な部分は、人が抑圧して表には出さないようにしている部分

だからこそ、悪役の行動が、観客の心を刺激し、映画の世界に没入させる。

内面の葛藤とマスター(P43)

イド(本能)と超自我(規範心・道徳心)との葛藤で起こる問題は、自我によって解決される。

映画ではその過程を次のような関係で演出する。

・イド=悪役

・自我=主人公

・超自我=主人公の師匠(マスター)

例えば、映画『スター・ウォーズ』では、未熟で迷いがちなルークのもと、オビ=ワンという師匠が現れ、進む道を示す。

一方、その対極としてダースベイダーというイドが登場、ルークを闇の部分へ惑わす。

光と闇、その葛藤を経て、ルークは真のジュダイとなり、物語はめでたしめでたしとなる。

抑圧的なキャラクター(P91)

フロイトの提唱した防衛機制という心理的な反応について。

人は、時折、自分の本当の気持ちを抑圧して、したいこと、望むこととは正反対の行動を起こしてしまう(反動形成)。

映画では、抑圧的なキャラクターを生み出すことによって、キャラクターに複雑な魅力を提供、観客に、人間心理の複雑さを想起させることができる。

あまりに堅苦しく滑稽な男、とりすました態度で、なかなか愛情を見せない男など、反動形成の心理を理解しておくことは、魅力的な人間像を表現する一つの手段となる。

エリクソン理論と人間不信の主人公(P121)

エリク・エリクソンの心理学の概念に、信頼と不信という社会心理段階がある。

人生の初期、人は周りの人の助けなくしては成長することができない。そこで周囲の適切な手助けがあって、人は「この世は安心した場所だ」という感覚を持つことができる。

しかし、そこで適切な助けなく、放置された場合は、「世界は安心できない、人は信頼できない」という不信を持ってしまう。

映画に登場するひねくれた、不信の主人公は、エリクソンの心理学理論をモチーフにしている。

どこか暗く、周囲に対して否定的で、いっぴき狼。傷を負って、世の中の酸いも甘い知っている、そんなアンチ・ヒーロー。

彼らの課題は自らの不信を克服し、アイデンティティーの危機を解決すること。他人を信じ、大義を信じられるようになること。

中年の危機(P149)

エリクソンのアイデンティティの危機と中年期について。

人生が半分終わって、自分がやってきたことに満足できず、今の人生がつまらず、将来に楽しみがない、自分が停滞しているのが分かる、これが中年の危機。

例)『アメリカン・ビューティー』のレスター・バーナム

→若さを失い、妻、娘との関係もダメ。仕事もつまらない。「既に死んでいる」ような生活を送っている。

中年の危機を解決する方法は、生殖性=新しい目標、自らの人生の意味付けをすること

中年の危機から脱出するために、新しい人生へ再出発するための目標、生きがいを見つける。

ルークとダースベイダー(P172)

映画『スターウォーズ』では、主人公ルークが、正義のジェダイとして覚醒し、悪の帝国を滅ぼすために戦う。

ルークの敵であり父として登場するのが悪役のダースベイダー。ダースベイダーはルークのシャドウであり、それはルークの切断された一部。

旅の目的は、破壊的な父親というシャドウと遭遇し、それを乗り越え、統合していくこと。己の影を統合していくことが、自己成長における必要なプロセスとなる。

ライバル関係の設定(P277)

ライバル関係の定形は、良い子・悪い子、頭の良い子・悪い子など、正反対の性質を持つ関係。

偉大な英雄には必ず、その偉大さに匹敵する悪い悪人がいる。

感想など

本屋巡り中にタイトルに惹かれ購入。

脚本を書くわけではないですが、映画は好きな方なので、心理学の知識がどのように脚本に盛り込まれているのか、「へぇ、そうなんだ」と興味深く読了。

心理学は人間に焦点を当てた学問で、人間を描く映画では、人の心理、感情、行動、様々なものが理屈で解説されています。

それが正しいか間違いかは置いておいて、一つの見方として、心理学による人間学は、勉強になることがたくさんあります。

ただ言えるのは、売れる映画は人の心を捉える何かがあるということです。

その何かは人間の普遍的なもので、だからこそ、映画を見ることは、ただのエンタティメントではなく、人生観、人間観を深める学びなのかもしれません。

本の購入はこちら