近年、自分の足で人生を生きていく人に支持されているのがアドラー心理学。
それは一体どんな心理学で、具体的に人生においてどのように役立つのか。それを知りたいときに参考になるのがこちら。
岸見一郎著『アドラー人生を生き抜く心理学』(NHKブックス)です。
この本について
本書はアドラー心理学の概論とも言える本で、その基礎的な考え方から現実生活における適応法などの応用まで、ばっちり網羅。
多少専門的な話が多いので、読むのには時間がかかりますが、本書を完読すれば、アドラ心理学についてのおおよその話を理解。実生活に役立てることができます。
以下、本書の読書メモです。
アドラー心理学の基本(P13)
人は過去の出来事や経験によって人生を規定されるような、「振り回される」存在ではない。
もしそうなっているとすれば、それは自分がそうなることを許しているだけ。これがアドラー心理学の考え方。
出来事と意味付け(P28)
人は自分の人生で起こったことを自分の考え方、価値観によって意味付けをする。
それは一人一人違っていて、だから同じことが起こっても、人によって捉え方が全然違う。
性格とは(P50)
アドラー心理学において、性格とはライフスタイル。それは人生、または自分自身への意味付けのことを指す。
親が子どもを叱る時(P64)
親が子どもを叱るときは、そこに親の「子どもを叱る基準」という価値判断が存在している。
例えば、子どもが勉強しないことを叱る親は、勉強=学歴=重要、といった価値観が背後にある。
子どもは親のこのような価値観を敏感に嗅ぎ取り、親の価値観に適応するために、行動を変えていく。
母親の重要性(P94)
母親とは、子どもにとってこの世に最初に出会う他者。だから、母親の人格そのものが、子どもの人生において、とてつもなく重要な影響をもたらす。
母親に憎まれ、敵視された子どもは、他の人を憎み、敵視するようになる。一方、母親から受け入れられ、愛された子どもは、他の人を仲間だと考え、人間関係を築いていく。
努力と成功(P120)
人は楽々と成功して、人生で良い思いをしたいと思うが、実際のところ、努力なくして手に入れた成功は非常にもろい。そして有害。
人生では、必要な努力をして手に入れたものこそ、本当に価値がある。
成功した人生とは(P233)
成功した人生=今目の前の人生を100%味わえる人。
これから先どうなるとか、気になることとか不安なこととか、そういうことは置いておいて、今目の前の人生に集中できる。
これこそがまさに、豊かで成功した人生を送れる人。
感想など
『嫌われる勇気』や『幸せになる勇気』を読んで、さらにアドラー心理学を知りたい。その希望が満足できた本。
アドラー心理学とはそもそも何なのか。なぜこの心理学が生まれたのか。
その成り立ちをはじめ、基礎的理論。そして人生における様々な事例を通じ、さらにアドラー心理学が理解できる。そんな内容です。
得てして心理学の理論というのは非実用的、すなわち理論的すぎる場合が少なくないですが、大切なのは実際に使えること。人生で役に立つこと。
個人的にはそこに、一番の必要性を感じています。
この意味で、アドラーの考え方というのは非常に納得できるというか、実用的に感じることが少なくありません。
なので、学問のために学問をするのではなく、ほんの1ミリでも実際の人生をより良くする。この意味でアドラー心理学の考え方はとても理解しやすいです。
基礎的な理論を踏まえ、実際の人生にその考え方を適用していくきっかけとして本書はおすすめ。
『嫌われる勇気』などを読んでアドラーに興味を持った方には、一読をおすすめしたい本です。