自分の幸せを人と比べる必要がない理由。
岸見一郎著『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)の読書感想です。
この本について
『嫌われる勇気』などアドラー心理学で有名な著者による幸福についてのQ&A論。
一般読者の悩みと疑問に哲学的に答えつつ、幸せとは何なのか。生きることとは何なのか。読者一人一人に内省を促す、人生の気づきに満ちた内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P21)
幸福とは、人それぞれオリジナルなものであり、いわゆる成功とは、一般的なものであり、量的なもの。
幸福とはその人だけにしか当てはまるものでしかなく、この意味で、他人や世間の幸せを自分に当てはめることは、全く意味を成さない。
だからこそ自分の幸せは自分だけの幸せ。自分自身で見つける必要がある。
なぜ挫折はチャンスなのか(P77)
人は挫折によって、本来自分が歩むべき道へと導かれる。この意味で、人生で挫折するということはまさに、自分の運命に忠実に生きてきた結果。
挫折の結果、不本意な道を歩むことになったとしても、そこで絶望する必要はない。腐らず前向きに生きていれば、絶望の先に「だから自分は挫折したんだ」という理由が分かるから。
自信と自分の価値(P93)
自信満々の人=自分のことが好きな人。自分のことが好きで、自分に価値があると信じている。だから自信満々に振る舞える。
対人関係という悩み(P97)
生きていく悩みとは基本的に対人関係の悩み。
人は一人では生きていくことはできないので、人の中に入っていくしかない。
それによって様々な摩擦も経験するが、生きる苦しみや喜び、そして幸せを味わうことができる。
この意味で、自分の人生を生きるためには、対人関係のなかへ入って行き、傷つく勇気が必要。
おすすめの結婚相手(P133)
結婚相手におすすめなのは、一緒にいて普通でいられる人。無理に自分を良く見せる必要もなく、ただいつもの自分で自然にいられる。そんな相手が良い。
仕事の心得(P170)
人は仕事をするために生きているのではない。幸せになるために仕事をする。そこを間違えてはいけない。
大人としての最低限の礼儀(P228)
人前で不機嫌な顔を見せない。自分の感情で周囲に不用意に気を遣わせない。それこそが大人の最低限の礼儀であり、他者と関わっていく上でのマナー。
常に機嫌良く、丁寧で、親切で、そして寛大であること。そんな大人を目指すべし。
結婚相手に問題があったとき(P251)
家系上の問題や借金など、結婚を考えた相手に何か問題があったときの考え方。
問題が発覚した時点で結婚をやめるのも1つだが、もし愛情があるならば、問題があってもそれを2人で解決できるかどうかを考えること。
もし、2人一緒になって解決できるようであれば、問題があろうがどうだろうが、そんなことは関係ない。
ただ、2人で一緒に協力して解決できないようであれば、もしくはその気がないようであれば、結婚はやめたほうがよい。
感想など
「家族や仕事があっても、人生が不安で絶望してしまいます」
「会社の期待に応えられず、悩んでいます」
「結婚を考えている恋人に借金が発覚しました」
など、読者の身近な悩みに著者が答えつつ、人生とは何なのか。幸福とは何なのか。一歩一歩考えていく本。
読者の相談に対する答えもそうですが、個人的には著者が語っている自身の人生が一番、印象に残っています。
アドラー心理学のベストセラーを出して成功した著者が順風満帆な人生を生きてきたのかと思いきや、実際は回り道の連続。
40歳になるまで常勤の仕事ではなく非常勤をしながら自分のテーマに取り組み、そしてアドラー心理学と出会う。
本書ではその話が詳しく語られていて、そこにとくに、興味を惹かれました。
世の中、まっすぐ自分の道を見つけ出して、効率的に一歩一歩道を進んでいく人がいる一方、いろんなところを行ったり来たり。
悩みに悩んでようやく、自分の道を見つける人もいます。そういう人にとって、著者の人生はとても勇気づけられる話だと思います。
ということで大切なのは人と比べないこと。
「自分の人生は自分の人生。どれだけ時間がかかったとしても、自分が信じる道を行けばいい」
そのことを教えてくれる一冊です。