最低限知っておきたい税金の現実と節税法。
大村大次郎著『税金を払う奴はバカ!』(ビジネス社)の読書感想です。
この本について
元国税調査官の著者が、税金の不条理な現実を分かりやすく解説した上で、税金で損しないために最低限知っておきたい知識を分かりやすく解説している本。
この本を読めば、「もっともっと、税金を詳しく知ろう!」という気持ちが湧いてくる本です。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P14)
日本は税金大国。ますます税収が厳しくなっているが、その大きな原因は少子化。
なぜ少子化が進んでいるのかというと、男性の非正規化。つまりお金の問題。
非正社員の男性が増える→未婚男性が増える→少子化が加速化する→国は一般人からの税収が減るので、それをどこかで補おうと大義名分を作り増税する
これが今の日本の状況。
増税は必要ない?(P19)
政府は日本の財政危機を声高に叫んでいるが、実際のところ、日本にはたくさんお金がある。
そして、お金を持っている人のほとんどが一部の富裕層と一部の大企業。
なぜそんなことが起きているのかというと、国が富裕層や大企業への優遇措置を推し進めているから。
そのかわり、国民全体に負荷をかける消費税や社会保障の増税など、取りやすいところを重点的に強化している。
だから国民の多くは負担が増え、貧しくなる一方、既にお金をたくさん持っている人たちは、ますます豊かになっている現実がある。
開業医は日本の代表的お金持ち(P28)
医者はお金が儲かる。そのなかでも開業医は特にお金が儲かる。その理由は、税金面でかなり優遇されているから。
開業の場合、売上の72%が無条件に経費として認められるという驚愕の待遇がされており、おまけに事業税とか、諸々の面で優遇されている。
これらはいわゆる日本医師会という最強の圧力団体が力を握っているからで、いろんな意味で影響力を発揮しているから。
つまり、
圧力団体を持つほど力を持つ→税金で優遇措置を作る→既得権益層になれる(゚д゚)ウマー
こういう仕組みを持っている人たちは、国民がいくら税金で負担を増やそうが関係なく、美味しい思いをすることができる。
大企業もこれと似たような状況にある。だからこそ、税金をまともに払う人がバカを見る。
社長の報酬を最大に設定しておく理由(P50)
中小企業は社会的にとても大切な存在。ぜひ、無駄な税金を払わず、節税をしっかりしておく。
そのための原則としてはまず、社長の報酬をできる限り高めに設定しておくこと。
社長の報酬は年度途中で増額できず、会社の儲けが軌道に乗っても、今すぐ報酬を上げることができない。
だから無駄に税金を取られ、何のために働いているのかが分からなくなるようなおかしな状況になる。
それを避けるために、最初から社長の報酬はできる限り最大限高めに設定しておき、万が一報酬が支払えない場合でも、減額か未払いにしておけばいい。
(※経営が厳しい企業の役員報酬を下げることは、税務署からとやかく言われにくい。)
最初から役員報酬を高く設定しておけば、会社が予想以上に儲かったときも、柔軟に対処できる。そして、無駄に税金を払うリスクも抑えることができる。
小規模企業共済の問題点(P54)
小規模企業共済は節税として最高の方法だが、普通の預金とは違い、自由に引き出すことができないことを留意する必要がある。
お金を受け取れるのは事業をやめたときや退職したときなので、給付を受け取ることを考えるなら、タイミングに注意すること。
家族を利用する(P61)
自営業を始め中小企業が家族を役員にして節税するのは鉄板。家族を従業員にして給与を払うことで、大幅な節税ができるので、これを利用しない手はない。
ただしその場合は一定の手順を踏む必要がある。
給与として節税する場合、
1・実際に仕事をしていること。
2・仕事をしている証明となる書類を作っておくこと。
この2点が条件。
ポイントは、税務署が給与について文句を言ってきた場合、「うちはこれに対して給与を払っているんです」ということを自信を持って言えること。
これに税務署が反対する場合、家族が仕事をしてない証拠を税務署が提出しなければならない。
逆に言えば、家族がきちんと仕事をしていて、それに対して給与を支払っている証拠さえ出せれば、税務署は文句の言いようがない。
この意味で、家族が実際に仕事をしており、その証拠となる証拠を作っておけば、合法的に節税ができる。
ただし、家族にあまりにも不自然な給与を設定すれば、それについて指摘される可能性が高い。
日当はせいぜい1万以内。家族一人あたりの年間給与は年収の3分の1程度に抑えておくのが良い。
例)
年収500万→家族一人の給与は150万
年収300万→家族一人の給与は100万
会社の場合は、自社に親族を非常勤役員としておき、節税を推進する。
公私混同で節税する(P69)
中小企業の節税のキーワードは、公私混同。住居でも飲み代でも、仕事に少しでも関係することは、経費として計上する。
ポイントは、「これは仕事のためなんですよ」ときちんと主張できること。
仕事の業務に少しでも関係することは、積極的に公私混同でOKなので、経費として節税していく。
日本の消費税がインチキな理由(P171)
国が消費税を推進するのは、消費税がとりっぱぐれがない税金だから。
そして、この税金は、世界的に見ても非常識なくらい高い。安いのではなく、高い。実質的には、世界一高いという現実がある。
(※消費税は物価と連動して判断する。)
感想など
タイトルは過激で反社会的ですが、内容は極めて常識的な本。
「今の日本の問題は日本の税金が高すぎるということではなく、本来税金を払わなければならに人たちが税金を払っていないことが問題である!」
というのがメインの主張で、日本のお金持ちがもっと税金を払えば消費税増税は必要ない(P24)など、多少ポピュリズムが気になると言えば気になります。
とはいえ現実的には、私達が支払う税金が本当に有効に使われているのかどうか。税金で甘い汁を吸っている人たちがいないのか。
そういうことを考えれば、税金をマジメに払う=バカという著者の主張が、必ずしも間違ってはいないという現実があるのも確かかもしれません。
もちろん税金を払うのは国民の義務。自分が支払うお金が、きっと誰かの為になっている。そのことは強く信じたいです。
だからこそ、所得税とか予定納税とか、住民税とか消費税とか、国民年金とか健康保険(あえて税金と書きます)とか、諸々の税金を支払っています。
なので、国のおエライ方々は皆、国の将来を真剣に考える人達であると信じたいところです。
その上で国が容易している適切な手段に従って節税をするのは国民の権利。脱税はNGですが、節税はOK。
最低限知るべき税のルールを知った上で、適切に納税できる大人でありたい。この本を読むと、そのことを強く実感します。