夏目漱石が現代の今でさえ国民作家になる理由。『ヘタな人生論より夏目漱石』を読む

昔、生きること、「私」とは何かを真剣に考えた作家がいた。

本田有明著『ヘタな人生論より夏目漱石 先の見えない時代を生きるためのヒント』(河出書房新社)の読書感想です。

この本について

1000円札でおなじみ、日本を代表する国民作家、夏目漱石のの代表作を引用、仕事や生き方、価値観、人間関係など、人生を考えていく一冊。

『草枕』や『坊っちゃん』、『こころ』など、漱石の代表作を引用、漱石の人生観や思想を踏まえつつ、私達はどのように生きてくべきなのか、問いかける内容になっています。

以下、気になった内容です。

西洋と東洋の文明の違い(P26)

西洋は自然に手を加え、自分の思い通りにしようとする文明。

東洋は、自然を変えようとするのではなく、自ら変化して調和と共存を考える文明。人間関係において、他者を変えようと動くのではなく、自らのありようを変化させていくのが東洋的な思想。

漱石の人間像(P53)

自分の流儀にこだわり、筋を通す場面では最後まで筋を通す。

自分のこだわりは何よりも大切にする。頑固で神経質だが、面倒見が良い人で、弟子には好かれ、尊敬されていた。

漱石の考える個人主義(P68)

漱石が考える個人主義(自分本位)は、他者の思惑や権威におもねることなく、自分の経験を通じ、自分が納得できる流儀を確立すること。

自己実現すること=自分本位、個人主義

自分のための仕事と人のための仕事(P76)

仕事には道楽と職業がある。

・道楽

→自分のための行う仕事。自分の興味関心を中心におく自己完結的な仕事のこと。芸術家や学者など、「したいことを仕事にすること」は道楽の典型。

わがままで成功できるのが道楽の特徴。

・職業

→生活していくための仕事。他人本位で働くが、結局他人のためにすることが自分のためになる。

ただし、他人のために働くことは苦役であり大変なこと。

傑作小説の特徴(P171)

傑作小説の3つの特徴。

1・誰でも理解できる分かりやすい内容であること。

2・読み手によって様々なとらえかたができること。

3・テーマの深堀りができること。

感想など

国民的作家、夏目漱石の思想や作品をもとに生きていくこと、人生について考える本。

この本を読むと、偉大な作家の作品は、時代を限定しない普遍性と現実性があるものだと納得させられます。

漱石の小説の登場人物はいつも現実的な存在感があります。

「真っ当な人間」であると信じてきた自分の心の闇に悩む『こころ』の先生。自分本位で行動するも内面に葛藤を抱える『行人』の二郎。

現代人の私達が読んでも違和感がないほど、普遍的な人間がそこにいます。

冷徹な観察眼で人間観察をする『吾輩は猫である』の猫でさえ、つねに「人の現実」を見つめていて、漱石の小説を読み返すたび、新しい発見があります。

10代の頃、高校の国語の教科書で『こころ』に夢中になり、漱石の小説を読み始めましたが、明治とか関係なく、心に響く言葉が満載でした。

『ヘタな人生論より夏目漱石』であらためて漱石の人生観を読み返してみると、漱石の観察眼や思想はあまりにリアル。

時代は違えど、人が悩むことや迷うことは同じ。そんなことが分かる本でした。

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