なぜ「人の不幸は蜜の味」なのか?『シャーデンフロイデ』の読書感想

シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感 (幻冬舎新書)

他人の失敗が「メシウマ」な本当の理由を解説。

中野信子著『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』(幻冬舎新書)の読書感想です。

この本について

美人の天才脳科学者として活躍する著者による現代番「嫉妬論」。

なぜムカつくあの人の失敗や不幸が快感になるのか。「ざまぁみやがれ」なことがあるとスッキリできるのか。

人なら誰もが持つ、嫉妬心という名のダークサイドを、脳科学の視点から、明瞭明快に理解することができます。

以下、本書の読書メモです。

はじめに(P14)

シャーデンフロイデとは、誰かが失敗したときに、自然に湧き上がってくる喜びの感情のこと。いわゆる妬みの感情で、誰もが心に秘めている普遍的な感情。

シャーデンフロイデがあるからこそ、ゴシップ誌が売れ、芸能人の不倫ニュースなどの「不適切な行為」が激しく炎上するネタになる。

オキシトシンの役割(P19)

シャーデンフロイデは、オキシトシンという脳内物質と深い関わりを持っている。

オキシトシンとは別名「愛情ホルモン」と呼ばれる物質で、誰かを愛したり、仲間を大切にしたり、人間に対して良い影響を与えている。

ところが、近年の研究では、このオキシトシンには、妬みの感情を強めるという働きがあることが分かってきた。

つまり、愛情と妬みは表裏一体の関係であり、愛情があるからこそ嫉みも湧き上がる。そんな人の不思議な感情の仕組みがあることが明らかになりつつある。

オキシトシンの基本的な働きとしては、

1・安らぎと癒やしを与える

2・人との絆を強める

などの働きがある。

オキシトシンと愛着(P28)

オキシトシンは基本的に、人と人とのつながりを深める働きをする。

オキシトシンは人が愛着を形成するためにとても重要な役割を果たしており、人とのつながりが切れそうになったとき、それを防ぐための働きをする。

オキシトシンは親子、恋愛、友情、様々な「人のつながり」に影響を与えている。

愛情という栄養(P31)

人は誰かの愛情なくして成長することはできない。

抱きしめる、なでる、言葉を投げかけるなど、愛情がベースとなる養育を剥奪されて育った子どもの50%以上が、成人を迎える前に亡くなっていることが研究で分かっている。

このことから分かるのは、人は誰かの愛情なくして健康に成長していくことはできない、ということ。

それだけ、人にとって誰かの愛情は、生きていくために重要なもの。

嫉妬と妬みの違い(P41)

嫉妬とは自分が既に持っているもにを奪うかもしれない誰かに対して感じるネガティブな感情。

一方妬みは、自分より「上」の何かを持っている人を自分と同じ位置まで引きずり落としたいと思う感情。

そして、妬みには良性のものと悪性のものがあり、良性の妬みは自己成長にとってプラスに働くが、悪性の妬みに心を支配されてしまうと、人としてオワコンになる。

例)

友人のM子にイケメンでお金持ちの最高の彼氏ができた

【良性の妬み】

M子にあんないい彼氏ができたのはずるい!フェアじゃない!私ももっと可愛くなって、M子の彼氏よりもっといい彼氏を手に入れてやる!

【悪性の妬み】

M子なんて私より可愛くないのに、あんないい彼氏ができてムカつく。納得いかないから、いろんなウワサを流して、2人の仲をめちゃめちゃにしてやる!

繁殖本能が高い人々(P52)

人にはAVPRという、自分の繁殖本能に対して忠実に生きるための遺伝子を持った人々がいる。

彼らがいろんな相手と自分の遺伝子を増やそうとするため、誰かと長期的な関係を築くことが難しい。

つまり、世の中には結婚生活に向いていない男女が確実に存在している。

結婚相手がそのような遺伝子を持っている人の場合は、結婚生活はいくら努力しようが、上手くいかない可能性が高い。

女性なら「尻が軽い」「股がゆるい」系の女性。男性なら二俣上等の浮気マン。彼らは結婚相手としては不適格なので、真剣交際は差し控えるのが良い。

人の不正が許せない人(P109)

いわゆる「空気が読める」協調性が高い人ほど、人のズルが許せない。

グループのルールを乱すもの。集団の規範を乱すもの。そういう人のことを絶対に許せず、容赦はできない。

そのため、いわゆる「粛清」など、組織内の規律を劇的に正す行為を率先する人は案外、「常識的」で「まとも」な人が多い。

感想など

オキシトシンとか愛着とか、いろいろ専門用語が出てきたものの、非常に分かりやすく、かつ明瞭に、「妬み」という人のダークサイドが理解できた本。

世の中綺麗事抜きに、嫉妬とか妬みとか、そういう感情が存在して、そのダークサイドによって、人生が狂わされることも少なくありません。

よくある例としては上司の部下に対する嫉妬や妬み。

才能ある部下が上司の妬みによって冷遇され、冷や飯を食わされ、場合によっては退職に追い込まれる。

そういう現実が世の中にはあるわけで、「光が当たればそれだけ影も濃くなる」という事象は実に普遍的で、この世の中を生きていく上で、常に意識したい現実だと感じています。

だから本書にも述べられているとおり、成功することが必ずしも良いことではない。目立つことが良いことだけではない。

これは本当にそうだな、と。

それはともかく、大切なのは人には妬みという感情を持つようになっているということ。それは自然発生的に湧いてくる根源的な感情であること。

それさえ理解できれば十分、この本を読んだ価値があると思います。

この話に興味が湧いた方は、

嫉妬学

他人の不幸を願う人

などの本と合わせて現実ウェルカム。綺麗事抜きの人間学について、興味を深めていってはどうでしょうか。

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