いじめが世の中からなくならない絶対的理由とは。『ヒトは「いじめ」をやめられない』の読書感想

ヒトは「いじめ」をやめられない (小学館新書)

なぜいじめが起きるのか、根本的&本質的理由がこちら。

中野信子著『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館)の読書感想です。

この本について

新進の美人脳科学者である著者がなぜいじめが起こるのかを、脳科学の視点から解説している本。

いじめ防止のためには綺麗事や倫理観ではなく、もっと別の対策が必要なことを実感させられる内容になっています。

以下、本書の読書メモです。

はじめに(P13)

いじめとは、人間という生物種が生存率を高めるために、進化の過程で身につけてきた機能の一つ。

何らかの必要性や快感があるからこそ、いじめはなくならない。だから人が集まる場所においては必ず排除や制裁といった問題が生じる。

この意味で、学校においていじめを防止するためには、子どもたちの倫理観に訴えるようないじめ対策は意味がない。

いじめを防止するためには、「自分が相手をいじめると損をする」という仕組みを作ることが大切。

「攻撃した者勝ち」(=やったもの勝ち)の現実を仕組み的に変えれば、いじめを防ぐことができる。

いじめに遭いやすい人(P25)

いじめは端的に言って排除行動。自分とは違う人、どこか変わった人、そして集団のルールからはみだす人がいじめの対象に遭いやすい。

なぜ仲がよい集団ほどいじめが起きやすいのか(P34)

規範意識の高い、みんなの仲が良い集団ほどいじめは起きやすい。

皆が同じ規範意識を持ち、皆ルールを守るが、逆に言えば、ルールを守らない者、はみ出してしまう者には厳しい。

だから規範意識があやまった方向へ進んでしまうと、それが「制裁」や「排除」といったいじめのカタチに変貌していく。

いじめられない人の特徴(P70)

暴力をともなういじめのターゲットにされやすいのは身体が小さかったり、弱そうだったり、反撃してこなそうな人。

結局いじめは集団リンチなので、弱い者がターゲットになってしまう。

逆に言えば、身体が強く、「やられたらやりかえす」という気概を持っている人はいじめの対象にはなりにくい。

学校でいじめが深刻化しやすい時期(P80)

子どもたちの間でいじめが深刻になりやすい時期は決まっていて、小学校高学年から中学2年までの間がそれにあたる。

この時期は、子どもたちにとって身体が大人の身体へ変わっていく不安定な時期で、性ホルモンの働きが強くなる時期。

性格も不安定になり、いじめなどの問題行動も起きやすくなる。

要注意な月はこれ(P86)

1年を通じてとくにいじめが起きやすいのが6月と11月。

この時期はいじめだけでなく、学級崩壊などの問題も起きやすい。というのは、6月と11月はセロトニンの分泌量が変化する時期(日照時間の関係)で、精神的に不安定になりやすい。

女性の嫉妬の対処法(P124)

ママ友同士の仲間はずれ、お局による新人いびりなど、女性同士のいじめは妬みとやっかみが原因になることが多い。

女性同士の人間関係では、女性らしさや若さといった、嫉妬の対象になりやすい面は全面に出さないほうが良い。

女性からのクレームの対処法(P137)

女性がクレームを出す背景には、女性の不安な気持ちがある。その気持ちに共感することが、女性からのクレームの究極的対処法となる。

女性は基本的に男性よりもセロトニンが低いので、不安を感じやすい性質になっている。

だから女性が何か文句を言ってくる時は、「私は不安です」と言っていると考えて、女性に共感を示すことが大事。

どうすれば女性が安心するのか、そのポイントを見極めて対応すること。

人間関係は薄く広く(P148)

濃い人間関係ほどいじめがきつくなり、関係も面倒になる。

いじめを解消するために大切なのは人間関係の風通しを良くすること。人間関係を固定化せずに、流動性をもたせること。

人と距離を近づけすぎないようにすることが大事。

感想など

いじめを科学的に考えるとこうなるのか、という興味深い本。

本書ではとくに小中学校におけるいじめが起こる原因について述べられていますが、なるほどそうだったのか、という驚きがたくさんあります。

個人的には人生で特に大変なのが小学校高学年から中学校だと考えていて、多分誰もが大なり小なり、人間関係のトラブルを経験してきているのだと思います。

個人的には幸い、ひどいいじめを経験したことはありませんが、仲良くしていたグループの友達から突然シカトされたりしたことはあります。

もちろんその後、無視した友達に一人一人順番で仕返しをして借りを返しましたが、やられたらやりかえす、この気概がないと、どうしてもいじめのターゲットになってしまうのは本書の通りなのは確か。

基本的にいじめをする人間は姑息で卑怯なので、集団でいじめてきたり、反撃してこない相手を選ぶ経験にあります。

なので、やられっぱなしでいると状況が良くなることはないし、やはりやったもの勝ちの状況は、この文明社会においていかがなものかと思います。

そもそもなぜ小中で特にいじめが起こりやすいのかというと、人間関係が固定化されすぎるところに問題がある気がします。

大学とかになると、嫌なやつとは距離を置けるし、社会人になったときは、どうしようもない会社なら辞めることができます。

ところが、小中学校の場合、転校も面倒だし、学校システムそのものが固定化されているので、そこからはみだすことは、とてつもない不安を感じることでしょう。

それと、常々思うのが、「いじめ」という言葉がどうにもおかしい。

いじめは、早い話犯罪行為です。某県のいじめ事件とか、学校の世界はどうにも治外法権化されていて、「教育」という名のもと、いろいろおかしな現実がまかり通っています。

だからこそ、いじめの問題も深刻になっている気がしてなりません。

話はそれましたが、本書ではなぜいじめが起こるのか、それを科学的な視点で理解できます。本書も主張しているとおり、いじめは倫理観や道徳観に訴えても解消される問題ではありません。

やはり、「攻撃する者にデメリットを与える仕組みを作る方が現実的な対処法になる」というのは、1000%賛同です。

いじめはなくならない。誰かを攻撃したがる人が必ずいる。そう考えておくと対応を間違えることはありません。

ということで、なぜいじめが起こるのか、その本当の原因が知りたいときは本書の話が参考になります。

とくに小学校高学年から中学生くらいのお子さんをお持ちの方は、一読をおすすめします。

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