不倫する人、しない人。世の中には2種類の人がいる。
中野信子著『不倫』(文春新書)の読書感想です。
この本について
脳科学や進化論の視点からなぜ人は不倫をしてしまうのかを解説している本。
この本を読めば、愛とか信頼とか、そんなことよりももっと強く、人を動かしている原始的な存在に気づくことができます。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P4)
人類の根源的目的は自己遺伝子の繁殖と繁栄。このため、本質的に人は、一夫一妻制に向いていはいない。
そして面白いのは、脳科学の研究によって、人の性行動はたった1つの塩基配列の違いによって、驚くほど変わることが分かっている。
貞淑なあの人も、ブイブイ言わせてるあの人も、脳のいち部分が変わることで、まったく逆の行動を仕出す。
この意味で、大切なのは浮気や不倫を脳筋的に悪だと考えるのは不適切。
結局人は、遺伝子と脳内物質に繰られている存在であり、その本質的な部分を認めることが重要。
不倫率の傾向(P16)
世界の不倫の調査を見ると、傾向として貧しい国の人ほど不倫をしやすいが、日本は世界各国と比べると発展途上国なみに不倫率が高い。
パートナーのいる人のうち21.3%の人が不倫をしているという調査結果がある。なかでも男性は20代、女性は40代の不倫率が高い。
近年は不倫の増加傾向がますます上昇し、「不倫大国日本」になりつつある。
ポイントは繁殖力(P33)
浮気をしたり誰とも性的接触を持ちたがるいわゆる「貞操観念」がない女性は繁殖力が高い。
様々な男性を受け入れることで、遺伝子を残せる機会をアップさせている。それは無意識的な繁殖本能であり、生物としてのたくましさである。
結局は遺伝子の問題(P54)
不倫しやすい人とそうでない人の違いは、遺伝子の違い。
ある特定の変異した遺伝子を持つか持たないか。それによって不倫する人になるか貞淑な人になるかが分かれる。
ちなみにその遺伝子を持っている不倫しやすい人は、普段の行動でも、他者にあまり親切にしないなど、普段の行動で大きな違いが見られる。
不倫する本当の目的(P83)
不倫をする人の遺伝子が現代にまで残っているのはそれなりの理由があってこそのこと。
不倫する人がなぜパートナーを裏切ってまで他の異性と交わりを持つのかというと、それは彼らの「遺伝子を拡散したい」欲求のため。
たくさんの遺伝子を残し、次世代に残したい。その欲求が普通の人よりも強いのが彼らの特徴。
愛着と不倫(P113)
人にはそれぞれ、生まれ育った環境によって付与された愛着のタイプがある。
とくに、様々な異性と関係を持つ人は愛着の回避傾向があり、親密な関係などを避ける反面、性欲のまま様々な異性と関係を持つ傾向にある。
一方、安定型の愛着の人は、一人のパートナーとじっくり関係を作っていく傾向が強い。
回避傾向の人が安定傾向の人とペアになれば、回避傾向の人も安定型に影響され、精神的な安定を得ることができる。
結果、性的な行動も落ち着き、別人のような変化を遂げる場合もある。
歴史の勝者は好色家(P116)
いわゆる英雄。歴史の勝者となった権力者は例外なく女好き。
「英雄色を好む」で、女性のタイプの趣味の違いはあれど、歴史に名を残す英雄たちはその人生で、多くの女性を愛でている。
歴史上の権力者で一夫一妻。側室を作らずに正室のみを愛した男はほとんどいない。
この意味で社会的に将来性がある男は、今も昔もテストステロンが濃い女好きの男。草食系の男は出世できない。
熟女好きが増えた理由(P117)
21世紀に入り、若い女ではなく30以上、なかには40以上と年齢が高い女性を好む男性が増えた(熟女ブーム)。
なぜそのようなことが起こっているのか、高齢出産の増加と無関係ではない。
熟女好きの男は生まれたとき母親の年齢が高いことが分かっている。
特に、母親が30歳以降に生んだ男の子は、ほうれい線のある女性を好む熟女好きになる。
この理由は、愛着形成と無関係ではない。
自分を生み優しく接してくれた母親の面影を、無意識のうちに求めている。これが熟女好きの深層心理。
なぜ不倫が叩かれるのか(P124)
不倫バッシングの本質は、「俺たちは一夫一妻で真面目にやってるのにお前らだけ好き勝手してずるい!」という、得している人たちへの嫉妬。
一夫一妻社会において、不倫する人たちはルール違反であり、ある種のフリーライダー。ルール軽視で自分たちだけ特をしようとする敵。
それを無意識に排除し、社会の秩序を守ろうとするのが、不倫バッシングの本質。
不倫と制裁(P145)
社会のルールを気にせず浮気しまくる人はフリーライダーであり、他の人のパートナーと交わるルール違反を犯している。
これが叩かれるのは、ルールを守っている人(パートナーのみと交わっている人)の利益を著しく犯すから。
例えば、妻に不倫された男は、妻が不倫相手の子供を妊娠させられるリスクがある。
最悪の場合は、不倫でできた子とも知らず、自分の子として育てるはめになるリスクがある。
子供を育てるのは、お金、時間、様々な資源を大きく消耗する行為。妻が不倫相手の子供を妊娠したら、自分の子供を作り、適切に育てるチャンスを失う。
一方逆に、夫が不倫相手と子供を作った場合、慰謝料や養育費として、夫は別の女にお金を払うことになる。
この場合、妻は本来自分の子供に向かうべきお金が別の女の子供に向かってしまう。そうなると、自分の子供を安心して育てる資源を失う。
つまり本質は、パートナーの浮気によって自分の遺伝子を残すための環境が悪化させられることが一番の問題。
だからこそ、不倫は制裁されるべき悪であり、社会的には許されない行為となる。
感想など
「不倫=自己繁殖能力が高い人たちの本能的行為」
という話。
倫理とか常識とか関係なく、生物的な視点で淡々と不倫についてのべていますが、正直違和感あり。
不倫が生物的な行動として正しいとしても、やはり社会が不倫を認めるようになるのはいかがなものか、というのが個人的な感想。
人が結局のところ地球を生きる「種」の一種である以上、繁殖活動による自己遺伝子の分散化にあるのはわかりますが、性欲のおもむくままに動いていればただの猿じゃないか?
まぁそんなことを思いつつも、男女の仲はそこまで単純な話でないのもわかります。
となると、結婚の制度。社会の制度。それを見直していくことも、将来的にありなのかな、という気持ちになります。
でも、妻の不倫で離婚した友人とか、この話の当事者になった人たちの実像を見ると、なんかなー。キレイゴトでは済まないダメージを受けるのは誰が見ても明白。
だからこそ、個人的にはどうせ一緒になるならやっぱり、性的魅力云々よりも、「貞淑型」の相手が一番だと、固く信じます。