努力をムダにしないポイントは頑張ること、頑張らないことを見極めること。
中野信子著『努力不要論 脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』の読書感想です。
この本について
「英雄たちの選択」など様々なテレビ番組でもおなじみの脳科学者による努力論。
努力することに意味はあるか、どうすれば結果が出る努力ができるか、努力を結果にするためのヒントが満載の内容になっています。
以下、本書の読書メモです。
努力を強要する相手には注意せよ(P)
「努力すれば何とかなる、上手くいっていないのはお前の努力不足だ、もっと頑張れ!」
こんなセリフを聞いたら要注意。これはブラック企業などが人をコントロールするために使う洗脳マジック。
人を馬車馬のように働かせ搾取するために、努力という言葉を使いたがる悪い人間がいる。
頑張ることについて、努力することについて、精神論ではなく、人間の能力や限界を見据えた、客観的な考え方を持つことが大切。
才能を遺伝で見ると(P21)
遺伝的な観点から見ると才能は遺伝で決まる。その意味で、「努力は報われる」というのは嘘。人は生まれである程度未来が決まる。
運動の才能がない人は、運動の才能がある人には勝てないし、将来どんな技能を習得できるか、それも遺伝である程度決まってしまう。
真の努力とは(P41)
努力は苦労した分だけ結果が出ると思われがちだが、苦労することが努力することではない。
真の努力とは、成果を出すための必要な目的を設定し、それを実現する戦略を立て、実際に行動を起こすという、3段階のプロセスを踏むこと。
このどれかが間違っていると、いくら頑張っても結果はでない。
何かを頑張るなら、目的・目標を決めること。そして、それを実現するための適切な戦略を立てること。それができない限り、努力は意味をなさない。努力する前に失敗している。
人は簡単に洗脳できる(P57)
人の判断力を奪い、思いのまま動かすことは案外容易い。睡眠時間を奪い、食事を満足にさせず、日々ストレスをかけていけばいい。
そして、「努力すれば上手くいく、だからもっと頑張りなさい」とハッパをかえればいい。そうすれば、その人は次第に洗脳され、洗脳者の意のままに動く生きた屍になる。
ニートの存在意義(P81)
ニートは社会的に価値を生まない存在と思われているが、実はニートには意味がある。
ニートとは、めまぐるしく動く社会から脱落し、社会の「外」から社会を見ている存在。ニートは生産性ゼロで、社会に直接的な貢献は何もしない。
しかし、社会に参加しないがゆえ、彼らの視点や発想が、社会の豊かさについて考えるヒントになる。
ニートが考えること、ニートの視点を評価すると、社会を豊かにするための新しい価値が見つかるかもしれない。
日本人の得手不得手(P100)
日本人は歴史的に見て、0から1を作る才能には恵まれていない。
でも、1を100にする才能に恵まれている民族。物事を悪いところを改善して、より良く磨き上げていくことが得意な民族。
無理に0から1を作る必要はない。今ある1を100にすることを目指すことで、世界で勝負していける。
出る杭が打たれるわけ(P140)
集団において、突出した能力を持つものが周りからボコボコにされ集団から疎外される「出る杭は打たれる」現象はよく起こる。
これは、組織が組織を守るための自己防御メカニズムのようなもの。
突出した力を持つ人は、組織の要員の行動、考え方に様々な影響を及ぼす。突出した人をそのままにしておくと、組織の秩序、足並みが乱れ、既存の組織が変わってしまう。
個人の才能は、集団にとって、プラスではなく、マイナスをもたらすこともある。だから、それを防ぐため、構成員が「異端者」を排除しようとする。
才能について(P163)
才能があるかないか=自分が生まれつき持っている適正を知っているかどうか。
人にはそれぞれ適正がある。それを知り、その適性を生かす道を知っているかどうか、それが現実社会での活躍具合に影響する。
この意味で、今社会で活躍して結果をしている「才能のある人」は、自分の適正を活かした人とも言える。
意志なんてあてにしない(P188)
意志の強い人と弱い人、その差は人がもともとどれくらい意志が弱いのかを知っている人。
人はそもそも意志力が弱い。それを根性論や精神論で否定せず、弱いことを前提にしている人は、意志をあてにしない戦略を立てられる。だから上手くいく。
感想など
努力についての現実的・合理的な考え方が学べる本。
努力論といえば、「人生は自分次第、上手くいくいかないも自分の努力で決まる!」的な精神主義万能のものが主要ですが、本書はそこは既存の努力本とは一味違います。
「才能は生まれである程度決っている、努力だけでは上手くいかない」
というように、誰もが薄々感じていたことが書かれており、「やっぱりそうだよね」と共感・納得できる内容が多数(スタンス的には、『諦める力』と同じベクトルの本です)。
努力すること、頑張ることについて、よりバランスの取れた考え方が学べる考え方が印象的でした。
自分自身、したいことは行動で示すタイプなので、個人的に「努力と結果」というテーマにはとても関心を持っています。
自分の人生を振りかえってみても、なぜこれが上手くいってあれが上手くいかなかったのか、そこには、努力以外の要素があるように感じています。
もちろん、「人生に努力の必要なし、頑張る必要はない」という考えは言い過ぎで嘘だと思います。
何かを実現したいと思ったら、行動という努力なくしては現実が変わることはありません。でも、何を頑張って、何を頑張らないのか、その見極めはとても大切だと思います。
人生において、自分の努力で変えられること、変えられないことがあって、頑張れば上手くいくことがある一方、いくら頑張っても、自分の力ではどうにも結果を変えられないこともあります。
私たちは挑戦することができます。したいこと欲しいもの、それを手にするため、挑戦することはできます。しかし、期待通りの結果を得られることもあれば、そうでないこともあります。
思いの他簡単に上手くいくこともあれば、どれだけ頑張ってもどうしようもならないこともあります。だからこそ、努力することは、本当に難しいものだと思います。
頑張れば上手くいくことはやっぱり頑張って達成感を得たいですが、頑張っても上手くいかないことに延々と時間と労力を費やすのは人生の大きな損失。
ムダなことを頑張るせいで、上手くいくことを頑張るチャンスを失ってしまいます。
何かを実現したい、そんなときは寝て待っているだけでは、何も現実は変わりません。だからこそ行動を起こす必要があるわけですが、
自分は何を実現できるか、自分を必要以上に過小評価も過大評価もせず、冷静に見極めたいたいものです。