悩んだときは車谷長吉の本があればいい。『車谷長吉の人生相談 人生の救い』の読書感想

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

個人的に人生で詰んでいた2011年~2012年のときに愛読していた車谷長吉(くるまたにちょうきつ)さんの本『人生の救い』(朝日文庫)を再読。

この本は人生相談という体裁を取りつつ、全く人生相談になっていないのが特徴。

「相談者はこんなふうに悩んでいますが、私の人生はこうでした」という感じで、相談者の相談を、著者が殺しているような、不思議な本です。

救いのない人生相談

この本の何が面白いかというと、相談の答えの強烈さ、ユニークさはもちろんのこと、その徹底したネガティブさ。

・「ツイてない」大学四年生の読者からの相談。就職活動を頑張っているが上手くいかない。生まれた時期さえよければ、就職でこんな苦労をせずに済んだ。(P10)

→人生は幸運と不運があって、ツイてない人はツイてない。でもそれが世の中で、ツイてないなら、ツイてないなりに生きていけばいい。私(著者)はそうしてきた。

・40代高校教師の男性。教え子の女生徒に恋をしてしまった。仕事も上手くいき、家庭もあって、人生順風満帆なのに、ときに狂おしく恋してしまう女生徒が登場する。好きで好きでたまらないが、どうすればいいか?(P20)

→恐れずに突き進み、仕事も家庭も失ってみなさい。不幸を経験しない人間の人生は始まっていない。人は、全てを失って初めて、人間とは何かが分かる。この世の本当の姿が分かる。

・心配性の80代女性。何かにつけ心配してしまい、神経が参りそう。(P25)

→あなたが心配してしまうのはそれが世の中で当たり前のこと。世の中は生老病死苦、いろんな苦しみがあって人生は救いがありません。そんななかを生きていくのが私たちの人生です。

・46歳主婦、人一倍、人の不幸を願ってしまう。(P35)

→あなたは一生救いのない人間です。人間は20歳くらいまでに人格の9割が出来てしまうので、それから心が入れ替わるのはほとんど無理です。人の不幸を願ってしまうあなたは、自分が不幸になって、苦い思いを舐めるほか、救いはありません。

という具合、相談に対する答えは、徹底的にネガティブです。

この本を人生相談のつもりで読んでも、全く何の希望を見出すこともできず、人によっては、「読まなきゃよかった!」と後悔してしまうかもしれません。

0から全てをやり直す

相談内容は結構切実なものが多いのですが、こんな具合、相談に対する答えが答えになっておらず、「人生はこんなもんだ」的な、悟りきった答えが続きます。

そのため、この本を読んでも、何の気晴らしにもなりません。読み手の状況によっては、劇薬になるかもしれない本です。

でも、著者が言うように、人は落ちてこそ初めて見えてくるものがあります。生きていると、どうしても理性的に解決できない問題や答えが出ない問題に頭を悩ませてしまいます。

そういうときは、気休めやリフレッシュで気持ちをごまかさず、あえて下に落ちていく。不運なときは不運なりに、自分の本当の人生に開眼するチャンスと考え、下から我道を歩み出す。

そういうときこそ、車谷長吉さんの本の出番。

本を開けば、心に響く言葉が見つかって、そのときにしか学べない、大切な何かを学ぶことができるのかもしれません。

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