時代は常に変わっていきます。
ということは、時代の変化に応じて、変えなければいけないものはどんどん変えていく。その柔軟性がなければ未来は明白。
時代に淘汰され、滅亡の運命をたどります。
ただし、時代がどうであれ、決して変えてはいけない本質なものもあることは確かです。
そのことを考えさせられるのが本書、日経ビジネス編『ヤマト正伝 小倉昌男が遺したもの』(日経BP社)です。
この本について
本書では、歴代のヤマト運輸経営者が、ヤマト運輸に息づいている小倉イズムについて語っている本。
そこにはなぜヤマト運輸がこれだけ拡大し、社会で必要とされる会社になったのか。その本質的な事柄について考える内容になっています。
どんな会社にも創業者がおり、会社を成功させた経営者がいます。
彼らがどんな思いを持って会社を成長させていったのか。それはまさに会社のDNAであり、土台です。
それを忘れないことこそが、未来へと続く
以下、本書の読書メモです。
社長定年制の必要性(P23)
どんな名経営者でも必ず適切な引き際がある。その引き際を間違えれば老害化して、会社に多大な悪影響を与えてしまう。
だからこそ、どれだけ実績がある経営者であっても、引き際を間違えてはいけない。この意味で、社長の定年制は絶対に必要。
そして、経営から身を退いたあとは、一切の口出しをしないこと。
基本はトップダウン(P43)
会社のトップは社長。会社の業績も運命も、やはりトップたる社長が握っている。
会社がうまくいっていない。それを変えるのも社長。この意味で、社長自身が社員に影響与えられるインフルエンサーになることが大切。
尊重すべき現場主義(P93)
経営者が現場を軽視する会社は傾く。
結局現場とは最前線の戦場であり、常にその動向、現状を把握する必要がある。だから経営者は現場と頻繁に接触し、忌憚なく意見を聞ける仕組みが必要。
企業と社格(P107)
会社には格がある。
売上とか会社の規模とか、そういうことを拡大していくことだけなく、会社そのものの社会的格、品格を高めていくことが大切。
小倉式イノベーションのサイクル(P127)
小倉昌男が実践した市場でイノベーションを起こすサイクル。
1・オンリーワンの商品を作る
2・ライバルの参入を歓迎し、競争環境を作る
3・その市場でNo.1になる
4・自社がデファクトスタンダードになる
経営者と意思(P146)
会社の経営は結局は経営者の人間性。
経営者が金儲けだけ、自分のことだけしか考えない人間なら、会社の品格は落ち、社会的にもそれ相応の会社になる。
この意味で経営者に必要なのは経営哲学。なぜ会社を運営するか。自分の役割が社会にどのような影響を与えているか。
その確固たる意思を持つこと。それが経営者として絶対的に必要なもの。
人柄で社員を選ぶ(P178)
人を雇う上で大切なのは能力より人柄。人柄がいい人はお客に喜ばれる。だから結局人柄が一番大切。
理不尽には徹底抗戦する(P205)
いくら相手がお上であれ権力者であれ、「それはどう考えてもおかしい!」「正義は我にあり!」ということであれば、徹底的に闘う。
自分がしようとしていることは絶対的に大義があると確信できるのあれば、安易に妥協せず、自分たちの信念を貫く。
既得権益に膝を屈し、世の中を悪くする勢力に唯々諾々、従ってはいけない。
感想など
ヤマト運輸が会社として何を大切にしているか。そのことが分かりやすく理解できた本。
なぜヤマトが他の運送業者とは独自の路線で活躍し、大きな会社に発展したのか。結局そこには経営者の意思と思いがあり、だからこそ、その本質的なものを忘れないこと。
その大切さが納得できました。
2018年はヤマトについて、残念なニュースが伝わってきましたが、ぜひ「小倉イズム」を忘れずに、今後も便利なサービスを続けて欲しい。
そのことを、一人のヤマトユーザーとして願っています。