経験すべきはニセモノの孤独ではなくホンモノの孤独。
鴻上尚史著『孤独と不安のレッスン』(大和書房)の読書感想です。
この本について
孤独であること、独りで過ごすことの意味を考える本。
人生ときに、人の波からあえて外れて、自分一人とじっくり向き合うべきときがあります。そのとき、寂しさに負けてニセモノの孤独で時間を無為にせず、しっかり本物の孤独と向き合い、自分を高めていくことが大切になってきます。
この本は、そもそも孤独であることは何なのか、どうやって孤独や不安と向き合うのか、その意味や価値について考えさせられる内容が満載になっています。
「あぁ寂しいな、でもこの寂しさを自分を成長させるきっかけにしたいな」というときにこの本を読むと、心にガツン!と響くメッセージが見つかるかも。
以下、本書の読書メモです。
一人の時間について(P21)
人生を本当に豊かにするためには、どうしても一人で過ごす時間を大切にする必要がある。
一人でいることが恥ずかしいことではない。一人で過ごすこと、それは様々な発見、学びを得る貴重な時間。一人のときは自分と向き合い、自分の人生を豊かにするために時間を使うべし。
本当の孤独とは(P23)
つい寂しいとき、ネットやチャット、誰かに電話をかけたり、自分と向き合うことを避けてしまう。でも、それでは、孤独の時間を意味あるものにすることはできない。
本当の孤独とは、自分とちゃんと向き合い、対話をすること。寂しさを埋めるために他人と会話をするのではなく、自分と対話をすること。そうすることで、孤独に大きな価値があることが分かる。
本当に成長したい、そう思ったら(P45)
人は一人のときこそ成長する。
寂しいからどうでもいい人とつるむ、時間を潰す、そんなことでは決して成長はできない。
自分と向き合い、一人の時間を過ごすこと。それは寂しく、最初は辛いものかもしれない。でも、価値ある体験、学び、気づきは一人のときにこそ得られる。
自分自身、一人でいる時間を噛み締め、その価値に気づくこと。一人で考えれば考えるほど、人は成長することができる。
不安について(P86)
不安には前向きの不安、後ろ向きの不安、2つの不安がある。
前向きの不安とは、エネルギーを与える不安。後ろ向きの不安は、自分を振り回すだけの不安。
不安もときに成長の力になる。後ろ向きの不安に惑わされず、「○○に不安だ、だからこうしよう!」と不安をエネルギーに変える。
人生は3割主義でOK(P89)
どんな野球の名選手も打率3割ほど。それはつまり、3回のうち2回は失敗するということ。でも、実際はそれで十分。3回に1回ヒットが打てれば名選手になれる。
人生も同じ。人生全て上手くいくことはないが、全て上手くいく必要はない。3回のうち3回失敗してもOK。1回、上手くいけばいい。
他者について(P141)
他者、人との付き合い方において「これが正解」という答えはない。だからこそ、人付き合いは難しく、面白くもある。
そもそも、他者との付き合いは時間・精神、いろんなものを消費する大変なこと。上手く付き合うことができれば、孤独を和らげ、人生を豊かにしてくれるが、孤独を深める原因にもなる。
人間関係はとかく難しい。
人との距離を測る(P180)
人間関係は、それぞれの関係において、適切な距離感がある。
よく知っている人との距離、そこそこの知り合いの人との距離、初対面の人との距離。それぞれ適切な距離感があるので、そこをきちんと読んで距離を保つ。
ただし仲良くなりたい人とはあえて距離を近づけることも大切。
若いうちに一人暮らしを経験する理由(P220)
一人暮らしをすることは、孤独で不安な経験をすること。
若いときに一人暮らしをすることによって、孤独や不安に対する耐性もつくし、一人暮らしをするからこそ、誰かが側にいてくれることのありがたさが分かる。
孤独や不安は、年を取れば取るほど増えていく。だからこそ、できるなら、若いときに一人暮らしを経験しておくのが良い。孤独や不安に耐える力を身につけるために。
感想など
読みやすい平易な文体ながら、何度も何度も、読み返したくなる言葉が満載の本。
人生ときに、失恋して側に誰もいなくて寂しくなったり、友だちや知り合いと一緒に過ごしても、ふと孤独を感じて寂しくなってしまうときがあると思います。
そういうとき、「なぜ寂しいのだろう?」と自問自答、それを自分なりに考えていくと、思ってもみなかったことに気がついて、自分の新しい側面に気がついたりします。
だからこそ、寂しい時は、誰かと会ったりするのではなく、一人で過ごすことが、大きな価値を持ってくるのかもしれません。
本当に大切なことは一人でいるときに気がつく。だからこそ、孤独を感じたときこそ、そのときを大切に、じっくり自分と向き合いたいものです。