我々日本人のこれからを考える。『日本人へ 危機からの脱出編』を読む

日本人へ 危機からの脱出篇
「日本人はお人好しすぎる。もっと智恵をつけて世界で立ち回れ!」

ローマ関連の書籍で有名な作家、塩野七生著『日本人へ 危機からの脱出編』(文春新書)の読書感想です。

この本について

ローマ帝政時代に現代日本、歴史から現代問題まで、様々な視点で塩野さんの考え方が楽しめるエッセイ集。

日本の考察&アドバイスは、読んでいて膝を叩いてうなずいてしまうことがしばしば。

以下本書の気になった内容の要約です。

世の中には二種類の女がいる(P18)

タイプ1、付き合った男に対し、永遠に恨みを抱き続け、復讐を生きがいに生き続ける女。タイプ2、過ぎたことはサッサと忘れ、気分一新、新しい生き方をする女。

就職試験に失敗したときに知っておきたい2つのこと(P64)

1、不採用通知は世の中からの拒否ではない。2、今の日本は安定志向で、新規採用ですら企業は神経質になっている。

だからそもそも、就職試験自体が昔に比べ難易度が厳しい。

今や日本の代表的作家である塩野七生さん。

大学時代、就職試験で不採用になり、「日本の組織と自分の性格は合わない」ということを自覚し、自ら行動を起こしたそう。

自分の活かし方は自分で見つけるしかないのかもしれませんね。

帝国が崩壊するときの面白い現象(P226)

ローマ帝国にしろ、現代社会にしろ、既成の社会が停滞し、危機を迎えたとき、瓦解する社会を守ろうとするのは、その組織の既得権益者(本流エリート)ではなく、意外にもその組織で対して権力を持っていない者(傍流エリート)。

社会の危機において、傍流エリートは、既得権益者たちを励ましつつ、社会を守ろうとする。しかし、傍流エリートの働きによって社会の危機が過ぎ去ったとき、傍流エリートは「用済み」となり、既得権益者によって排除されてしまう。

崩壊するローマ帝国を救うために戦った蛮族のスティリコ(ローマ帝国周辺の蛮族のリーダー)しかり、沈みゆくイギリスを盛り返した「鉄の女」のサッチャー(サッチャーは階級社会のイギリスの平民の出。貴族出身の家柄ではない)しかり。

既得権益者は、組織の危機には自ら立ち上がらないが、組織が平時に戻れば、また自身の既得権を守るために、邪魔者を排除しようとする。

今の日本に必要なのは悪知恵だ(P238)

日本人は人が良さすぎる。善意や常識を相手と共有すれば、仲良くやっていけると信じているが、そんな考えは世界では通じない。

右手で握手をしようとして左手でなぐりかかってくるような人々、人間性や善意がまるで存在しない危険な人々が世の中にはいる。

これは国と国との関係も同じ。日本は、国と国との善意や誠意を信じるだけでなく、相手に応じてやり方を変えるような、多少の悪知恵はつけた方がいい。国益のために善人だけでなく悪い賢者も必要

感想など

「日本人へ」というタイトルがついていますが、日本人一人一人へ向けたメッセージではなく、基本的には塩野さんのエッセイ集です。

塩野さんが考えている日本の政治、日本人のこと、ローマのこと、様々なテーマが題材になっていて、「日本人への提言」など、気難しく読む必要はありません。

ストレートな口調でサクサクサクサク進んでいく文章は肩が凝らず気楽に読めますので、『ローマ人の物語』のような濃い長編ものを読む間の気分転換として、ピッタリの本だと思います。

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