人生百選連勝は不可能。
勝てない戦いで無駄死にしないための教訓がこれ。百田尚樹著『逃げる力』(PHP新書)の読書感想です。
『逃げる力』について
『永遠の0』などで知られる人気作家の著者が、人生で大切な「逃げる力」について分かりやすく語っている本。
人生で大切なのは勝つことではなく逃げること。長い人生で無駄死にしないために頭に入れておきたい金言が満載の一冊です。
以下、本書の読書メモです。
はじめに(P3)
逃げることとは消極的な態度ではない。自分にとっての大切なものを守るための、積極的な行動。
この意味で、人生で大切なのは戦うことより逃げること。大切なものを守るために、常に逃げるという選択肢を用意しておくこと。
痛手を最小限に抑える(P21)
人生挑戦すれば必ず失敗する。
そこで大切なのは、失敗そのものを避けようとするのではなく、失敗したときのダメージを最小限に抑えること。
何かに挑戦し失敗が分かった段階で即座に損切りをする。そして、次に挑戦するための余力を確保する。
こうすることで、
挑戦→失敗→挑戦→成功!
というように、最後の最後には勝利をつかめる可能性が残される。
敗北は問題ではない。本当に問題なのは(P38)
勇気なくして栄光なし。
人生で成功したければ、それ相応のリスクを取る必要がある。この意味で、失敗を経験するのは恥でも何でもない。
それより問題なのは、たった一度の敗北によって完全にノックアウトされてしまうこと。だからこそ、人生で大勝負をそう簡単に挑んではいけない。
一度の失敗でノックアウトされずに再起できる状態ならば、何度でも立ち上がれる。敗北してもいいが、その敗北によって全てを失うような敗北は絶対に避けること。
勝ち方より負け方(P44)
成功者の本当のすごいところは、勝ち方より負け方。かりに負けたとしても必ず生き残る。
この世で最後に勝つのは勝ち続ける者ではなく、生き残り続ける者。だから人生は何度でも負けていい。生き残ることができるならば。
99回負けて1回勝って天下人になった男(P47)
漢の劉邦の話。
劉邦は戦が苦手で、99回項羽と戦い負けた。しかし、最後の最後、1回勝って項羽を破り、天下人になった。
大切なのは勝つことではない。生き残ること。どんなに負けても生きて、戦い続ける力があるならば、逆転のチャンスはある。
だから何が何でも生き残る。失敗しても再起できれば、それでいい。
「敗北した」という僥倖(P56)
人生、負けを経験したことがない人は不幸。「負けた」という経験から学べることはとても多い。そして、負けることによって、人生で負けに対する免疫がつく。
それによって、そうやすやすと折れない強い心を手に入れることができる。これこそがいつか、自分を救う命綱となる。
なぜエリートほどもろいのか(P67)
人生勝ち続けてきた人ほどもろい。とくに、レールに乗っかって、そこで常勝を重ねてきた人ほど、実は精神的にとても大変な道を歩んでいる。
世の中本当は、レールなんてない。こう生きれば幸せになれる。間違いがない。そんなレールなんてない。
ところが、レールに乗っかってきた人は、それこそが正しい道と信じているので、そこから外れることをとても恐れている。
それが人生の可能性を狭め、そして毎日の不安の原因となっている。
捨てゲームを持つ(P107)
人生なんでもかんでも全力投球してはいけない。ときに、「この戦いは捨てていい」という余裕を持つこと。
大切なのは本当に大切な戦いで勝つこと。そこに全力投球すればいい。何事も全力投球していると、いつかバテる。
そうならないために、捨ててよい戦いは遠慮なく捨てること。
好きな仕事にこだわらない(P160)
現在、好きなことを仕事にするのが理想的な働き方のように考えられているが、全員が全員、好きな仕事ができるわけではない。
それに、どの仕事も必要があるからこそ仕事として成り立っている。つまり、どんな仕事でも、必ず誰かの役に立っている。
だから自分にご縁があった仕事は好きだろうが嫌いだろうが、まずは全力で取り組んでみること。この世の中には、その仕事で喜ぶ誰かが必ずいるのだから。
守るべきものを守る(P209)
人生は逃げが重要。
自分にとって本当に大切なものは何なのかを見極め、それを守るためには、不要な戦いはどんどん避け、逃げに逃げても構わない。
生き残って守るべきものを守る。それこそが最大の勲章だから。
感想など
率直に言って、この考え方には個人的に大賛成の本。
人生勝てないことはさっさと逃げること、負けることが分かっている戦いはさっさとあきらめることの大切さ、つまりは損切りの大切さを語っている本書の特徴。
個人的な経験からも、いかに粘るかということよりも、いかにすぐにあきらめるかの方が、とても大切な問題だと感じています。
人生確かに、粘り強さは必要です。
「これは絶対に大切なんだ!」ということは、決して引かず、あきらめず、最後まで頑張る。上手くいくまで頑張る。
そんな、粘り強さが絶対必要です。
とはいえ、「もうこれは無理やろ」と分かっていること、どう考えてもうまくいきそうにないことを、瞬時に見切って傷が浅いうちに撤退する。
この現実的な処世術も、長い人生を生き抜くためにとても大切なことだと思います。
つまり、自分にとって何が本当に大切で、そうでないのか。
その見極めをした上で、粘る必要がないことはさっさとあきらめ撤退する。勝てない戦いなら無駄死にはさけ、傷を最小限に抑えること。
その大切さが理解できます。
ビジネス書の多くは勝つこと、信念を持って粘り強く努力することの大切さが説かれている、いわばタフマッチョな本が多いですが、個人的には「無理なら無理で逃げなさい」という本書の提言はとても合理的。
「無理なものは無理」と判断する合理性、そしてある意味根性のなさは、実はとても大切なことで、失敗して痛手を負わないこと。
つまり、いつでも再起できる自分でいることこそ、長い人生において一番大切なことのような気がしています。
まぁ、しぶとく生きていればいつか、いいことがあります。
だからこそ必要なのは「逃げる力」。頑張りすぎないために、そして無理しすぎないために、「逃げる力」を大切にしたいものです。